M&Aを成功させるためには、高度で専門的な知識や経験が必要になるため、M&Aの専門家や仲介会社などの支援機関に協力を依頼することが一般的です。
支援機関に協力を依頼するとなると、その手数料や成功報酬が気になる方も多いでしょう。

そして、M&Aの支援機関や報酬について調べる中で、「レーマン方式」という用語を目にして、どのような仕組みなのか気になる方もいるのではないでしょうか。

本記事では、M&Aの支援機関が多く採用しているレーマン方式について詳しく解説します。

  1. M&A実施に支援機関に支払う主な費用
  2. M&Aのレーマン方式とは?
  3. レーマン方式の種類
  4. レーマン方式を活用するメリット
  5. レーマン方式の支援機関を利用する際の注意点
  6. 事前に報酬体系を確認しておきましょう

M&A実施に支援機関に支払う主な費用

レーマン方式について説明する前に、一般的にM&Aの支援機関に協力を依頼した際に発生する主な費用について解説します。
依頼するM&A支援機関ごとに料金体系は異なりますが、一般的には以下の費用が発生するでしょう。

費用の種類 内容
相談料 正式に支援機関と契約する前に、M&Aに関する相談をした際に発生する可能性がある料金です。
着手金 M&Aプロジェクトの開始時に支払われる料金です。
支援機関が初期の調査や準備作業を行うための費用です。
着手金の金額は、プロジェクトの規模や複雑さに応じて異なりますが、一般的には数百万円程度が相場です。
月次顧問料(リテイナーフィー) プロジェクトが進行する間、毎月支払われる固定費用です。
これは、M&A支援機関が提供する継続的なサポートやアドバイザリー業務に対する報酬です。
月次顧問料は、プロジェクトの規模や期間に応じて設定され、通常は数十万円から数百万円程度です。
中間報酬 M&Aの交渉を進める中で、両者が本格的にM&Aの実現に向けて交渉を進めたいという意向が一致した際、基本合意を締結します。
その基本合意を締結した段階で、中間報酬が発生します。
成功報酬 M&Aが成功した際に支払われる報酬です。
成功報酬は、取引の規模(譲渡価格や買収価格)によって異なり、レーマン方式などの段階的な報酬率が採用されることが多いです。
その他諸経費 デューデリジェンス費用や企業価値算定費用、マーケティング費用などが場合によって発生してくることがあります。
詳しくは、各M&A支援機関にお問い合わせください。

M&Aのレーマン方式とは?

レーマン方式とは、M&Aの取引金額に対して報酬率を乗じて報酬額を算出する計算方式です。
M&Aが成功した際に支払う成功報酬を算出する際に、活用されるケースが多いです。

「レーマン」とは、ドイツの権威ある経営学者「レーマン博士」に由来しています。

成功報酬の計算方法

レーマン方式の計算方法について、詳しく解説します。
レーマン方式は、取引金額に基づいて段階的に設定された報酬率があり、取引金額に報酬率を乗じて成功報酬を算出します。

成功報酬(円)=取引金額(円) × 報酬率(%)

M&Aでは、買い手が売り手に対して買収の対価を支払います。
この時に支払われるものが、取引金額です。

報酬率は取引金額によって異なり、一般的には以下のように設定されています。

取引金額 報酬率
5億円以下 に該当する金額 5%
5億円超~10億円以下 に該当する金額 4%
10億円超~50億円以下 に該当する金額 3%
50億円超~100億円以下 に該当する金額 2%
100億円超 に該当する金額 1%

上表を見てわかる通り、取引金額の増加に伴って報酬率が低下する仕組みになっています。

成功報酬の計算例

説明しただけではイメージが難しいと思うので、具体的な計算例で詳しく見ていきましょう。

ここでは、取引金額が20億円のM&Aが成立したと仮定して、成功報酬を算出します。
取引金額が20億円なので、先ほどの表に当てはめると以下のように分割することができます。

取引金額 分割後の金額 報酬率
5億円以下 に該当する金額 5億円 5%
5億円超~10億円以下 に該当する金額 5億円 4%
10億円超~50億円以下 に該当する金額 10億円 3%
50億円超~100億円以下 に該当する金額 2%
100億円超 に該当する金額 1%

分割した金額に、それぞれ報酬率を乗じて合計すると、成功報酬の金額を算出できます。

成功報酬
=(5億円×5%) + (5億円×4%) + (10億円×3%)
=2,500万円 + 2,000万円 + 3,000万円
=7,500万円

具体的には上記のように計算され、成功報酬は「7,500万円」です。

レーマン方式の種類

レーマン方式は、取引金額の考え方によって以下の4種類に分類されています。

  • 株価レーマン方式
  • 企業価値レーマン方式
  • 移動総資産レーマン方式
  • オーナー受取額レーマン方式

株価レーマン方式

株価レーマン方式とは、株式の譲渡価額をそのまま取引金額として成功報酬を算出する計算方式です。
M&Aのスキームで最も一般的な株式譲渡のように、株式で取引きするスキームで採用されることが多いでしょう。

