近年、経営者の高齢化と後継者不在の状況が原因でより一層件数が増えている「廃業」。
帝国データバンクの調査でも、日本の企業において、2022年の休廃業・解散の件数は5万件を超えていることがわかっています。

そこで今回のコラムでは、廃業に関連する用語や実際の廃業時手続き、注意したいポイントなどについてご説明します。
いざ自分の身に降りかかってきたときに、柔軟に対応できるようにしておきましょう。

  1. 「廃業」「清算」「倒産」「破産」「解散」の違いを解説します
  2. 廃業?倒産?知っていそうで知らない違い
  3. 廃業・解散にかかる費用は?
  4. 通常清算の流れを見てみよう
  5. 特別清算の流れとは?
  6. 廃業の判断は慎重に

「廃業」「清算」「倒産」「破産」「解散」の違いを解説します

事業承継がうまくいかない場合の選択肢のひとつ、「廃業」。
後継者不足や将来性のなさを理由に廃業を選択する中小企業が年々増加しています。
この言葉は「会社経営を自主的にやめること」という意味ですが、「倒産」「破産」「清算」「解散」など会社経営にまつわる言葉には似たようなものがたくさんありますよね。
例えば「清算」が大まかに言うと「廃業する会社が資産と債務を解消すること」を指すように、それぞれが異なる意味をきちんと持っています。

今回のコラムでは、廃業に関連する言葉や実際の廃業時手続き、注意したいポイントなどについてご説明します。

結論から述べると、違いは下記の通りです。

用語 定義 主な理由 主な手続き
廃業 事業活動を自主的に停止すること 事業の継続が難しい、引退、業績不振 契約解除、在庫処分、通知
清算 会社を正式に閉じ、資産・負債を整理すること 事業終了後の後片付け 資産売却、負債返済、手続き
倒産 支払い不能状態に陥り、事業継続が不可能になること 資金繰りの悪化、債務超過 裁判所への申立て、管財人の介入
破産 法的に債務を清算する手続きを行うこと 倒産による経済的破綻 裁判所への破産申立て、債務整理
解散 会社の法人格を消滅させる手続き 事業終了、合併、吸収、目的達成 株主総会の決議、解散登記

以下で詳しく解説していきます。

廃業?倒産?知っていそうで知らない違い

悩む男性
廃業が頭をよぎりインターネットで何気なく調べてみたものの、出てくる言葉の違いが分からない!ということもあるのでは。
ここからは「会社をたたむこと」に関連する語句の意味について確認しましょう。

廃業とは

経営者が自ら会社の経営をやめることです。
経営状態の悪化だけでなく、後継者がおらず事業承継ができなかったという理由で廃業を選ぶ経営者は多いものです。
廃業のためには各種手続きをルールに則って行う必要があるため、廃業を決めたら周囲に相談しながら計画的に進めることが求められます。

解散とは

廃業について調べると必ず遭遇する言葉のひとつに「解散」があります。
廃業手続きを開始するためのスタート地点であり、解散は株主総会の決議などによって是非を決定されます。
その他にも「定款で定めた存続期間が満了した、解散事由が発生した」、「破産手続き開始の決定」など全部で7つの理由が会社法によって定められています。
ただ、事業承継の失敗や将来性などを理由にした解散に関しては、ほとんどが株主総会の決議によるものと思って良いでしょう。

清算とは

会社の解散イコール消滅ではありません。
会社をたたみたい時は、資産や負債が残った状態から「清算」手続きによって資産の売却や債券の回収などを行う必要があります。
「これまで行ってきた資産の貸し借りにきちんとケリをつけて終わろうね」、という当たり前と言えば当たり前の考え方です。
ちなみに、一般の人でもよく耳にする「破産」は「清算」の一種になります。

清算には種類がある

廃業に際する清算時には、資産や負債の状況を踏まえて以下のような手段を取ります。

  • 通常清算
  • 特別清算
  • 破産

基本的には資産が負債を上回っていれば通常清算、負債が資産を上回っていれば特別清算、特別清算でも完済が難しければ破産という手段を取ります。

通常清算

会社に残った資産(プラスの財産)で負債(マイナスの財産)などの債務をすべて支払うことができる場合、通常清算を行います。
通常清算に裁判所は関与せず、会社の行う手続きだけですべて完結します。
預貯金や不動産などの保有資産だけでは債務を支払いきれなくても、売掛金回収や商品在庫の換価処分などで発生した資産によって賄いきれる場合は、通常清算を適用します。
すべての弁済を終えた段階で残存資産があれば、株主に配当を行い、清算手続きを終えます。

