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後継者不足に悩まされる会社は後を絶たず、やむを得なく廃業を選択した、あるいは廃業を検討している経営者は決して少なくありません。
特に地方では深刻な問題となっていますが、近年はそのような後継者がいない会社の買収が増加してきています。

単純に自社の利益を伸ばすだけでなく、社会貢献としても好ましい選択肢ですが、メリットだけではありません。
今回のコラムで後継者のいない会社を買う際の流れや注意点を解説していくので、良ければ最後までご覧ください。

  1. 後継者不足問題の現状
  2. 個人でも会社を買うことは可能?
  3. 後継者不足が深刻な業種は?
  4. 後継者のいない会社を買うことのメリット
  5. 後継者がいない会社を買う時の注意点
  6. 会社の価値・購入価格はどうやって決まる?
  7. 後継者がいない会社を探す方法
  8. 専門家の協力がなくても会社を買うことはできる?
  9. 後継者がいない会社を買う時の流れ
  10. 後継者のいない会社を買う際は慎重さが必要

後継者不足問題の現状

依然として深刻な社会問題となっている後継者不足ですが、実は徐々に回復に向かっています。

※引用:全国「後継者不在率」動向調査(2023年)/帝国データバンク

上図の通り、ここ数年において後継者不在率は少しずつ下がってきており、2023年は53.9%と、ピーク時と比較すると幾分か改善してきていることがわかります。

いまだ半分以上の会社は後継者が見つかっていない状況ではあるものの、回復の理由の1つは比較的事業規模が小さい中小企業においてもM&Aが活発化しているということ。
特に後継者が見つかっていない会社の買収は譲受側、譲渡側の双方にとってメリットがあり、近年注目を集めています。

個人でも会社を買うことは可能?

ちなみに普通の会社員や個人事業主といった、個人が会社を買うことも十分可能です。
「買収」や「M&A」と聞くとどうしても大金が動くイメージがありますが、個人で賄える規模の取引も少なくありません。

もちろん、業績が良好な会社ほど取引金額は高額になる傾向にありますが、後継者がいないということはその市場において競争が起こっていないという状況でもあります。
中には、高い将来性を秘めている会社が自己資金のみで手に入るというケースもあり、大きなビジネスチャンスを掴むことにもなり得ます。

後継者不足が深刻な業種は?

業種別に見た後継者不在率は下図のように推移しています。
仮に会社を買う場合、候補となる業種の不在率がどの程度なのか、参考程度に確認しておくと良いでしょう。

※引用:全国「後継者不在率」動向調査(2023年)/帝国データバンク

一部の業種に偏ることもなく、年々後継者不在率は改善されてきていることがわかりますが、2023年時点で最も不在率が高いのは「建設業」。
全業種の中で唯一60%を上回っていますが、他の業種と比べても大きな差があるわけではありません。

中分類別に関しては、「自動車・自転車小売」が最高値の66.4%、次点で「医療業(病院・診療所等)」の65.3%となっています。
反対に不在率が低い分類でいうと、「化学工業・石油製品等製造」の37.6%が挙げられます。

後継者のいない会社を買うことのメリット

後継者のいない会社を買うことにはどのようなメリットがあるのかを解説していきます。
主に個人で買う方に向けて解説していくので、一つひとつご確認ください。

  • コストを抑えて経営者になれる
  • 無形資産が備わっている
  • 企業成長の期間を省略できる
  • 社会貢献になる

コストを抑えて経営者になれる

ビジネスを開始するにしても、本来必要だった費用を抑えて経営者になれる、あるいは事業を手に入れることができるというのは会社を買うことの大きなメリットです。

仮に300万円で会社を買う場合でも、本来その物件や備品の取得にかかるはずだった費用は取引金額の非ではないでしょう。

特に個人の場合、一般的には資金が限られており、受けられる融資の金額も決して高くないため、スタートの時点で実現できる規模には限りがあります。
そのようなことを踏まえても、既存の会社を買うことでコストを抑えるのは賢い選択肢だといえるでしょう。

無形資産が備わっている

会社を買うということは先に挙げた物件や備品以外に、無形資産と呼ばれる目には見えない資産も手に入るということです。

  • ノウハウ
  • 従業員
  • のれん

主に上記のような資産が該当しますが、これらはお金を支払えば手に入るというものでもありません。
一方でもたらす利益は計り知れず、会社にとっては間違いなく価値ある資産だと言えるでしょう。

企業成長の期間を省略できる

お金だけでなく、時間を節約できるというのも会社を買うメリットです。

いくら潤沢な資金があっても、ゼロから設立した会社が一定のレベルに到達するにはどうしてもある程度の期間が必要です。
無形資産を形成するにも同様のことが言えますが、会社が成長するために必要な期間を短縮できれば、その分やりたいことの実現も早まるでしょう。

