事業承継について調べていると、「EBO」というワードをよく目にします。
EBOとは、「Employee BuyOut(エンプロイー・バイアウト)」の略であり、企業の従業員が、金融機関やファンドから支援を受け、自社の株式や事業を所有者(経営者)から買収する取引のことを指します。

主に中小企業の事業承継において活用されますが、EBOにはいくつかのメリットとデメリットがあります。
今回のコラムで詳しく解説するので、ぜひ最後までご覧ください。

  1. MBO・LBOとの違いは?
  2. EBOのメリット・デメリット
  3. EBOの手順
  4. EBOを成功させるポイント
  5. EBOを活用してスムーズな事業承継を!

MBO・LBOとの違いは?

EBOと並び、「MBO」や「LBO」というワードを見かけたことがある方も多いでしょう。
EBOとは少し意味合いが異なるため、混同を避けるためにも、それぞれの違いを解説します。

MBOとは?

MBOは「Management BuyOut(マネジメント・バイアウト)」の略で、企業の経営陣や役員が、株式や事業を買収する取引を指します。
EBOとの違いは買い手であり、EBOは従業員、MBOは経営陣がそれぞれ株式や事業を買収します。

ちなみに、経営陣と従業員が一体となる「MEBO」という手法もあります。
「Management and Employee Buyout(マネジメント・アンド・エンプロイー・バイアウト)」の略であり、経営陣の形態が変化することはありませんが、従業員が積極的に経営に携わることができるという特徴があります。

LBOとは?

LBOは「Levaraged BuyOut(レバレッジド・バイアウト)」の略です。
こちらはM&Aの一種で、買収する企業の資産やキャッシュフローを担保に金融機関やファンドから支援を受けた上で、企業を買収する取引のことを指します。
買い手となる企業は少ない資金で買収できるというメリットがあります。

EBOのメリット・デメリット

EBOのメリットとデメリットを解説します。
EBOを検討する際は、まずこれらを理解しておくことが大切です。

EBOのメリット

スムーズに事業承継できる

自社の従業員が買収することになるEBOは、第三者機関によるM&Aなどと比較し、企業に大きな変化をもたらすことがありません。
また、M&Aは細かい交渉や緻密な調査が必須ですが、EBOはそのような手間も省略できる場合があるため、スムーズな事業承継が可能という点がメリットの一つです。

後継者の選択肢が拡大する

後継者問題が深刻化する現代においても、子供や孫が後継者となる親族内承継は最も主流な事業承継の一つですが、それでは後継者候補の数が限られており、十分な資質・能力を有した人物が見つからない恐れがあります。
一方、EBOを活用する親族外承継であれば、その選択肢を従業員にまで拡大できるため、適切な人材が見つかりやすくなります。

後継者が企業の内情を把握している

既に企業の内情を把握している人物を後継者にできるという点も、EBOの大きなメリットです。
他社に買収されてしまうと、社風が大きく変わってしまい、従業員の雇用環境が悪くなってしまうケースがあります。
しかし、自社の従業員が後継者となれば、極力従来の環境を保ったまま事業承継することが可能で、優秀な人材の流出などを防ぐことにも繋がります。

株式を非公開化できる

実際にEBOを行った上場企業の多くは、EBOの後、株式を非公開にしています。
それにより、以下のメリットがあります。

  • 敵対的買収を防ぐことができる
  • 少数株主を排除し、スピーディーな会社運営ができる
  • 事務作業が簡略化できる

EBOのデメリット

支援を受けるための審査が厳しい

企業規模にもよりますが、EBOで株式や事業を買収するにあたって、買い手となる従業員は多額の資金を調達する必要があります。
個人の資金だけでは不十分であることが大半であり、金融機関やファンドから融資を受ける必要がありますが、その審査は容易に通過することができないという点がデメリットの一つです。

個人保証を引き継ぐ必要がある

事業承継を完了させるためには、EBOによって株式を買収するだけでなく、前経営者の名義で受けていた個人保証も引き継ぐ必要があります。
個人保証は対象者の資金力や信頼を担保にかけられるため、場合によっては引継ぎが困難であることが考えられます。

