M&Aと聞くとどうしても大手企業同士の合併買収をイメージしますが、中小企業の取引も頻繁に行われています。
そういった背景もあり、一昔前と比較してM&Aの年間件数は徐々に増加してきています。
個人事業主も例外ではありません。
例え小規模な個人事業であっても、そのビジネスに十分な将来性があるのであれば、買手企業が現れる可能性は十分あります。
今回のコラムでは個人事業主のM&Aについて解説いたします。
譲渡先となる企業の探し方や実際の流れを解説するので、ぜひ参考にしてみてください。
個人事業のM&Aは可能?
冒頭でも述べた通り、近年M&Aの年間件数は少しずつ増えてきていますが、理由の1つが小規模なM&Aも頻繁に行われていることです。
中でも1,000万円以下の規模のM&Aは「スモールM&A」と呼ばれ、基本的には個人事業のM&Aもそれに含まれます。
個人事業主が自らの事業を売却するだけでなく、他事業を買収するケースも増えてきていますが、その背景にあるのが長年問題視されている後継者不足です。
後継ぎがいない事業を個人事業主が売却する、あるいは買収することで、そのような後継者不足を解消しようという動きが活発になってきています。
尚、個人事業主のM&Aは対法人だけでなく、対個人でも行われています。
法人のM&Aとの違い
- 株式譲渡
- 株式交換
- 株式移転
通常、M&Aには様々な手法があり、上記のように株式を基軸とした取引も多いですが、個人事業主は株式を発行することができません。
そのため、個人事業を売却する時は基本的に事業譲渡の形を取るという点が法人のM&Aとの大きな違いです。
法人でも事業譲渡によりM&Aが行われるケースはありますが、株式とは違い、事業の価値を具体的な金額に換算することは困難です。
事業価値を算定する時の評価方法を慎重に検討しなければならない点に注意しなければいけません。
個人事業主でも専門家の活用はほぼ必須
個人対個人、個人対法人のように、個人事業主のM&Aにもいくつかのパターンがありますが、自分たちだけで実施するのは非常にハードルが高いです。
事業譲渡のM&Aは譲渡価格の算出が難しいという理由もあり、M&Aや事業承継の専門家に仲介してもらうことが望ましいでしょう。
小規模な取引だからと詳細を疎かにしてしまう方も少なくありませんが、専門知識がない状態で取引を進めようとすると、余計な時間を費やしてしまうことがほとんどです。
加えて、適切な手法で取引相手を探した方がM&Aそのものをスピーディーに実現できるため、個人事業主のM&Aであっても専門家に依頼することをおすすめいたします。
個人事業のM&Aの取引相手を探す方法
具体的にどのような専門家に依頼し、どのような方法で取引相手を探せばいいのかを解説いたします。
主な選択肢は以下の通りなので、一つひとつの特徴を解説いたします。
- 事業承継専門の仲介業者
- M&Aのマッチングサイト
- 事業承継・引継ぎ支援センター
事業承継専門の仲介業者
M&Aについて詳しくなく、丁寧にサポートしてほしいという方におすすめなのはM&Aを含めた事業承継を専門としている仲介業者です。
譲受側と譲渡側の間を取り持ってくれることはもちろん、担当のスタッフと直接コミュニケーションを取りながら進行していくので、非常に安心感があります。
また、このような業者は地域密着型も多く、他の手法では見つけることが難しいような相手とマッチングできる可能性もあります。
サービス内容が充実している分、相応の手数料が発生しますが、確実なM&Aを実現したいという方は一度相談してみると良いでしょう。
M&Aのマッチングサイト
たくさんの案件を見てみたいという方はM&Aのマッチングサイトを活用してみると良いでしょう。
このようなサービスは以前からありましたが、近年は個人事業を含めた小規模な案件も増加しています。
先述の仲介業者と比べるとサービスの充実度は劣るものの、コストを抑えながら多くの選択肢を得ることができます。
