社長の急逝は他人事ではない!

代表取締役社長の急死は、どんな会社においても想定されうる問題です。
会社の意思決定を行う代表者がいなくなることに加え、社内における社長の役割が大きな中小企業なら、普段の業務が滞ることにもつながります。
さらに突然のご逝去であれば、計画的な退任ではありませんから、後継者が決まっているとも限らないですよね。

小さな会社のオーナー社長が突然亡くなり、会社の経営には関わっていなかった奥さんや家族がどうにかしないといけない……という事態が起こる可能性も。

いざという時のために覚えておきたい、代表取締役社長が突然死亡した時の対応や今後の事業のためにチェックすべき確認事項について解説します。

忘れないで!速やかな連絡対応

一会社の社長が急死することは、家族だけでなく経営していた会社の社員や取引先企業など、様々な関係者へと不安を生じさせます。
社長不在の状態が続けば、取締役ら役員にも負担が増します。
スムーズに会社運営を継続するためにも、関係者への告知と新たな経営体制の確立は早めに行いましょう。

社内への報告

真っ先にすべきことは、従業員や取引先に向けて社長の死去を伝えること。
特に中小企業において、社長の影響力や求心力は絶大です。
ですから、従業員が会社運営の状況や将来について心配するのも当たり前。
まずは死亡を報告するとともに、社長の業務や決済、必要であれば財務・経理の代行者を速やかに決めましょう。

関係各所など外部への連絡

顧客や仕入先、外注先、取引銀行などすべての関係先へと直ちに連絡しましょう。
社葬を行う場合は通知すべき企業のリストアップも必要です。
社葬を行わない場合、葬儀は身内だけで行い死亡通知を別の形で実施することもあります。

相続人が継ぐのは「会社」?

経営者の方が亡くなった時、ご家族にとって気になるのは「遺産のように、自分たちが会社も相続するの?」というところ。
相続人が社長の後任になるのかどうか、法律上の決まりについて確認していきましょう。

ここでの「社長」とは
会社法の規定として取締役会で代表として選ばれ、代表権を持つことで契約や裁判などを行う社員(代表取締役)のことを指します。
「代表取締役」と会社内部の代表「社長」は同一人物であるケースが多いため、本記事内では「代表取締役社長」が急死した場合を想定して「社長」と呼称しています。

会社は財産なのか

大前提として、会社には「相続」という概念を適用しません。
これは、株式会社や特例有限会社などが法律によって「人」と認められた存在「法人」だからです。
つまり社長が急死した場合でも、会社は会社で法人として残っているのです。
したがって、社長の相続人は会社や会社所有の財産(お金や備品、土地など)を丸ごと全部相続するのではなく、亡くなった社長が所有していた株式だけを財産として相続します。

新たに会社の代表を決め直す

社長は亡くなった時点で「死亡による退任」扱いで代表権を失うため、新たに代表権を行使して契約などを行うための代表者を決めなければなりません。
ここで注意したいのが、会社と同じように社長の地位、すなわち代表権も相続することはできないということ。
社長個人の財産を相続する人が無条件で社長に就任することはできず、各社の定款に則って新たな代表者を決める必要があります。
決め方は株主総会での決議、取締役会での決議、取締役同士の話し合いなど会社によって異なります。

株式は相続財産

会社は相続の対象ではありませんが、社長兼株主が所有していた会社の株式は、不動産や銀行の預貯金のように遺産分割協議の対象となる「遺産」です。
ですので、誰が株を相続するかという協議がまず相続人の中で成立しないと、株主不確定で株主総会を開くことができません。
そうなると、先述した選任方法によっては社長を決めることもできなくなります。
もし遺産分割協議前に株主総会の議決権を行使したい場合は、相続分の過半数の同意を得て相続人の中から代表者を定め、その代表者が議決権を行使することになります。

