M&Aは、会社の未来を大きく左右する重要な取引きです。
そのため、慎重で堅実な決断を迫られる場面が多くあり、高い専門性とノウハウが必要不可欠といえます。
そこで、多くの企業はM&Aを実施する際に、M&Aのプロである仲介会社や専門機関に協力を依頼することが一般的です。
しかし、世の中には多くのM&A仲介会社や専門機関が存在するため、どこに依頼すれば良いかわからないという方も多いのではないでしょうか。
本記事では、M&A仲介会社を選ぶ際のポイントや注意点を詳しく解説します。
仲介会社選びに失敗してしまうと、M&Aが成功しなかったり、売却・買収後に想定していた成果が得られなかったりする可能性があるため、本記事でしっかりポイントを理解しましょう。
M&A仲介とは?アドバイザリー(FA)との主な違い
M&A仲介とは、企業の買収(Acquisition)や合併(Merger)をスムーズに進めるために、売り手企業と買い手企業の間に立ってサポートを行う専門サービスのことです。
仲介会社は両者の間を公平な立場で調整し、取引きを成功に導く役割を担います。
M&Aを進める際、主な相談先としてM&A仲介者の他にも「M&Aアドバイザリー(FA)」が挙げられますが、それぞれ立場やサポート内容が異なります。
相談先 | 立場 | 主な役割 | 適したケース |
M&A仲介 | 中立 | 売り手と買い手の橋渡し | 中小企業間のシンプルな取引き |
M&Aアドバイザリー(FA) | 依頼者の代理人 (売り手または買い手の一方) |
クライアントの利益を最大化するための戦略立案 | 大企業や複雑な条件を伴う取引き |
M&A仲介は、売り手と買い手の両者にとって中立的な立場を保ち、取引全体を包括してサポートします。
そのため、M&Aに関する知識や経験がなく、M&A進行に関する手続きを一からサポートしてほしいというケースに適しているといえるでしょう。
M&A仲介会社の主な役割・業務内容
M&A仲介会社は、取引企業の選定や法的手続き、税務知識、経営戦略の助言など、幅広く専門性の高い業務をサポートしてくれます。
M&A仲介会社の主な役割・業務内容は、以下のものが挙げられます。
- 目的の明確化・要件整理
- 企業価値評価
- 売却・買収計画の策定
- 取引企業の選定・アプローチ
- 条件交渉
- デューデリジェンスの実施・サポート
- 税務・法務アドバイス
- 各種契約手続きのサポート
- アフターフォロー
目的の明確化・要件整理
目的の明確化・要件整理とは、売り手や買い手がM&Aを行う理由や目標を具体的に定め、その達成に必要な条件や優先事項を整理するプロセスです。
売り手側では「売却価格」や「事業承継の希望」、買い手側では「取得後のシナジー効果」や「対象企業の規模」などを明確にします。
このプロセスにより、双方のニーズを一致させ、取引きをスムーズに進める土台を作ります。
企業価値評価
企業価値評価では、売り手企業の財務状況や将来性を分析し、その企業が持つ価値を金銭的に算出します。
評価方法には、純資産を基準とする簿価純資産法、将来の収益を予測して割引計算するDCF法、市場価値を基準とする類似企業比較法などがあります。
企業価値評価は、適正な売買価格を設定し、売り手と買い手の双方が納得できる条件を整えることが目的です。
売却・買収計画の策定
売却・買収計画の策定とは、取引きを成功させるための具体的なプロセスや戦略を計画することです。
売り手側では「最適な売却時期」「価格目標」「売却スキーム」、買い手側では「買収目的」「資金調達方法」「統合後のシナジー創出」などを明確化します。
また、スケジュールや実行体制を整え、デューデリジェンスや交渉などの各段階を効率的に進めるための指針を決めます。
取引企業の選定・アプローチ
取引企業の選定・アプローチは、売り手側が理想的な買い手企業、買い手側が適切な売り手企業をリストアップし、接触する重要なプロセスです。
選定では、事業規模、業界、シナジー効果、財務状況などを基準に最適な候補を絞り込みます。