社会貢献になる

  • コストを抑えて経営者になれる
  • 無形資産が備わっている
  • 企業成長の期間を省略できる

上記したこれら3つに加え、後継者のいない会社を買い、事業を持続させることは社会貢献にもなります。
そのまま事業承継を完遂すれば、従業員、取引先、顧客といった関係者を守ることにも繋がり、周囲から感謝されることも多いです。

後継者がいない会社を買う時の注意点

会社を買うことにはメリットだけでなくデメリットもあります。
後継者の不在に関わらず、買収全般に共通する項目もあるので、こちらも欠かさずチェックしてください。

  • 取引先や従業員との関係性が崩れるリスクがある
  • 業績が優れない可能性がある
  • 債務も引き継ぐことになる
  • 相応の経歴が必要になる

取引先や従業員との関係性が崩れるリスクがある

仮に経営者同士の意見が合致し、正式に会社が引き渡されることになっても、周囲がそれに賛同するとは限りません。
そのため、経営者が交代するということはそれまで築いてきた取引先や従業員との関係性が崩れるリスクも孕んでいます。

特に事業規模が小さい会社の場合、前経営者がいたからこそ繋がっていたコネクションも少なくありません。
最終的な決定権は経営者同士にあるとしても、周囲の意見に耳を傾け、時間をかけて計画を進めることが望ましいです。

業績が優れない可能性がある

後継者候補である人物が実際に会社を継ぐかどうかを決めるにはいくつもの判断材料がありますが、その1つが業績です。
候補者本人の能力を問わず、業績が芳しくない会社を継ぎたいとは考えにくいでしょう。

そういった理由から、後継者候補が既に見つかっている会社に比べて、そうでない会社はどうしても業績が優れない傾向にあります。
必ずしもそうというわけではないものの、後継者のいない会社を買う場合、財務状況は特に慎重に調査すべきと言えます。

債務も引き継ぐことになる

会社を買い、資産を引き継ぐということは、同時に債務を引き継ぐということでもあります。
それ自体は当然のことですが、注意しなければならないのは、表面に出づらい簿外債務が存在する可能性があるということです。

  • 未払残業代
  • 未払社会保険料
  • 退職金・賞与引当金
  • 一部の買掛金

例えば上記のような債務が含まれますが、認識しないまま会社を買ってしまうと、後から発覚して思わぬ損失を被るリスクがあります。
そうならないためにも、デューデリジェンス(財務調査)によってこのような簿外債務がないか、念入りに調査することが望ましいです。

相応の経歴が必要になる

いくら候補者がいないからといって、誰でも後継者になれるわけではありません。

会社を買い、経営者になるには相応の知識や器量が必要になるでしょう。
それらは後から養うことも可能ですが、取引を実現する上で、まずは後継者候補として前経営者を納得させる必要があります。

相応の経歴を示し、自分が後継者として適切な人材だということを証明しなければいけません。

会社の価値・購入価格はどうやって決まる?

  • インカムアプローチ
  • コストアプローチ
  • マーケットアプローチ

上記のように、M&Aを実施する際などに会社の価値を算出する方法はいくつかあります。
資産、将来性、市場価値など、計算方法によって様々な指標で会社を評価しますが、それぞれ特徴があるため、実際にどの手法が取られるかはその都度異なります。

専門知識に触れることになるため、今回は省略しますが、詳しく知りたい方はこちらのコラムをご覧ください。

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後継者がいない会社を探す方法

ちなみに後継者がいない会社はどのように探せばいいのでしょうか。
個人がそのような情報網を持っていることは珍しく、基本的には以下のいずれかの手段を取ることがおすすめです。

  • 後継者・M&Aのマッチングサイト
  • 事業承継専門の仲介業者
  • 事業承継・引継ぎ支援センター

後継者・M&Aのマッチングサイト

徐々に活用者が増加しているのが後継者やM&Aを専門としたマッチングサイトです。

名前の通り、事業を買いたいユーザーと売りたいユーザーを結びつけるサービスですが、深刻な後継者不足問題を受けて、近年は小規模事業者に特化したサービスも増えています。

登録者数はサイトによって異なりますが、最も選択肢が多い手段でもあるので、良ければ一度登録して、実際にどのような募集案件があるか覗いてみると良いでしょう。

事業承継専門の仲介業者

事業承継を専門とした仲介業者もおすすめの選択肢です。

根本的な役割は上述したマッチングサイトと大きく変わりませんが、担当のスタッフと対面して相談できるのが強みです。
その地域に根ざした業者であれば、独自のネットワークを構築している可能性も高く、その業者だからこそ実現できる事業承継もあるでしょう。

また、単純に取引相手を紹介してもらえるだけでなく、正式に取引が完了するまで手厚いサポートを受けられるのも魅力です。

事業承継・引継ぎ支援センター

最後に紹介する事業承継・引継ぎ支援センターは事業承継に関するあらゆる相談ができる機関です。
国によって各都道府県に設置されているため、無料で利用することが可能です。

こちらは直接取引相手を紹介してくれたり、マッチングできるわけではありませんが、代わりにおすすめの専門家を紹介してくれます。
現時点で特に当てがない方は利用してみると良いでしょう。

専門家の協力がなくても会社を買うことはできる?