企業が成長しにくい

従業員が後継者となることで、社風や労働環境の悪化を防ぐことができるという点がEBOのメリットの一つでしたが、反対に言えば、大幅に向上することも難しいです。
経営者交代後も業績を伸ばしていくためには、改めて施策を出す必要があります。

EBOの手順

全体的なEBOの流れを解説します。
実際にEBOを行う場合は、以下の手順に沿って進行させましょう。

  • 後継者となる従業員を選定する
  • 株式比率を確認する
  • 譲渡価格を決定する
  • 株式譲渡の手続きを行う

後継者となる従業員を選定する

最初に、後継者となる従業員を選定します。
経営者としての資質、企業への理解、周囲からの信頼など、あらゆる要素を加味して選びましょう。

ベテランの従業員であれば、後継者としての条件を多く満たしている傾向にありますが、問題は年齢です。
前経営者とあまり年齢が変わらないようであれば、またすぐに経営者を交代しなければいけなくなってしまいます。

持株比率を確認する

株主が複数人存在する場合、各株主がどれほどの比率の株式を保有しているのか確認しましょう。
株主が経営者の一人だけである場合は、この工程は必要ありませんが、株主の人数と、それぞれの持株比率により、選ぶべき対処策は異なります。

株価を算出する

次に企業の株価を算出していきます。
算出方法はいくつかありますが、いずれも専門的な知識と、客観的な視点が必要になります。
専門家に相談し、自社に最も適した算出方法を提案してもらいましょう。

譲渡価格を決定する

算出した株価をもとに、株式譲渡の交渉を行っていきます。
いくら従業員とはいえ、スムーズに交渉が進むとは限りませんが、最大のハードルは譲渡価格です。

多くの場合、買い手と売り手で希望する価格にギャップが生じ、それが原因となって交渉が難航してしまうことが珍しくありません。
専門家に算出してもらった株価をベースに、客観的な説明を心がけることで、株主を説得しやすくなります。

株式譲渡の手続きを行う

お互いが譲渡価格に納得することができれば、株式譲渡の手続きを行います。

この際、多くの中小企業では、株式に譲渡制限が設けられているという点に注意しましょう。
取締役会や株主総会で許可を得なければ、実際に株式が譲渡されることはありません。

無事承認が得られれば、株式譲渡契約を締結し、株主名義を書き換えます。
譲渡人と譲受人の双方企業に対し、株主名簿の書換えを請求することで受理されます。

EBOを成功させるポイント

最後に、EBOを成功させるためのポイントをいくつか紹介します。

正確な企業価値を算出する

EBOを成功させるためのハードルの一つは、まず株主が株主譲渡に応じてくれるかどうかという点です。
株式の取得額を下回った譲渡価格を提示しても、株主が承認してくれる可能性は低いため、取得額を基準に交渉を進めましょう。

ただ、非上場企業の場合は株価が公開されておらず、企業価値が不明瞭です。
専門家に依頼し、正確な企業価値を算出することで、株主を説得する要素として活用することができます。

緻密な事業計画書

多額の資金が必要になるEBOでは、金融機関やファンドの支援を受けることがほぼ必須と言っても過言ではありません。
実際に支援を受けるには、厳しい審査を通過する必要がありますが、そのためには企業の業績が、支援するに値するほど優れていることはもちろん、高い将来性を秘めている必要があります。
緻密な事業計画書を作成し、それらを証明しないと支援を受けることは難しいでしょう。

EBOのプロに相談する

ここまでで解説した通り、EBOには数多くのハードルがあり、専門知識が必要になる場面も多々あります。
そのため、まずは事業承継の専門家や、M&Aの仲介業者に相談することをおすすめします。
資金調達や株価算出といった難しい課題はもちろん、EBOに関する些細なことに関してもアドバイスをもらうことができるでしょう。

EBOを活用してスムーズな事業承継を!

親族内に後継者候補がいない場合でも、EBOによって従業員に株式を譲渡することができれば、企業に大きな損害を与えることなく、事業承継することが可能になります。
課題を乗り越え、スムーズにEBOを完了させるためにも、専門家に協力を仰ぎ、その都度適切な対処をしていきましょう。

※本記事は、その内容の正確性・完全性を保証するものではありません。
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