事業承継・引継ぎ支援センター
最後に事業承継・引継ぎ支援センターです。
こちらは国が経営している事業承継の公的な相談窓口で、全国各地に設置されています。
事業承継・引継ぎ支援センター自体がM&Aの仲介を行ってくれるわけではないものの、無料で相談できる点が最大のメリット。
仲介業者の紹介なども行ってくれるので、まずは悩みを聞いてほしい、疑問に答えてほしいという方は相談してみると良いでしょう。
個人事業のM&Aの流れ
最後に個人事業におけるM&Aの流れを解説いたします。どの専門家、あるいはどのプラットフォームを利用するかによって異なる場合もありますが、以下の流れで進行するのが一般的でしょう。
- 専門家を選定する
- 取引相手を紹介してもらう
- 経営者と面談・交渉を行う
- 基本合意契約を締結する
- デューデリジェンスを実施する
- 事業譲渡契約を締結する
専門家を選定する
まずは専門家やプラットフォームを選定するところから始めましょう。
先ほど簡潔に解説しましたが、それぞれメリットとデメリットがあります。
複数の専門家を比較することは重要ですが、最終的にはどれか1つの専門家に絞り、M&Aの成立に向けて並走していくことをおすすめいたします。
取引相手を紹介してもらう
専門家を選定したら、取引相手を紹介してもらいます。
とはいえ、希望条件に合う取引相手がすぐに現れるとも限りません。
また、良さそうな取引相手が見つかっても、相手がそれに応じてくれない可能性は十分にあるため、ある程度の期間を要する前提で臨みましょう。
特にマッチングサイトの場合は基本的に自力で探し出さなければならないため、単純に時間がかかるだけでなく、相応の労力も必要です。
経営者と面談・交渉を行う
無事取引相手が見つかれば、相手方の経営者と面談と交渉を重ねることになります。
M&Aの成立に向けて、お互いのことを理解する重要なフェーズなので、個人事業といっても疎かにするわけにはいきません。
とはいえ、ただ情報交換をすれば良いというわけではなく、良好な関係性を築くためのコミュニケーションも重要です。
専門家に仲介してもらいつつ、慎重にことを進めましょう。
基本合意契約を締結する
十分な交渉を重ね、譲渡側と譲受側がひとまずM&Aに合意したことを示すために基本合意契約を締結します。
「M&Aに合意した」といっても、この時点ではまだ仮契約のようなもの。
M&Aを成立させるための調査はここから行うことが一般的であり、機密保持や独占交渉権のような一部の例外を除き、法的な拘束力もありません。
デューデリジェンスを実施する
デューデリジェンス(DD)とは譲受側が譲渡側の企業、事業に対して行う調査のことです。
基本合意契約を締結した時点で、両者ともにM&A成立のための基本的な条件には合意していると捉えられますが、デューデリジェンスはその諸条件に誤りがないかを確認する工程であり、M&Aには欠かせません。
また、デューデリジェンスはただでさえ時間がかかるため、専門家の力なしには成し得ず、譲渡側の協力も必要です。
事業譲渡契約を締結する
最後に事業譲渡契約を締結します。
これを持って正式にM&Aが成立したことになりますが、一概に「事業」といってもその線引きは困難です。
後々トラブルに発展しないように、資産や従業員の雇用など、その事業譲渡は何を対象とするのかを明記されていることが望ましいです。
個人事業でもM&Aは可能だが慎重さが重要
結論として、個人事業でもM&Aを行うことは可能です。
- 自身の事業を売却したい
- 他人の事業を買収したい
然るべき手順を踏めば、どちらでも実現できます。
しかし、仮に小規模なM&Aだとしても、専門家の協力は欠かせません。都度サポートを受けながら、慎重に計画を進めることが望ましいです。
※本記事は、その内容の正確性・完全性を保証するものではありません。
詳しくは当センターへお問い合わせいただくか、関係各所にお問い合わせください。