特例有限会社とは?
法人はいくつかの種類に区分されていますが、その中の一つとして有限会社があります。有限会社は2006年5月1日の会社法施行によって、現在は新規で設立することはできませんが、先代から引き継がれてきた会社であれば、今でも有限会社を冠する企業は少なくありません。
しかし、実際には有限会社は存在しておらず、かつての有限会社は株式会社として存続しています。そのような企業を特例有限会社と呼び、現在街中で見かけることもある有限会社を冠する企業は、会社法施行に伴って、特例有限会社へと変わり、存続している企業ということになります。
有限会社が特例有限会社になることで、従来の有限会社の出資者が持っていた「持分及び出資」は「株式」となり、「社員」は「株主」、「社員総会」は「株主総会」へと変わりました。
今回の記事では特例有限会社における事業承継の手順や方法、注意点についても解説していきます。
特例有限会社の事業承継:具体的な手順
特例有限会社の事業承継では、主に以下の3点を行う必要があります。
- 後継者への株式の譲渡
- 株主総会を開催し譲渡承認請求と承認手続き
- 株式の価値算定
後継者への株式の譲渡
特例有限会社では、後継者に株式を譲渡することで経営権を移転することができます。
またこの場合、後継者にできるだけ多くの株式を保有させて、後継者の株式割合を高くすることに注意するようにしましょう。
株主は株式の保有割合が高いほど発言力が増します。もし、事業承継によって会社の株式が分散した状態になってしまうと、会社内の権力が分散して意思決定がスムーズに行えないなど、その後の経営に弊害をもたらす可能性があります。
株式総会を開催し譲渡承認請求と承認手続き
実際に株式を後継者に譲渡するためには、株主による譲渡承認請求と、会社による承認手続を経る必要があります。
特例有限会社では、定款に株式譲渡に関しての規定があるかないかに関わらず、「株式を譲渡により取得することについて会社の承認を要する」、「株主間の株式譲渡は会社が承認したものとみなす」という2つの規定があるものとみなされます。又、その規定を無効とするように定款を変更することができません。
そのため、現存する特例有限会社が発行した全ての株式には譲渡制限が設定されており、特例有限会社は譲渡制限株式会社ということになるのです。
株式に譲渡制限がある場合、会社での承認を得られなければ、株式を譲渡したとしても株主名簿の書き換えを請求できないため、株式を譲渡する際には会社での承認が必要になります。
株式の価値算定
事業承継をするにあたり、会社の価値算出は必要不可欠です。
譲渡制限株式の価格決定方法には純資産価額方式、類似業種比準方式、配当還元方式の3つがありますが、株式の価値算定には専門的な知識を用するため、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。
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特例有限会社の事業承継:具体的な方法
ここまで、特例有限会社が事業承継をする際に必要なステップをご紹介しましたが、実際に事業承継をするには具体的にどのような方法が考えられるのでしょうか?
特例有限会社が事業承継する場合、その手法は株式会社とは大きくは変わりません。事業承継の主な手法としては、特例有限会社・株式会社問わず下記の3つが代表的です。
- 親族内承継
- 親族外承継
- M&Aによる外部への承継
※上場も事業承継の1つの手法と言えますが、難易度が高く、あまり現実的な手法ではないので今回の解説では省かせていただきます。
以下、3つの承継方法について、詳しく解説してきます。
親族内承継
事業承継の中で最も選択されている手法が親族内承継です。親族内承継とは文字通り、自身の子供や配偶者などの親族を後継者として会社を引き継ぐ方法です。
親族内承継:メリット
親族内承継のメリットとしては主に以下の2点が挙げられます。
- 会社内外の理解を得やすい
- 後継者教育がしやすい
1つ目のメリットは、事業承継をした後に会社の内外両方での関係者に後継者がスムーズに受け入れられる点です。
会社の経営者が変わることによって会社内の従業員や会社外の取引き先に多少の影響があることは免れません。しかし、後継者が先代の親族であった場合では、理解が得られやすく、その影響が少なくできる傾向にあります。
親族内承継での2つ目のメリットは、後継者教育がしやすいという点です。親族内承継では後継者を比較的早期に選定することができます。そのため後継者教育のために長期の準備期間を確保しやすい傾向にあります。
親族内承継:デメリット
親族内承継のデメリットは、親族内に必ずしも経営者の資質と経営への意欲を持った人がいるとは限らないという点です。
後継者本人に意欲や資質がないという問題は解決することが難しいため、別の手法を検討する必要があります。
親族外承継
親族外承継はその名の通り親族以外の人物を後継者とする手法です。しかし、基本的には会社内の役員や従業員を後継者とする手法を指します。
親族外承継:メリット
親族外承継のメリットとしては主に以下の2点が挙げられます。
- 後継者の選択肢の幅が広い
- 経営の一体性が保ちやすい
親族内承継の場合と比べると後継者候補の選択の幅が広がるので、優秀な後継者を選出できる可能性が高まります。又、社内で長年勤務した従業員であれば、会社の経営方針や文化を理解しているため経営の一体性を保ちやすいです。
親族外承継:デメリット
親族外承継のデメリットとしては、後継者の資金不足により会社の株式を買い取れない可能性があるということです。又、個人保証を引き継ぐことを拒み、後継者が事業承継を拒否する可能性もあります。
このようなことからも親族外承継では、親族内承継の場合以上に後継者が経営に対して強い意志を有していることが重要だと言えます。
M&Aによる外部への承継
M&Aによって他の会社や経営者に会社を売却することでも事業承継を実現することができます。
M&Aによる外部への承継:メリット
M&Aによる外部への承継のメリットとしては主に以下の2点が挙げられます。
- 広く候補者を探すことができる
- 売却益を獲得できる
M&Aで外部に承継する際では、親族や会社内などの身近に後継者となり得る人材がいない場合でも外部へ候補者を求めることができる点は大きなメリットの一つです。
又、経営者が売却によって、まとまった資金を得ることができる点もM&Aを検討する上での大きな魅力の1つです。
M&Aによる外部への承継:デメリット
M&Aによる外部への承継を行うにあたりデメリットとして挙げられるのは、経営者の希望条件を満たすような買い手を見つけることが比較的困難である点です。
又、親族内承継や親族外承継と比べると経営の一体性を保つことが難しい点もデメリットの一つとして考えられます。
特例有限会社の事業承継における注意点
特例有限会社は上場できない(IPOできない)
特例有限会社は上場ができません。上場は事業承継の一つの手法だと言えますが、特例有限会社においては選択することが出来ません。
先述したように、特例有限会社の全ての株式には譲渡制限が設けられています。特例有限会社である場合、その譲渡制限の規定を廃止することが出来ないため、特例有限会社は上場することが出来ないのです。
特例有限会社における事業承継 まとめ
特例有限会社と株式会社の事業承継では、手順や注意すべき事など、異なる点が多々あります。しかし、どちらにおいても早めに対策し、計画的に事業承継を進めていくことの大切さは変わりません。
又、事業承継には専門的な知識が必要な場面が多くあります。事業承継M&Aパートナーズには、税理士や弁護士などの士業の方や、事業承継を専門とする多くのコンサルタントが在籍しています。事業承継でお困りの際は、お気軽にお問い合わせください。
※本記事は、その内容の正確性・完全性を保証するものではありません。
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