暦年贈与とは、暦年(1月1日から12月31日まで)の間、110万円以内の贈与なら贈与税がかからない制度です。
「相続税・贈与税の一体化」は、2020年12月に発表された「令和3年度税制改正大綱」の中でも、言及されています。
この後の動きについて注目されていますが、多くの専門家がこのまま進んでいくだろうとみています。
暦年贈与の詳しい内容ややり方については、下記のコラムをご覧ください
暦年贈与の賢いやり方は?併用できるorできない非課税制度も紹介!
【歴年贈与】とは、暦年(つまり1月1日から12月31日)毎に贈与を行い、その贈与額が年間110万円以下の場合は…
相続・贈与一体化の目的とは?
令和3年度税制改正大綱の中で述べられていることを引用しつつ、解説します。
また、この令和3年度税制改正大綱では暦年贈与だけではなく、相続時精算課税制度も同様に見直し、相続税と贈与税の一体化について本格的に検討することが記載されています。
参考・引用:https://www.jimin.jp/news/policy/200955.html
若い世代に資産を移行し、経済を活性化すること
高齢化等に伴い、高齢世代に資産が偏在するとともに、相続による資産の世代間移転の時期がより高齢化にシフトしており、結果として若年世代への資産移転が進みにくい状況にある。
高齢世代が保有する資産がより早いタイミングで若年世代に移転することになれば、その有効活用を通じた、経済の活性化が期待される。
このため、資産の再分配機能の確保に留意しつつ、資産の早期の世代間移転を促進するための税制を構築することが重要な課題となっている。
引用:https://www.jimin.jp/news/policy/200955.html
つまり、早いタイミングで高齢者から若い世代へ資産を移行させ、経済を活性化させるのが狙いです。
元々、日本では高齢者に資産が集中し、高齢化によって受贈者も高齢、若い世代へ資産移行されていないことが問題視されていました。
分割贈与を通じた負担開始を防止する
わが国の贈与税は、相続税の累進回避を防止する観点から、高い税率が設定されており、生前贈与に対し抑制的に働いている面がある。一方で、現在の税率構造では、富裕層による財産の分割贈与を通じた負担回避を防止するには限界がある。
諸外国では、一定期間の贈与や相続を累積して課税すること等により、資産の移転のタイミング等にかかわらず、税負担が一定となり、同時に意図的な税負担の回避も防止されるような工夫が講じられている。
引用:https://www.jimin.jp/news/policy/200955.html
これはつまり、富裕層による税負担回避防止です。
諸外国の制度を参考にして、贈与税と相続税を一体化し、より公平で中立的な納税を促すということでしょう。
実際に「相続税・贈与税の一体化」が進むとどうなる?
この制度が実際に施行される場合、2つのパターンが想定されています。
相続開始の3年以内が持戻しだった期間が延長
暦年贈与が適応される相続開始より3年以内に贈与の場合は、持戻して相続財産として加算されるルールがありましたが、これが3年ではなく、5年、10年、15年と延長されるかもしれません。
暦年贈与の110万円以下の非課税枠を廃止されるかも?
受贈者にとって最も深刻な変更は、暦年贈与の廃止です。
少しずつ行ってきた贈与が、相続の時点ですべて持戻しとなり相続財産として加算され、相続税が発生する可能性もあります。
延長ルールが現実的?
税理士をはじめ、専門家の間でもどちらになるか2つに分かれます。
持戻しルールの延長が現実的と言われていますが、発表まではわかりません。
本当に「相続税・贈与税の一体化」は行われる?
かなり高い確立で進むとみられています。
先の【2021年衆議院選挙】で与党が議席過半数を確保したことにより、このまま軌道修正なく進んでいく可能性がより高くなりました。
「相続・贈与一体化」はいつ発表・いつからはじまる?
年末に翌年の税制改正大綱が公開されます。
税制改正大綱とは、各省庁からあがった税制改正についての要望などを受け、与党の税制調査会が中心となり、翌年度以降の税制改正の方針をまとめたものです。
税制改正大綱が2021年の年末に発表となり、早ければ4月より施行されます。
以下は最も早い施行になった場合です。
専門家の間でも開始時期における意見はバラバラです。
- 【12月】令和4年税制改正大綱が発表され、法案が作成される
- 【2月】国会で審議される
- 【3月】成立となる
- 【4月】新制度がスタートする
早ければ「相続税・贈与税の一体化」は、2022年の4月にはスタートすることになります。
「もっと先の話」「2023年の4月から」などさまざまな意見はありますが、税理士など専門家に相談しながら、早めに贈与を進めておきましょう。
実際どうなるか、進められるのかなどは12月の「令和4年税制改正大綱」が出てからまたこちらにて解説いたします。
※本記事は、その内容の正確性・完全性を保証するものではありません。
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