その後、非公開を前提に買い手候補へ情報資料(TeaserやIM)を提供し、興味を持った企業と具体的な交渉を開始します。
これにより、双方のニーズに合った企業間のマッチングを実現します。
条件交渉
条件交渉では、売り手と買い手が取引価格や支払い方法、従業員の雇用維持、取引後の経営方針など、取引きの具体的な条件を協議し、合意を目指します。
交渉では、売り手側が企業価値や希望条件を主張し、買い手側がリスクや期待するシナジー効果を考慮して調整を行います。
双方の立場を尊重しながら、基本合意書(LOI)の締結に向けた折衝を進めます。
デューデリジェンスの実施・サポート
デューデリジェンスの実施・サポートは、買い手が売り手企業の財務、法務、税務などを詳細に調査し、取引きの妥当性やリスクを確認するプロセスを実行・支援することです。
具体的には、必要な資料の準備や調査チームの対応、問題点の洗い出しをサポートします。
これにより、取引後のリスクを最小限に抑え、適切な価格設定や契約条件の調整に役立てます。
税務・法務アドバイス
M&Aに伴う税務や法律上のリスクを最小化し、適切な取引条件を整えるための助言を行うことも、M&A仲介の重要な役割です。
税務では、株式譲渡や事業譲渡における課税の最適化や節税対策を検討し、法務では契約書作成やデューデリジェンスでのリスク発見、コンプライアンスの確認をサポートします。
専門家の助言により、取引きの安全性を確保しつつ、双方が納得できるM&Aの実現を目指します。
各種契約手続きのサポート
取引きに必要な契約書(基本合意書や株式譲渡契約書など)の作成、内容確認、交渉調整を支援します。
売り手と買い手が合意した条件を正確に反映し、法的リスクを回避するための助言を行います。
また、契約締結後の手続き(登記変更や資金決済など)を円滑に進めるためのサポートも含まれます。
これにより、取引きを安全かつスムーズに完了させることが可能です。
アフターフォロー
M&Aにおけるアフターフォローでは、取引完了後の統合プロセス(PMI)の支援や、買収後の経営体制の整備をサポートします。
具体的なサポート内容は、従業員の雇用維持、組織文化の統合、システムや業務フローの調整、買収シナジーの実現に向けた助言などです。
これにより、M&Aの目的を達成し、取引後のリスクや課題を最小限に抑えながら、スムーズな運営を実現します。
M&A仲介会社を選ぶ際のポイント
M&A仲介会社選びに失敗すると、M&Aが成立しなかったり、納得のいかない形で取引きが実行されたりする可能性があるため、慎重に選定する必要があります。
M&A仲介会社選びで失敗しないためのポイントは、以下の通りです。
- 実績・経験
- 得意分野
- 報酬体系
実績・経験
M&A仲介会社を選ぶ際には、候補先企業の実績や経験を確認することが非常に重要です。
M&Aは複雑で専門性の高い取引きであり、成功のためには豊富な経験やノウハウが欠かせません。
実績のある仲介会社は、多様な取引事例を通じて業界特有の課題やリスクに対応する力を持っているため、安心して任せることができます。
また、売り手や買い手のニーズに合った適切な相手を見つけるマッチング力や、条件交渉を円滑に進める交渉力も実績のある企業ほど高い傾向があります。
さらに、自社と同業種や同規模の企業を対象とした取引経験がある仲介会社は、自社に適した提案を行える可能性が高く、取引きをスムーズに進めやすくなります。
そのため、候補先の過去の成功事例や取引件数、対象とした企業の業界や規模について具体的に確認することが重要です。
こうした情報をもとに、信頼できる仲介会社を選ぶことで、M&Aの成功率を高められるでしょう。
得意分野
M&Aは業界・業種・会社規模など、様々な条件によって求められる知識や対応が異なります。
そのため、仲介会社がどの分野に強みを持っているかを把握することで、取引きの成功確率を大きく高めることができるでしょう。
