社会全体で事業承継への関心が高まり、その必要性が訴えられていますが、建設業界においても例外ではありません。
建設業の事業承継では、「許認可制の引継ぎ」など他の業界にはない特徴があります。
今回は、基本的な事業承継の方法から建設業界独特の許認可制の引継ぎに至るまで、わかりやすく解説していきます。
建設業界の現状
年々公共事業は減少し、平成22年度では41兆円まで数字を落としました。
また、平成27年度には事業者数が全盛期の約20%減となる47万まで減少するなど、建設業界は全体的に不況の傾向にありました。
しかし、今後も耐震化工事やインフラの更新工事など、建設業のさらなる需要が見込まれており、業界全体としては需要不足になることは考えにくい状況です。
建設業界では他の業界と比べても特に人材不足が深刻になっており、廃業の原因が人材不足という企業も少なくありません。
近年、建設業界では事業承継が活発になってきており、事業承継の手法の一つであるM&Aは2019年に過去最高の121件に上りました。
その背景としては先にあげた人材不足問題や建設需要の増加が挙げられ、同業種間のM&Aだけでなく、不動産などの異業種が買い手として参入するなどの動向も見られています。
建設業許可の引継ぎ
建設業界の事業承継では建設業許可の承継に注意しなければいけません。
以前は建設業許可の引継ぎができなかったため、事業承継後に新たに許可を取り直す必要があり、許可を待つ間は営業ができないという問題がありました。
しかし、令和2年10月1日に施行された改正建設業法により、建設業許可の承継が可能になったため、営業期間の空白なしに事業承継できるようになりました。
ただし、事業承継時に建設業許可の要件を満たしていなければ、許可が取り消されてしまうため注意しましょう。
建設業許可が必要ない場合
建設業は一度で扱う金額が多く、国のインフラを支える重要な業務も多いため、軽微な建設工事のみを行う場合を除いて建設業許可が必要になります。
建築一式工事において、軽微な建設工事とは以下のような工事を指します。
- 工事一件の金額が1,500万円に満たない工事
- 延べ面積が150㎡未満の木造住宅工事
それ以外の工事に関しても、工事一件で請負う金額が500万円に満たない場合は軽微な建設工事に含まれます。
建設業許可に必要な要件
建設業許可を引き継ぐ場合は、以下の五つの要件を満たしているか確認しましょう。
- 経営業務の管理責任者の在籍
- 専任技術者の在籍
- 営業所があること
- 財産的な基礎があること
- 一定の欠格要件に該当しないこと
要件を満たしていなければ、許可を取り消され、業務が滞ってしまうので注意しましょう。
個人事業主の法人成りによる許可の引継ぎ
これまで個人事業主が法人成りする際は、個人の許可を法人に承継することができなかったため、一度廃業の手続きをしてから再度法人として建設業許可を申請する必要がありました。
これにより新規で申請した許可がおりるまで営業ができないなどの問題が発生していました。
しかし、令和2年10月に建設業法が改正され、経営管理責任体制など一定の要件を満たすことで、個人から法人へ建設業許可が承継できるようになりました。
この変更を受け、建設業での事業承継はさらに行いやすくなったと言えます。
建設業の事業承継方法
建設業に限らず、事業承継は主に
- 親族内承継
- 親族外承継
- M&A
の三つの方法があります。
親族内承継
親族内承継は、文字通り息子や配偶者などの親族を後継者にする方法です。
メリット
親族内承継のメリットは、
- 後継者選定がスムーズにできる
- 後継者教育がしやすい
- 関係者に受け入れられやすい
以上の三つが挙げられます。
後継者選定がスムーズにできる
親族内承継では、他の承継方法と比べても後継者の選択肢が多くないため選定がしやすいです。
また、親族であれば気心の知れた関係であるため、待遇や条件面の交渉もスムーズに進みます。
後継者教育がしやすい
親族内承継の場合、後継者が早期から決まっている場合も多く、後継者教育にじっくりと時間をかけることができます。
