日本ではあらゆる業種・地域において後継者不足が深刻化しており、それが原因で廃業に追い込まれてしまう会社も多いです。
しかし、後継者が見つかったからといって、決して安心できるわけではありません。

新しい社長として会社を引っ張っていける人材を育てるためには長い期間をかける必要があり、後継者本人にとっても、育成期間は長く辛いものになるでしょう。
今回のコラムでは後継者育成を成功させるためのポイントを解説するので、ぜひ最後までご覧ください。

  1. 後継者育成の目的とは?
  2. 後継者育成が不十分だとどうなる?
  3. 後継者育成を成功させる10のポイント
  4. 十分に育成し、事業承継を成功させよう

後継者育成の目的とは?

後継者育成を始める前に、まずは後継者育成の目的を改めて理解しておきましょう。

現在の社長が引退した後、正式な後継者がいなければ、従業員は指針を失ってしまい、あらゆる業務に悪影響が及びます。
特に中小企業において社長の存在は大きく、引退した途端に経営状況が悪化し、廃業に追い込まれてしまうことも珍しくありません。

注意点は、どれだけ優秀な人材が後継者になったとしても、経営者としての知識を身に付けていないと、スムーズに事業承継することができないということです。
リーダーシップを遺憾なく発揮し、会社全体を導いていくためにも、後継者育成には十分な時間を費やすことが望ましいです。

後継者育成が不十分だとどうなる?

もし後継者育成が不十分だった場合には、以下のようなことが発生する恐れがあります。

  • 経営状況が悪化する
  • 離職者が出る
  • ステークホルダーとの関係が崩れる

経営状況が悪化する

  • リーダーシップ
  • 思考力
  • 先見性
  • 情報リテラシー
  • リスク管理

これらのように、経営者には多種多様なスキルが求められます。
決して一朝一夕に身に付くものではなく、長い期間をかけ、少しずつ習得していかなければいけません。

しかし、経営者として十分なスキルが身に付く前に、新しい社長として就任してしまうと、会社の経営は一気に傾いてしまう恐れがあります。
実際、経営者が交代した直後に経営状況が悪化してしまった例は非常に多く、そのまま廃業してしまうこともあります。

離職者が出る

経営者と従業員の距離が近い中小企業では、社長に尊敬の念を抱き、これまで会社に貢献し続けてきたという人材も多いでしょう。
特に勤続年数が長い従業員であるほど、その傾向は強くなります。

会社にとっては重宝したい人材ではありますが、その反面、新しい経営者には強く反発してしまうことが考えられます。
スキルも身に付けつつ、時間をかけて他の従業員から正式な後継者だと認められなければ、承継後に従業員が反感を抱き、離職者が出る恐れもあります。

ステークホルダーとの関係が崩れる

どのような業種であっても、会社がそれ単体で完結することはありません。
従業員だけではなく、取引先・顧客・金融機関といった外部のステークホルダーの存在があってこそ、会社は利益を生むことができます。

しかし、中小企業の場合は、以前の社長がいたからこそ、良好な関係が築けていたという場合も少なくありません。
内部にばかり目を向けていると、ステークホルダーとの関係が崩れてしまい、それまで通り活動していくことが困難になってしまう場合があります。

後継者育成を成功させる10のポイント

それでは、後継者を成功させる10のポイントを解説していきます。

  • 十分な期間を確保する
  • 従業員に周知するタイミングを見極める
  • 経営方針をすり合わせる
  • 複数部門での業務を経験させる
  • 社外での経験を積ませる
  • 社長が直接指導する
  • 会社経営を経験させる
  • 会社の価値を理解してもらう
  • 社長の実績を認めてもらう
  • 危機管理能力を養う

十分な期間を確保する

一般的に、後継者の育成には長い期間を費やす必要があります。

どれだけ優秀であっても、会社経営の経験がない人材が、短期間で経営者として十分なスキルを身に付けることは困難です。
前述した通り、育成が不十分だと、様々な問題を引き起こすリスクがあります。

最低でも10年は後継者育成にかけることが望ましいです。
そのため、仮に60歳で引退すると仮定するのであれば、50歳の頃には、後継者を育成し始めなければいけないということになります。