例えば、ITや製造業、飲食業など、業界特有のビジネスモデルや収益構造を理解していないと、適切なマッチングや条件交渉が難しくなる可能性があります。
また、業界に精通している仲介会社は、その分野の買い手や売り手のネットワークを広く持っているため、適切な相手を見つけやすい点も大きなメリットです。
さらに、業界特有のリスクや規制、トレンドを把握しているため、より的確なアドバイスや戦略の提案が期待できます。
自社の業界や取引きの目的に適した得意分野を持つ仲介会社を選ぶことで、スムーズな取引進行と双方にとって満足のいく結果を得られる可能性が高まります。
そのため、選定時には得意分野や過去の取引実績をしっかり確認することが重要です。
報酬体系
M&A仲介会社を選ぶ際には、報酬体系を確認することが重要です。
M&Aでは、多くの仲介会社が「成功報酬型」を採用していますが、具体的な費用構造は会社ごとに異なるため、事前に詳細を確認しておく必要があります。
例えば、仲介手数料には「着手金」「中間報酬」「成功報酬」が含まれる場合があり、それぞれの金額や支払い条件を把握することで、予期せぬ費用負担を避けられます。
特に成功報酬は、売却価格や買収額に応じて料率が設定されるため、手数料がどのように計算されるのかを確認しておきましょう。
また、最低報酬額の設定がある場合、それが自社の規模や取引内容に適しているかを確認することもポイントです。
一部の仲介会社では、追加費用(市場調査やデューデリジェンスのサポート費用など)が発生することがあるため、見積もり時に総額を確認することが重要です。
透明性があり、自社の取引規模や予算に合った報酬体系を持つ仲介会社を選ぶことで、安心して取引きを進めることができるでしょう。
M&A仲介会社に依頼する際の注意点
M&A仲介会社に協力を依頼すれば、M&Aに精通した専門家が一から丁寧にサポートしてくれるため、安心して取引きを進められるというメリットがあります。
しかし、M&A仲介会社が高額な報酬を得るために、売り手や買い手の利益よりもM&Aの成立自体を優先させるケースが、近年問題視されています。
仲介会社の多くは「成功報酬型」の報酬体系を採用しており、取引きが成立した際に手数料を受け取る仕組みです。
このため、仲介会社が報酬を得ることを優先するあまり、売り手や買い手にとって最善の条件ではなく、成立しやすい条件で取引きを進めることがあるといわれています。
例えば、売り手にとって不利な価格で取引きをまとめたり、買い手の本来の目的と異なる企業を紹介したりするケースが挙げられます。
2020年に、当時の内閣府特命担当大臣の河野太郎氏が、M&A仲介業界の利益相反問題に対して自身のブログで言及したことで、世間の注目を浴びました。
そのため、仲介会社選びの際には、報酬体系の透明性や過去の実績、信頼性を慎重に確認することが重要です。
また、必要に応じてM&Aアドバイザリーやセカンドオピニオンを利用することで、自社の利益を守る方法も検討できます。
誠実なM&A仲介会社に依頼してM&Aを実現しましょう
M&A仲介会社は、企業同士の架け橋となり、M&Aの成功を支える重要な役割を担います。
仲介会社を選ぶ際は、実績や専門性、得意分野、報酬体系の透明性などを慎重に確認することが大切です。
また、依頼する際には、信頼関係を築き、常に自社の利益が守られているかを意識しましょう。
誠実で信頼できる仲介会社をパートナーにすることで、安心して取引きを進め、企業の成長や目標達成につながるM&Aを実現できます。
事業承継M&Aパートナーズは、M&Aを単なるビジネスではなく血の通った公正な取引きと考え、信頼を大切にしながら誠実なサポートを心がけております。
事業承継やM&Aに精通し、豊富な経験を持つコンサルタントが、最善のM&Aの実現を目指して全力でサポートしますので、まずはお気軽にご相談ください。
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