会社の経営が経済的な危機に陥った場合、会社の清算や再建といった倒産の手続きについて選択を迫られる状況になることがあります。
倒産手続きにはさまざまな選択肢があり、経営者は会社の責任者として、正しい選択をしなければなりません。

本記事では、民事再生の概要とともに、破産をはじめとするその他の倒産手続きとの違いを解説していきます。
民事再生を選択するメリットとデメリット、手続きの進め方もあわせてご覧ください。

  1. 民事再生とは
  2. 民事再生以外の手続き
  3. 民事再生の計画パターン
  4. 申し立ての条件・棄却されるケース
  5. 民事再生のメリット
  6. 民事再生のデメリット
  7. 民事再生手続の流れ
  8. 民事再生は誠実な対応が成功のポイント

民事再生とは


民事再生とは、個人または法人を対象とした倒産手続きのひとつで、財務困難に陥った企業が業績を回復し、再建を目指すための法的整理です。

この手続きによって債務者は一部の債務の返済を免除され、分割返済や期限延長を通じて、経済的な再生を目指します。
会社を存続させるのが目的になるため、従業員の雇用維持や事業価値の保全が重視されるのが特徴です。

債務者は裁判所に対して再生計画を提出し、債権者からの同意、裁判所の認可を受けたのち、計画に則って事業の立て直しを図ります。

ただし、債権者の利害調整が重要なポイントになるため、再生計画が思うように成立せず、破産手続きに移る可能性もある点には注意が必要です。

民事再生以外の手続き


倒産手続きは、大きく「再建型」と「清算型」の2種類に分けられ、民事再生は文字通り法的整理における再建型の手続きに分類されます。

自社の経営が困難になった際に、適切な倒産手続きが選択できるよう、民事再生以外の方法についても理解しておきましょう。

破産

破産は、債務者が返済できない状態になった際にすべての資産を換価(現金化)し、債権者に公平に分配するための法的手続きです。

企業の破産は事業の終結により会社が解散に至り、個人破産では信用情報に登録されるなど今後の生活にある程度の制約が伴います。
しかし、残存する債務の支払い義務がなくなるため、経済生活の再スタートが可能になります。

破産手続きが開始されると、債務者の財産は裁判所が任命する破産管財人の管理下に置かれ、債権者への公平な配当が行われます。

財産がなく配当が行えない場合には、破産手続開始の決定と同時に手続きが終了する「同時廃止」になることもありますが、法人で認められるケースはほぼありません。

特別清算

特別清算は、破産と同様に会社を終わらせるための法的手続きで、会社法を根拠に行われるため株式会社のみが対象になります。

債権者と協議しながら債務を整理し、債権者の同意を得る必要があるものの、会社が清算人を選定できるため破産よりも柔軟に債務処理が行えます。

破産に比べて手続きも厳格ではないため、迅速に会社を清算できるのが利点ですが、前提として、すでに解散していなければ特別清算の対象にはなりません。
株式会社の解散には、株主総会の特別決議での可決が必要になり、これが大きなハードルになります。

特別清算は、倒産のイメージに直結しにくいことから、子会社の消滅などに利用することでイメージダウンを避けるケースが見受けられます。

会社更生

会社更生は、主に大規模な株式会社が利用する再建型の倒産手続きであり、裁判所の管理下で経営の再建を目指すものです。

企業の経営権は裁判所が選任する更生管財人に移行して、従来の経営陣は交代することになります。
そのため、民事再生に比べて組織の再編が容易に行える点がメリットといえるでしょう。

更生管財人のもと再建計画(更生計画)を策定し、債権者や株主の同意を得たのち、裁判所の認可を受けて計画を実施します。
民事再生に比べて大規模な手続きになり、多額の費用が必要になるため中小企業には向いていません。

私的整理

私的整理は、法的手続きに依存せず、債務者と債権者が直接交渉して債務の再編を図る手続きです。

民事再生や破産と異なり、裁判所が関与しないため手続きが迅速に進行するほか、外部に経営困難が知られにくい点がメリットです。

ただし法的強制力がないため、当事者間での合意形成がうまくいかず、交渉が難航することもあります。
債権者の合意が得られない場合は、手続きが失敗に終わる可能性もあるでしょう。