社長急死後の手続きとは?パターン別に解説

社長急死手続きパターン
社長を務めた家族亡き後の会社。
故人の相続人が引き継いで事業を続けていきたいというケースもあれば、もともと跡を継ぐ気がなく今後も後継となるつもりがない、というケースもあるかと思います。
また、新型コロナウイルスの感染拡大により多くの企業が経営に大打撃を受けている近年。
業績も思わしくないため、この機会にと廃業の道を選ぶ方もいらっしゃるでしょう。
ここからは、中小企業において社長が亡くなったことを想定し、必要な手続きについて3つのパターン別に解説していきます。

  1. 相続人が代表権を得て、新たな社長として事業を行いたい時
  2. 事業は継続するが、相続人は経営に関わらない時
  3. 会社を廃業したい時

1.相続人が代表権を得て、新たな社長として事業を行いたい時

相続人となる亡くなった社長の子どもを新たな社長にしたいというケースは多いです。
この場合はまず、会社を継ぎたい相続人が故人所有の株式を相続することで、株主総会において社長に選ばれるようにします。
取締役会において社長を決定する場合も、前提として株式総会によって相続人が取締役に選任されていなければなりません。

遺産分割協議を慎重に

なお、株主総会の決議をするには株式の過半数が必要です。
きょうだいなど株式を相続したい相続人が複数いる場合も想定されますので、遺産分割協議において「誰が何株相続するか」は極めて重要です。
専門コンサルタントに相談し、トラブルのない事業承継を進めることがおすすめです。

2.事業は継続するが、相続人は経営に関わらない時

事業は継続するが、相続人は経営に関わらない
会社は経営を続けていくが、相続人が株式を手放す選択もあり得ます。
別の会社で働いている、経営に興味がないなどといった理由で相続人に事業を承継する気がなく、経営を取締役らに任せたいという時に起こるケースでしょう。
この場合、相続人が株式を手放す方法としては下記のような候補があると言えます。

  • 相続放棄
  • 他の株主や第三者に株式を買い取ってもらう
  • 会社に株式を買い取ってもらう
相続放棄

相続における「財産」とは、預金や不動産、株式だけでなく、債務のようなマイナスの財産も含まれます。
故人にマイナスの財産があった場合、その返済義務は相続人に引き継がれます。
経営に関わる気がなく、なおかつマイナスの財産が多額にある場合には、相続放棄が候補のひとつとなります。
相続放棄には絶対に注意したいポイントは、以下の2点です。

  • 相続放棄=すべての相続財産に対する権利を放棄
  • 撤回できない

一度相続放棄を選んでしまうと撤回ができないうえ、もし株式の他に相続したい財産があったとしても相続することはできなくなってしまいます。
選択肢ではありますが、きわめて慎重な検討が必要です。

株主や第三者に株主を買い取ってもらう

文字通り株式を譲渡(有償で譲り渡す)することで、会社の経営権を引き継いでもらいます。
譲渡時のポイントは、中小企業の多くに適用されている「譲渡制限株式」です。
「譲渡制限株式」とは、譲渡に制限を設けている株式を言います。自由に譲渡できる株式における、特例の1つです。
中小企業がこの譲渡制限株式を採用するのは、会社にとって信用できない人、自社に不都合な第三者へと株式が渡ることを防ぐため。
定款上に「譲渡には取締役会(株主総会)の承認を受けなければならない」という規定があれば、この譲渡制限株式が適用されます。
一般的には会社に対して譲渡承認請求を行い、次に承認機関(取締役会か株主総会)における承認、という流れになります。

会社に株式を買い取ってもらう

会社法において、株主が保有する株式を公正価格で買取るよう会社に求められる権利「株式買取請求権」が認められています。
第三者に買い取ってもらえれば話は早いのですが、中小企業のような非上場企業の株式は買い手を見つけることが難しいものです。
また、経営と関係の薄い親族へと株式が散逸したり、株主が増えて会社の支配権を維持できなくなることを想定したりと、様々な理由で会社のほうから「相続された株式を買い取りたい」という要求があることがあります。
こういった場合は会社も相続人の株式を欲しがっているので、株式買取請求もスムーズに進むはずです。