従業員に周知するタイミングを見極める

後継者を選定する際に注意すべきことは、勤続年数が長く、優秀な人材であっても、全従業員に受け入れられるとは限らないということです。
特に従業員の中から後継者を選出する場合は、選ばれなかった他の従業員に「自分の方がふさわしい」と思われてしまうことも考えられます。

正式な後継者になるまで、無闇に言いふらすことは控え、他の従業員に周知するタイミングを見極めるようにしましょう。
後継者が周囲から認められたタイミングで公表することが、反発を抑えるポイントです。

経営方針をすり合わせる

経営者が交代したタイミングは、社内に少なからず変化が起きることになりますが、その際のギャップが大きいと、従業員の混乱を招く恐れがあります。
また、先代社長と新社長の関係が悪化してしまうことも考えられるため、あらかじめ双方が掲げる経営方針をすり合わせることが大切です。

複数部門での業務を経験させる

可能な限り、後継者には複数部門での業務を経験させることが望ましいです。

後継者として選出される人材は、営業部のような花形部署のみを経験し、新社長として就任するケースもあります。
しかし、一部の部署の経験だけでは、社内全体を見渡す能力を身に付けることは困難です。

例え短い期間だとしても、いくつかの部署に所属し、様々な業務に携わらせることが大切です。
それによって経営者としてのスキルが磨かれ、それまで見えていなかった改善点が明らかになることもあります。

社外での経験を積ませる

多くの経験を積ませるという点においては、外部の会社に勤務させることも有効です。
他社の企業文化やシステムに触れることで、自社の強みと弱みを深く理解することができます。
このようなことは後継者のうちにしかできないことであり、先代の社長とは異なる視点を持つことができます。

社長が直接指導する

後継者が身に付けなければいけないのは、従業員としてではなく、あくまで経営者としてのスキルです。
そのため、後継者育成には社長が直接指導し、経営者として必要なことを伝えることが大切です。

大手企業においても、有望な従業員に社長補佐や秘書業務を経験させることは珍しくありません。
常に社長の傍で業務をこなすだけでも、経営者に必要なことをたくさん学ぶことができます。

会社経営を経験させる

十分な育成期間を設けたとしても、前の社長が引退した日から、いきなり会社の全運営をこなすことはできません。
そのため、後継者には事業承継を完了させる前から、会社経営をある程度経験させることが望ましいです。
前段階として、まずは役員に任命し、徐々に会社経営を引き継いでいきましょう。

会社の価値を理解してもらう

先代の社長が創業者であった場合には、会社に対する思い入れは一段と強い傾向にあり、新社長とは大きな乖離があることが考えられます。
そのギャップを埋めるには、後継者に会社の価値の高さを理解してもらうことが有効です。
そうすることで、後継者の会社に対する思い入れがさらに高まり、強い責任感を持って経営に臨むようになります。

社長の実績を認めてもらう

後継者には、会社の価値だけではなく、先代社長の実績を認めてもらう必要があります。
特に親子間で会社を引き継ぐ場合、子供が客観的な視点で親を評価することは難しいです。
経営の大変さと共に先代社長の実績を伝えることで、後継者は謙虚な気持ちを持って、新社長に就任することができます。

危機管理能力を養う

社内で最も強い権限を持つ社長は、何事に関しても、常にリスク管理しながら判断を下していく必要があり、そのために重要なのは危機管理能力です。
常に新しいことに挑戦し、社員を牽引していくのと同時に、起こり得るリスクをしっかりと予見し、事前に対策を施す判断をしていかなければいけません。

十分に育成し、事業承継を成功させよう

文中で解説した通り、後継者を育成する際は気を付けるポイントがいくつもあります。
そのため、後継者が見つかったからといって決して安心できるわけではなく、むしろそこからが重要ということを理解しておきましょう。

しかし、いくら気を付けていても、後継者を育成する際は様々なハードルが現われます。
重大な問題が発生した場合などは、自社だけで解決しようとするのではなく、専門家に相談することも選択肢の一つとして挙げられます。

名古屋事業承継センターも後継者問題に関して気軽にご相談いただけます。
無料で対応させていただきますので、まずはお問い合わせフォームからご連絡ください。

※本記事は、その内容の正確性・完全性を保証するものではありません。
詳しくは当センターへお問い合わせいただくか、関係各所にお問い合わせください。