社内で経験を積ませるだけでなく、一定期間社外で働いて広い知見を養ってもらうなど、様々な育成方法が検討できます。
関係者に受け入れられやすい
親族が会社を継ぐことはごく自然な流れとして捉えられることが多いです。
社内の役員や従業員だけでなく、社外の取引先にも受け入れられやすい傾向があります。
デメリット
一方デメリットとしては、
- 適した人材がいない可能性がある
- 親族トラブルが発生する
の二つが挙げられます。
適した人材がいない可能性がある
親族の中で必ずしも経営者の資質を持つ人がいるとは限りません。
本人に会社を継ぐ意思があっても、後継者としての資質がなければ、承継後に会社の業績を保つことは困難になるため、他の選択をせざるを得なくなってしまいます。
親族トラブルが発生する
複数の後継者候補がいる場合、後継者選定で意見が別れてしまうと親族間でトラブルが発生してしまうことがあります。
しっかりと親族間で話し合い、納得した上で事業承継の計画を進めましょう。
親族外承継
親族外承継は、従業員や会社外部から招いた人材を後継者として事業承継する方法を指します。
メリット
親族外承継のメリットは以下の二つが考えられます。
- 会社をよく理解する後継者を選定できる
- 後継者候補が広い
会社をよく理解する後継者を選定できる
後継者がこれまで従業員や役員として会社に関わってきた場合、会社の事業や文化に対しての深い理解が期待できます。
承継後も会社に馴染みやすく、事前に取引先にも紹介することで対外的な関係もスムーズに引き継ぐことができます。
後継者候補が広い
社内だけでなく、社外からも広く後継者候補を探すことができるため、選択肢を広く持つことができます。
他社の優秀な人材を後継者として招くことができれば、さらなる業績の向上が期待できます。
デメリット
親族外承継のデメリットは主に以下の二つです。
- 後継者に資金力が必要
- 個人保証の引継ぎ問題
後継者に資金力が必要
株式を後継者へ移動させる際に、後継者は株式を買い取るための資金を用意しなければいけません。
どれほどの資金が必要になるかは会社によって異なりますが、業績が好調で企業価値が高い場合、多額の資金を用意しなければいけないため、後継者にかかる負担が大きくなります。
個人保証の引継ぎ問題
金融機関から融資を受ける際に社長が代表して個人保証となっている場合、その個人保証も引継ぐ必要があります。
親族外の後継者に個人保証を引継ぐ場合、金融機関での手続きが難航する可能性があります。
また、後継者自身が個人保証の引継ぎを拒み、手続きが止まってしまう恐れがあるため、事前に意思を確認しましょう。
M&A
M&Aは合併(Mergers)と買収(Acquisitions)のことを指します。
近年では一般的な事業承継方法であり、特に建設業界はM&Aが比較的盛んな業界と言われています。
メリット
- 売却益を得ることができる
- 会社の成長が見込める
売却益を得ることができる
事業の売却によって経営者は資金を得ることができます。
企業価値が高く評価される程、得られる資金は多くなります。
会社の成長が見込める
M&Aで売却した事業と買い手側の企業との間でシナジー効果があった場合、事業のさらなる成長や発展が期待できます。
事業承継の成功のポイント
建設業許可を新規で申請する場合と後継者に引き継ぐ場合のどちらであっても
- 経営業務の管理責任者
- 専任技術者
は必要なポジションです。
事前に計画を立て、後継者の経営実績が5年以上あれば、経営業務の管理責任者として認められるため、スムーズに引継ぎ申請ができます。
専任技術者においても引継ぎの際は一定期間の実務経験や資格などが求められるため、時間をかけ準備することが事業承継の成功には重要です。
事業承継対策は事業承継M&Aパートナーズまで
事業承継の際、建設業許可がスムーズに引き継げなければ営業ができず、多額の損失を出してしまうことになります。
現経営者と後継者のどちらのためにも、事業承継対策をしっかりと行いましょう。
その際、このコラムを役立てていただければ幸いです。
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