株式の譲渡価額がそのまま取引金額となるため、シンプルに計算できるというメリットがあります。

企業価値レーマン方式

企業価値レーマン方式とは、株式の譲渡価額に対し、借入金(有利子負債)残高を加えた金額を取引金額として成功報酬を算出する計算方式です。
この方式は、会社を売却したことで金融機関などから借り入れていた負債からも解放され、その分企業の価値も上がるという考え方に基づいています。

金融機関からの借入金残高が大きな会社では、企業価値レーマン方式を採用すると株価レーマン方式と比較して、より多くの成功報酬が必要になるでしょう。

移動総資産レーマン方式

移動総資産レーマン方式とは、株式の譲渡価額に負債総額を加算した金額を取引金額として成功報酬を算出する計算方式です。
企業価値レーマン方式では借入金(有利子負債)だけでしたが、移動総資産レーマン方式では買掛金や未払金などの負債も取引金額に加算されます。

負債総額が多い会社は買い手からも敬遠されやすく、M&A成立のハードルは高くなります。
レーマン方式の4種類の中で最も成功報酬が高額になりやすい方式ですが、ハードルの高さを考慮すると納得感のある方式ともいえるでしょう。

オーナー受取額レーマン方式

オーナー受取額レーマン方式とは、株式の譲渡価額に対して、役員借入金を加算した金額を取引金額として成功報酬を算出する計算方式です。
役員借入金とは、経営者や役員、その親族などから企業が借り入れたお金のことを指します。

企業が役員借入金を抱えている場合、こちらのオーナー受取額レーマン方式が採用されるケースもあります。

レーマン方式を活用するメリット

レーマン方式を採用しているM&Aの支援機関に依頼することには、企業にとって以下のメリットがあります。

  • 成功報酬が公平である
  • 費用を事前に算出しやすい

成功報酬が公平である

レーマン方式は、取引金額をベースに報酬率を乗じて成功報酬を算出するため、取引規模に応じて成功報酬額が変わります。
そのため、企業にとって不公平感が少ない計算方式です。

成功報酬が一律定額だった場合、小規模な案件ほど割高感が生じてしまうでしょう。
報酬率が一律定率だった場合は、報酬金額が大きくなればなるほど報酬金額も膨れ上がってしまいます。

このように、定額式や定率式の計算方法と比較すると、レーマン方式は不公平感がなく、納得感のある計算方式であるといえます。

費用を事前に算出しやすい

レーマン方式は計算方法が非常にシンプルなので、取引金額がわかればおおよその成功報酬額も計算しやすいです。
そのため、M&A実施に必要な手数料もあらかじめ把握しやすく、M&Aの計画が立てやすいでしょう。

レーマン方式の支援機関を利用する際の注意点

レーマン方式を採用する支援機関に依頼する際は、以下の2点に注意しておく必要があります。

  • 最低成功報酬を設定している場合がある
  • レーマン方式の種類によって成功報酬も大きく変わる

最低成功報酬額を設定している場合がある

レーマン方式は、取引金額が少額になれば成功報酬も低くなることが一般的です。
しかし、中には最低成功報酬額を設定している支援機関もあり、レーマン方式で求めた成功報酬額が最低成功報酬額を下回った場合は、最低成功報酬額を支払う必要があります。

M&Aの規模が小さいとしても、それに比例して支援機関の業務量が少なくなるというわけではありません。
小規模案件であっても、業務量に応じた最低成功報酬金額が設定されている可能性があるので、事前に各支援機関に確認しておきましょう。

レーマン方式の種類によって成功報酬も大きく変わる

先述した通り、レーマン方式には4種類の計算方式があり、計算方式が変われば成功報酬金額も大きく異なる可能性があります。

特に、株価レーマン方式と移動総資産レーマン方式では、負債金額の分だけ成功報酬が変動します。
そのため、負債を多く抱えている企業では、どちらの方式を採用するかで成功報酬に大きな差が生じるでしょう。

どのレーマン方式を採用しているかは、各M&A支援機関によって異なるため、事前に確認しておくことをおすすめします。

事前に報酬体系を確認しておきましょう

M&Aの成功報酬金額を決めるレーマン方式について、詳しく解説しました。

レーマン方式は、企業にとって不公平感がなく事前に計算もしやすいため、M&Aの成功報酬を決めるうえで広く用いられている計算方式です。
取引金額の考え方によって4種類の計算方式があり、場合によっては計算方式によって報酬金額に大きな差が生じてくるため、事前に各M&A支援機関に確認しておきましょう。

※本記事は、その内容の正確性・完全性を保証するものではありません。
詳しくは当センターへお問い合わせいただくか、関係各所にお問い合わせください。