企業が経営危機に陥った際、事業継続のために選択されることが多く、経営者が自らの手で再建を目指す場合に利用されます。

民事再生の計画パターン


民事再生は、主に以下の方法で実施されます。

  • 自力再建
  • スポンサー

自力再建する場合は、外部からの資金援助や支援を受けずに、自社のリソース、内部留保などを活用して事業の再建を図ることになります。

企業の独立性やブランド価値を維持しやすいのがメリットですが、内部リソースに限界がある場合は再建が難航するリスクも伴います。

同業他社、投資ファンド、金融機関などのスポンサーから支援を受けるケースでは、再建に必要な資金やノウハウを外部から得られるのが大きなメリットです。

ただし、スポンサーとの間で利害調整や交渉が必要になるほか、企業の独立性が失われる可能性は軽視できません。

上記のどちらも選択できない場合は、事業の一部またはすべてを受け皿会社に譲渡し、旧会社を清算することで事業の再建を図るケースもあります。

申し立ての条件・棄却されるケース


民事再生の申し立ては、債務者が支払い不能や債務超過になっている、もしくは資産を売却しても完済できない状態であることが条件になります。
ただし、民事再生の再生計画案の決議の可決要件は、再生計画決議の出席議決権者の過半数の賛成及び再生の対象となる債権者の債権額総額の過半数の賛成が必要になるので、協力や賛同が得られない場合は認められません。

また、債務者が債権者を欺く意図で手続きを利用しようとした場合や、再生計画が現実的でないと判断された場合には、裁判所により棄却されることがあります。

再建が困難であると判断された場合、民事再生手続の申し立ては棄却され、最終的に破産手続きに移ってしまうこともあるので注意してください。

民事再生の申し立ては、債務者、裁判所、債権者の信頼関係を基に進められるため、不正や現実性に欠ける計画は受け入れられません。

民事再生のメリット

民事再生では、次の3点が主なメリットになります。

  • 経営権が維持できる
  • 事業の継続が可能である
  • 資金を残せる

破産や会社更生のように経営層が退く必要がないため、現場を混乱させることなく事業を続けることが可能です。

事業を再建させることが目的のため、業務を継続しながら債務の返済が行え、計画通りに進めていれば口座が凍結されることもありません。

そのため、事業に必要な資金を確保したうえで会社の再建が図れます。

民事再生のデメリット

民事再生には、次のようなデメリットもあるので把握しておきましょう。

  • 企業イメージが低下する
  • 担保権が残る
  • 手続きに費用がかかる

再建が目的とはいえ、民事再生が倒産手続の一つであることは事実です。そのため取引先や顧客に不安を与える可能性があり、今まで通りの取引が難しくなることがあります。

また担保権は別除権として行使されるため、会社の土地を担保に借入をしている場合は注意が必要です。

民事再生を行うと債務が減免されますが、債務免除益に対する法人税、弁護士費用、裁判所に支払う手続き費用などが発生します。

民事再生手続の流れ


民事再生は、一般的に以下の流れで進みますが、企業の状況によって変わることもあります。

  1. 申し立て
  2. 監督委員の選任
  3. 説明会を実施
  4. 再生手続きの開始決定
  5. 債権調査
  6. 財産価額の評定・報告
  7. 再生計画案の作成と決議
  8. 再生計画案の実行

申し立てでは、代理人の弁護士が管轄の裁判所に対して行うのが一般的です。
申し立てが受理されたのち、裁判所によって監督委員が選ばれます。

債権者の同意が得られて裁判所が認めた場合、民事再生手続きの開始が決定されます。
その後、再生会社が債権について認め、債権者からも合意が得られた場合は所有している財産の価額を評定し、裁判所へ認否書を提出します。

これまでの調査と財産価額の結果から再生計画案を作成して債権者に提出し、債権者の過半数、債権額でも1/2以上の賛成が得られて認可されるという流れです。

認可が得られた場合は計画を実行し、債権者へ弁済を行います。

民事再生は、認められなければ破産手続きに移ってしまうため、まずは棄却されない再生計画を作成することが大切です。

同意が得られるよう、専門家のアドバイスを基に計画をたて、債権者に対して誠実な対応を心掛けてください。

民事再生は誠実な対応が成功のポイント


倒産手続は大きく2種類に分けられ、会社の再建を図る民事再生は、再建型の法的整理に分類されます。

民事再生では、債権者の協力と信頼を得ることが重要になるため、説明会を開催し誠意をもって対応することが大切です。
また、返済の根拠や実現性が乏しいと棄却される可能性があるため、専門知識を用いてしっかりと再生計画を立てましょう。

※本記事は、その内容の正確性・完全性を保証するものではありません。
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