特別清算

負債が資産を上回っていたり(債務超過)、その疑いがあったりというケースでは特別清算を行います。
手続きには、「和解する」「協定案を可決してもらう」二つの方法があります。
「和解」では、債権者との間にそれぞれ弁済と債権の放棄に合意する「和解契約」を締結し、裁判所の許可を得ます。
「協定案」は、債権者集会内で会社が協定案を提出し、「決議参加債権者の過半数」かつ「総議決権額の3分の2以上」の賛成を得て可決してもらうものです。

後ほどご説明する「破産」と比較した特別清算のメリットは以下の通り。

  • 費用が比較的少額
  • 手続きが簡易で完了まで早い
  • 自社で選ぶ人に手続きを依頼できる
  • 「破産」ではないので、ネガティブなイメージを回避できる

また、デメリットとしては以下のようなものなどが挙げられます。

  • 一定以上の債権者から同意が必要
  • 株式会社以外の合同会社や学校法人などでは利用できない

最も大きな注意点としては、一定以上の債権者から同意を求めなければならないところでしょう。
債権者同士の意見が分かれている場合も、統一するのは難しいものです。

  • 債権者が少数で、特別清算に同意してくれる
  • 金融債権者(金融機関)が同意してくれる

上記のような場合だと、スムーズに協定の可決が進み特別清算が有効となるケースがあります。
債権者からの同意を得られなかった場合、破産手続きを取ることになります。

破産とは

ここまで来たらハッキリしているかと思いますが、「破産」とは清算のための債務整理手段の一つです。
債務超過などによって今後経営し続けることが困難と判断される会社は、破産の手続きを行うことで原則的にすべての資産・負債が清算されます。
ここでは会社の破産についてご説明していますが、個人破産という概念も存在します。

倒産とは

廃業イメージ
似た言葉に倒産がありますが、実は「倒産」には法的な定義がありません。
また、「破産」とも異なる意味を持ちます。
会社に適用する場合、一般的には資金繰りができず取引先や従業員への支払い不能に陥り、会社の経営ができなくなることを指します。

ふたつの概念に分けられる「倒産」

厚生労働省の雇用・労働に関するQ&Aによると、倒産には大きく分けて「法律上の倒産」「事実上の倒産」のふたつがあります。

  • 法律上の倒産
  • 事実上の倒産

法律上の倒産とは?

法律上の「倒産」は、「破産手続」「民事再生手続」「会社更生手続」「特別清算手続」といった法的な手続において認定された場合に使われる用語です。
これらは裁判手続なので、「法的整理」と呼ばれます。
法的整理は裁判所が監督しながら進行するので、債権者に対しても公平であり不正を行いにくいという利点があります。

事実上の倒産とは?

法的な手続きを取っていないが、実際には債務超過や支払い不能な状況に陥っていたり、その可能性があったりする状態を「事実上の倒産」といいます。

休業とは

休業とは、事業を一時的に停止し会社を休眠させることです。
会社そのものは存続しており廃業とは全く異なります。
廃業した企業が事業を再開したい場合は煩雑な手続きが必要になりますが、休業なら簡単な手続きで届出をすることができます。

休廃業とは

特定の手続きをとらず、資産が負債を上回る資産超過状態で事業を停止することを休廃業と言います。

廃業・解散にかかる費用は?

廃業・解散には、様々な手続きと共に費用も発生します。
事業形態や事業規模、抱えている在庫など様々な要因で負担する費用が異なるので、具体的な金額は専門家に相談しながら算出しましょう。

ここでは、主に必要となる費用とおおよその目安を紹介します。

登記・法手続きに関する費用

廃業・解散する場合、「解散の登記」「清算人の登記」「清算結了の登記」が必要です。
それに伴い、以下のように様々な手続きと費用が発生します。

項目 費用
解散登記の登録免許税 30,000円
司法書士費用(解散登記) 50,000 ~ 100,000円
清算人登記の登録免許税 9,000円
司法書士費用(清算人登記) 50,000 ~ 100,000円
官報公告費用 30,000 ~ 50,000円
債権者通知費用 10,000 ~ 50,000円
税理士報酬(確定申告) 100,000 ~ 300,000円
清算結了登記の登録免許税 2,000円
司法書士費用(清算結了登記) 50,000 ~ 100,000円