専門家に協力を依頼すると、当然手数料が発生します。
機関によって金額に差はありますが、ほとんどの場合、やはり安くはありません。

そのため、稀に自分たちだけで一連の手続きを済ませようとする方がいらっしゃいますが、後々トラブルに発展するリスクが非常に高いため、あまりおすすめはしません。

例え手数料が発生するとしても、確実、かつ迅速に取引を完了するためにはきちんと専門家に依頼することが望ましいです。

後継者がいない会社を買う時の流れ

最後に、後継者がいない会社を買う際はどのような流れで進行していくのかを解説していきます。
一つひとつ簡潔にお伝えするので、実際にイメージしながらご覧ください。

  • 会社の選定
  • 秘密保持契約の締結
  • 経営者との交渉
  • 基本合意契約の締結
  • デューデリジェンスの実施
  • 最終契約の締結

会社の選定

まずは会社の選定からです。

  • 仲介業者に紹介してもらう
  • マッチングサイトで検索する

主にこのような選択肢が考えられますが、希望条件に合う会社がすぐに見つかるとは限りません。
ある程度時間がかかるということを理解し、余裕を持って行動を開始しましょう。

可能性を広げるために複数の業者を利用しても問題ありませんが、数が増えすぎると連絡を取り合うだけで疲弊してしまうため、信頼できる業者に絞り込むことをおすすめします。

秘密保持契約の締結

マッチング相手が見つかったら、まずは秘密保持契約を締結することになります。
その後、譲渡側は会社の様々な情報を公開することになりますが、それらを外部に漏らされないよう、事前にきちんと契約を交わします。

秘密保持契約が締結された後は経営者同士の面談を実施し、より具体性のあるコミュニケーションを交わすことになります。
お互いのことを理解し、双方が納得できる取引を成立させるために重要なフェーズといえるでしょう。

経営者との交渉

次に本格的な交渉に入っていきます。

当然のことながら、買い手には買い手の、売り手には売り手の希望金額があります。
適切な計算方法でその会社の価値を算出しながら、両者の妥協点を探り合うことになりますが、やはりここに時間を要するケースが多いです。

スムーズな取引を実現するためにも、専門家に仲介してもらいながら交渉を進めることが望ましいです。

基本合意契約の締結

交渉を終え、正式に取引を希望する場合は意向表明書を提出します。
絶対に必要なものではありませんが、その後の取引をスピーディーに行うためにも、意向表明書を提出し、取引の意思があることを伝えると良いでしょう。

そして両者の意見が一致し、取引が成立した場合、基本合意契約を締結します。

とはいっても、この時点ではまだ正式に成約したわけではなく、そこからいよいよ会社の売買における詳細を詰めていくことになります。

デューデリジェンスの実施

基本合意契約を交わした後もいくつかやることがありますが、特に重要なのが「デューデリジェンス(DD)」です。

デューデリジェンスを簡潔に説明すると、譲受側が譲渡側の会社に対して行う調査のこと。
具体的な調査項目は多岐に渡りますが、主に財務面に問題がないかを確認します。

そのため、仮にデューデリジェンスによって簿外債務などが発覚した場合、取引内容を大きく修正せざるを得ないことも考えられます。
しかし、それは同時に譲受側を守るということにもなるため、会社の売買においては必須だと言えるでしょう。

時間も費用もかかりますが、専門家に依頼し、欠かさず実施することを推奨いたします。

最終契約の締結

デューデリジェンスによって取引金額や細やかな取決めが修正される可能性はありますが、全ての条件に納得できれば、株式譲渡であれば株式譲渡契約を締結することになります。
これを持って取引が正式に成立することになるため、最も慎重に検討しなければならないフェーズです。

その後、資産の所有権の譲渡や取引金額の支払いなどが済めば、会社の売買は完了します。

後継者のいない会社を買う際は慎重さが必要

ビジネスを開始する、あるいは拡大する上で、後継者のいない会社を買うことは大きなチャンスになります。
適切な会社を選ぶことで自身に多大な利益をもたらすのはもちろん、売り手側にもメリットがあり、まさにWin-Winだと言えるでしょう。

近年は組織ではなく、個人が会社を買うケースも増加していますが、やはり業績や将来性などは会社によって大きく差があります。
売り手側が希望する取引金額が小さいということは、何かしらの問題を抱えている可能性も低くないため、慎重に検討してください。


※本記事は、その内容の正確性・完全性を保証するものではありません。
詳しくは当センターへお問い合わせいただくか、関係各所にお問い合わせください。