譲渡できなかった時に会社へ買取を請求することも
前述の譲渡制限株式を譲渡したいケースにおいて、必要な承認が会社から得られない場合もあります。
その際は会社に株式を買い取ってもらうよう請求し、買い取ってもらうことができます。
ちなみに、これは会社法上の「株式買取請求権」とは異なるものです。

3.会社を廃業したい時

このケースであれば、会社をたたむために「会社の解散」「清算」を行います。
業績悪化に加え、一人だけの株主が社長でもある場合(いわゆる「一人会社」)でもよく検討されるパターンです。
これも会社が「法人」であることから、株主兼社長が亡くなっても法人税の納付義務や決算申告義務は継続されることが理由です。

廃業の流れ

廃業に伴う会社の解散、清算の手続きは以下の通りです。

  1. 株主総会で会社の解散決議
  2. 解散の登記をする
  3. 財産目録と貸借対照表の作成、承認
  4. 公告、催告
  5. 清算事務
  6. 残余財産の株主への分配
  7. 清算事務における決算報告書の作成と承認取得
  8. 清算決了の登記

それぞれの工程についてもご説明します。

1.株主総会で会社の解散決議

株式を相続した相続人が株主に対して株主総会の招集通知を送り、株主総会を開催して解散を決議します。
そのほかにも、「清算人の選定」と「定款の変更」に対する決議が必要です。

清算人とは
会社の解散には必須ですが、特に資格の保有などは必要ありません。
会社法によって定められた存在で、清算手続きに不備があった時に債権者に対して責任を負うことが役割です。
通常であれば取締役が就任しますが、一人会社などで他の取締役がいなければ株式の相続人が株主総会を開いて清算人を選任します。
一般的には相続人や親族が清算人に就任して手続きを進めます。
報酬は会社の資産から支出し、金額は選出と同時に株主総会で決定します。

定款の変更
清算人の就任と同時に、取締役の廃止について定款変更を行う必要があります。
通常の定款変更と同じように株主総会で決議します。

2.解散の登記をする

会社の廃業時は、創業時と同じで法務局への登記申請が必要です。
会社が解散した場合、2週間以内に解散したことを登記する必要があります。

3.財産目録と貸借対照表の作成、承認

清算人が清算開始時点における会社の財産目録と貸借対照表を作成し、株主総会において承認を得ます。

4.公告・催告

解散後の会社は、債権者に対して債権の申し出をするように促すため官報で公告手続きをします。
また、会社が分かっている債権者に対しては、個別に債権の申し出を促します(催告)。
催告の方法は、ハガキや封書による例が多いと言われています。

5.清算事務

以下のような処理が必要です。

  • 取引先との契約解除
  • 会社財産の売却や換金
  • 会社名義の借金や取引先への支払いなど、債務の弁済
  • 売掛金や貸付金など、債権があれば取り立てる
6.残余財産の株主への分配

清算事務を完了した時に会社に残っている財産があれば、株主へと分配します。

7.清算事務における決算報告書の作成と承認取得

清算事務が完了したら、決算報告書を作成し株主総会で承認を得ます。

8.清算決了の登記

株主総会による承認を含むすべての清算事務が終了したら、清算終了の登記を行います。

社長の急死による事業承継もスムーズさが要

会社の中心だった社長が急に亡くなったことで、戸惑ったり今後に不安を感じたりする方は多いものです。
ましてや社長の親族であれば、相続や手続きと急に向き合わなければいけなくなるのですから心配もひときわでしょう。
事前にある程度の知識を仕入れておくことが対策につながります。
書類作成や各種届出の提出作業には複雑な処理も多いので、まずは専門家に依頼するのが最適でしょう。

名古屋事業承継センターは、無料相談から承っております。

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