上記の項目で、費用が確定しているのは各種登録免許税だけで他の項目はおおよその目安です。
総費用は概算で30~100万円程度になることが一般的です。

在庫・設備の処分費用

抱えている在庫の量が多ければ多いほど、確定申告による税負担も大きくなります。
そのため、在庫をまとめて処分する必要がありますが、一度に大量の在庫を処分することは容易ではありません。

とはいえ、在庫を大量に抱えたままだと税負担が大きくなってしまうので、多くの業者では仕入れ価格よりも安くして売ることを選択します。
自社のみで処分できない場合、処分業者へ依頼する手数料も必要です。

さらに、事業で使用していた機械や設備も処分しなければなりません。
引き取り手が見つかれば買い取ってもらうことができますが、老朽化して使い物にならなかったり、汎用性がなくて転用が効かなかったりする場合は専門業者に処分を依頼する必要があります。

事業規模や設備の大きさにもよりますが、数百万から場合によっては1,000万円以上の処分費用がかかるケースもあります。

物件の原状回復費用

賃貸物件を借りて事業を運営していた場合、物件を借りる前の状態に戻す必要があります。
原状回復にかかる費用は1坪あたり数万円~10万円ほどが目安で、物件の面積が大きくなればなるほど費用も高くなるでしょう。

上記の金額は、物件に対して大きな工事を行っていない場合の目安です。
間取りを変更していたり各種設備の位置を大きく変更していたりする場合は、それに伴って費用が増すことになります。

通常清算の流れを見てみよう

デューデリジェンス

続いて、ひとつの会社が廃業決定から手続きを終えるまでの流れを見てみましょう。
プラスの財産で債務の支払いがすべて可能な「通常清算」からご説明します。

通常清算手続きの流れ

通常清算を行う場合の、基本的な廃業手続きは以下の通りです。

  1. 株主総会での解散決議
  2. 清算人の選任
  3. 公告と催告
  4. 財産目録と貸借対照表の作成
  5. 財産換価・債権回収と債務の弁済
  6. 残余財産の分配
  7. 株主総会への決算報告
  8. 清算結了の登記

1.株主総会での解散決議

清算を行う前提として、株主総会で会社の解散を決定しなければなりません。
会社を閉じる「解散」については、株主総会の普通決議ではなく「特別決議」によって審議・決定します。
「特別決議」とは、議決権の過半数を持つ株主が出席する株主総会において、出席議決権の3分の2以上の賛成が必要となる決議のことです。
定款で出席株主数を議決権の3分の1の株主数まで下げることも可能です。

2.清算人の選任

株主総会では、「会社の解散」の決定に加え「清算人」を選任する必要もあります。
会社を解散し清算人を選任したら、法務局でその旨の登記を行います。
起業時と同じように、解散時にも登記が必要なのですね。
また、解散登記が完了したら、税務署や都道府県税事務所、市区町村役場にも解散届を出します。

清算人とは

会社法によって定められた「清算人」は、清算手続きに不備があった時に債権者に対して責任を負います。
報酬は会社の資産から支出し、金額は選出と同時に株主総会で決定します。
誰が清算人となるかは定款で定められる場合もあれば、株主総会の決議で決定する場合もあります。
特に指定の清算人がいない場合は、解散時の代表取締役がそのまま清算人となります。

3.公告と催告

清算人が債権者に対して債権を届け出るよう求めます。
まずは政府発刊の官報に公告を出し、会社が解散したことを知らせ一定期間内に債権の内容を届け出るよう依頼します。
また、会社で分かっている債権者に対しては個別に通知を送り、債権の届出を依頼します。これを催告といいます。

4.財産目録と貸借対照表の作成

財産を現金化(換価)したり、債務を支払ったりするための前提として、清算人が財産目録と貸借対照表を作成する必要があります。
財産目録には債権と債務をどちらも記載し、貸借対照表では財産目録に基づいて会社の資産と負債を表にまとめます。
財産目録と貸借対照表を作成したら、株主総会で承認を受けます。

5.残った財産の換価・債権の回収

株主総会の承認を受けたら、まず清算人はプラスの財産をお金に換えて債務の支払いに備えます。

財産の換価する

不動産や有価証券、在庫などの財産を売却してお金に換えられます。
また、売掛金や貸付金などの債権は債権者に対して取り立て、回収します。
早く処分してしまいたいからと保有財産を安く売ってしまったり、債権を十分に回収できないままにしてしまったりすると債務を支払えなくなるかもしれません。
その場合通常清算が行えなくなってしまうので、換価や債権回収は徹底しましょう。

