相続する遺産の中に実家や賃貸マンションなどの不動産が含まれる場合、その不動産の土地評価額が算出され、その額に応じた相続税が課されることになります。
しかし、同じ土地は一つとして存在しないため、類似した土地と比較することである程度の相場はわかっても、具体的な定価をつけることは非常に難しいです。
そこで、今回のコラムでは相続税における土地評価額の算出方法について詳しく解説していきます。
不動産を含めた相続を考えている方は、ご参考になさってください。
一物五価:土地評価額の算出方法
まず、土地評価額には以下の5種類があります。
- 時価
- 公示時価
- 路線価
- 固定資産税評価額
- 基準地価
一つの土地に対して五つの評価額があることから、これらを総じて一物五価と呼びます。
それぞれ使用目的や算出方法が異なり、最終的な評価額にも差が生まれますが、一つひとつ解説していきます。
時価(実勢価格)
時価は実際に土地の売買時に取引された価格のことを指し、実勢価格と表現されることもあります。
過去の取引価格を参考に決められることがありますが、取引事例が少ない地域での信用度は低く、あくまで売主と買主によって価格が決められるため、変動しやすい傾向にあります。
公示地価(公示価格)
国土交通省が地価公示法に基づいて毎年発表している評価額を公示地価、あるいは公示価格と呼びます。
全国各地に3万か所以上ある標準値において、それぞれ1㎡あたりの地価が発表されています。
公共事業を行う際の用地取得や不動産取引に使用されますが、毎年鑑定されているため、常に最新の評価額を知ることができます。
路線価(相続税評価額)
他の評価額や鑑定を基準として、標準値と定められた各道路に面する土地の1㎡あたりの評価額を路線価と呼びます。
算定するのは国税庁で、相続税の計算時にも用いられることから、相続税評価額とも呼ばれています。
公示地価のおよそ8割が目安とされています。
固定資産税評価額
固定資産税などの税金を計算する際の基準になる評価額を固定資産税評価額と呼びます。
総理大臣が定めた固定資産評価基準に基づいて各市町村の担当者が算出しますが、主に納税金額の設定に使用されており、こちらを基準に相続税が計算されることもあります。
また、土地の価値の変動を想定して算出されることから公示地価より低くなる傾向にあり、その7割が目安になります。
ただし、調査箇所が多いため、算出されるのは3年に1回とされています。
基準地価(都道府県基準地標準価格)
国土利用契約法に基づき、各都道府県知事が定める評価額を基準地価と呼びます。
都市計画区域内を中心に調査する公示地価とは反対に、都市計画区域外も広く対象としていることが特徴で、公示地価を補完する役割があります。
路線価・固定資産税評価額の調べ方
相続税の計算時には、上記した一物五価のうち、路線価や固定資産税評価額を使用します。
それぞれの調べ方を解説します。
路線価の調べ方
国税庁の路線価図で調べる
路線価はインターネットで簡単に調べることができますが、その方法の一つは国税庁のページにある路線価図を確認することです。
実際に見てみると、それぞれの道路に数字が割り振られていることがわかりますが、この数字が、その道路に面した土地の1㎡あたりの評価額を示しています。
全ての市町村の全ての道路に路線価が割り振られているわけではありませんが、市街地を中心に、多くの道路に路線価が定められていることがわかります。
全国地価マップで調べる
同様に、一般財団法人資産評価システム研究センターが運営する全国地価マップでも路線価を確認することができます。
使い方は国税庁の路線価図と大きく変わりません。
いずれかのページで、自分が所有する土地の路線価がいくらなのか、確認してみると良いでしょう。
固定資産税評価額の調べ方
固定資産税課税明細書を確認する
不動産の所有者には、毎年市町村から固定資産税課税明細書が届きます。
固定資産税評価額が記載されているため、保管してある場合はその明細書を確認することをおすすめします。
また、不動産の売却時に必要になる明細書なので、売買の予定がある場合は準備しておきましょう。
固定資産評価証明書を確認する
もし固定資産税課税明細書を紛失してしまった場合は、市役所で固定資産評価証明書を取得することができます。
そうすることで、同様に固定資産税評価額を確認することができます。
また、証明書の取得には身分証明書が必要なので、忘れずに持っていきましょう。
固定資産課税台帳を確認する
市役所で閲覧できる固定資産課税台帳にも、固定資産税評価額が記載されています。
そのほか、土地・家屋に関する所在・所有者などを確認することが可能で、固定資産税の納税者・家族・代理人などが閲覧することができます。
相続税評価額の算出法
路線価や固定資産税評価額を使い、「路線価方式」、あるいは「倍率方式」によって相続税評価額を算出します。
地域によって算出方法を使い分けるのですが、路線価が割り振られている市街地などはその路線価を使って路線価方式で、路線価が割り振られていない郊外などは固定資産税評価額を使って倍率方式で、それぞれ相続税評価額が算出されます。
路線価方式
路線価方式は、以下の方程式で相続税評価額を算出する方法です。
相続税評価額=路線価×土地面積(㎡)
仮にその土地の路線価が10万円、土地の面積が200㎡だとすると、その土地の相続税評価額は2,000万円ということになります。
倍率方式
次に倍率方式は、以下の方程式で相続税評価額を算出します。
相続税評価額=固定資産税評価額×地域ごとの評価倍率
国税庁のページではその地域ごとの評価倍率表を確認することができますが、そこに記載されている数字が、その地域の倍率ということになります。
例えば、固定資産税評価額が500万円、評価倍率が1.2倍だとすると、相続税評価額は600万円になります。
土地の状況に応じて補正される場合がある
通常、同じ道路に面している土地は同じ路線価が適用されますが、中には奥まっていて出入りが難しい不便な土地もあります。
反対に、複数の道路に面している便利な角地も存在しますが、そのような場合には評価額が補正される場合があります。
- 不整形地補正
- 間口狭小補正
- 奥行長大補正
上記はその補正の一例ですが、土地の状況に応じて、本来の路線価による評価額が上下する場合があります。
土地評価額を把握して、早めの相続準備を!
相続税における土地評価額について解説してきましたが、ご理解いただけたでしょうか。
当コラムではあくまで一般的な算出方法を紹介しましたが、不動産の評価額を算出することは非常に難易度が高く、実際には様々な専門知識が必要になります。
そのため正確な評価額を算出するには専門家の力が必要不可欠ですが、自分自身でも大まかに計算することは可能であるため、ご自身が所有する不動産の価値を把握して、早めに相続準備に取りかかりましょう。
※本記事は、その内容の正確性・完全性を保証するものではありません。
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