債務の弁済

資金が集まったら、清算人は会社の債務の支払いを行います。
先述した公告・催告が不十分だと債務を十分に把握できず、債権者間に不公平が生じます。
公告・催告をしっかりと行った状態で支払いを始めましょう。
清算人が換価や債権回収によって集めた資金で債務を完済できない場合、特別清算か破産手続に切り替える必要があります。

6.残余財産の分配

全ての債務を支払った後に会社の財産が残っていれば、株主に分配します。
なお、負債だけでなく、税金や社会保険料などの公租公課もすべて支払ったうえで財産を分配しなければなりません。
各株主の保有株式数に応じて残余財産を分配したら、清算人が行う事務作業は終了です。

7.株主総会への決算報告

清算事務の内容をまとめた決算報告書を作成し、清算人が株主総会で報告します。
決算報告書への承認が得られた時点で会社の法人格は消滅します。

8.清算結了の登記

清算がすべて終わり決算報告書への承認を得られたら、法務局で再度登記を行います。
株主総会で決算報告の承認を受けた後は、2週間以内に登記を終わらせましょう。
これで通常清算がすべて完了します。

特別清算の流れとは?

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換価や債権回収で集まった資金では会社の債務を完済しきれなかった場合、特別清算または破産といった倒産手続きが必要です。
破算手続きはかなり複雑ですので、債権者に協力してもらえて債務の完済が見込める場合は、特別清算を進めるのがいいでしょう。
ここからは特別清算の流れをご紹介します。

解散決議から債権の届出まで

特別清算も通常清算も、序盤の手続きは同じ。
株主総会で会社の解散を決議し、清算人を選任して登記と届出を終え、官報への公告・債権者への個別催告を行うまでは通常清算と同様に行います。
ひとつ通常清算と違う点は、「弁護士が清算人になるのが一般的」というところ。
これは、後から裁判所での手続きが必要になるためです。

裁判所への申し立て

公告・催告をした段階で裁判所へ特別清算の申し立てを行います。
清算人が申し立てるのが一般的です。
債務超過あるいは債務超過の疑いがあり、なおかつ特別清算の要件を満たしている場合は、裁判所によって「特別清算開始決定」がなされます。

協定案の作成

ここからは、裁判所の監督のもとに手続きが進行します。
債権者からの届出に基づいて負債額を確定させたら、負債をどのように返済したいか記載した協定案を作成し、裁判所へ提出します。
個別の和解も可能ですが、個別和解よりも集団協定のほうがスムーズに進めやすいため、一般的には協定を進めることがほとんどです。

協定案の決議と認可

裁判所で債権者集会が開かれます。
債権者集会では、会社が提出した協定案について債権者による決議が行われます。
決議参加債権者の過半数かつ総議決権額の3分の2以上の賛成を得て可決された協定案には、裁判所による認可決定がなされます。

協定内容の実行

清算人がその協定の内容を実行します。
ここで財産の換価や債権回収を行いますが、特別清算においては清算人の自由な裁量で進めることができません。
一定の事由に該当する場合には、事前に裁判所の許可を得る必要があります。

特別清算の終結決定

清算人が財産の換価や債権回収を行い、協定の内容に従って債務の弁済を完了した時点で、裁判所によって特別清算の終結決定がなされます。
協定内容には残債務を免除する旨を含むため、この時点で会社の債務も全てなくなります。
特別清算の終結決定が確定すると、会社の法人格が消滅します。
その後は裁判所が特別清算終結の登記も行い、手続きが終了となります。

廃業の費用はいくらかかる?税金や手続きについても解説

「会社経営を自主的にやめる」という意味を持つ廃業ですが、経営状態の悪化や、後継者の不在など、経営者が廃業を選択…

廃業の判断は慎重に

相談しているビジネスマン

事業承継の困難さや将来性の見いだせないために、廃業を選ぶ中小企業の件数は増加しています。
しかし、事業を止めるには休業という選択肢もあります。
すぐに会社を消滅させてしまうのではなく、会社の存在自体は維持することで、会社を取り巻く環境が改善されたときに事業を再開することも有効な手段。
資産はそのままに事業を再開・継続させることができるでしょう。

もちろん廃業を選択すべき事例もたくさんありますから、決断に少しでも不安があれば専門家に相談してみるものおすすめです。

社員を雇って事業を行ってきた中小企業であればずっと一緒に仕事をしてきた仲間を解雇しなくてはなりませんし、社長としても心が痛むはず。
親族経営の個人事業主であっても、相続など今後の家族間トラブルなどを防ぎたいという思いもあるかもしれません。
慎重な選択を心掛けるべきでしょう。

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