M&Aの手続きを進める上で、度々「のれん」という言葉が出てきますが、ある程度の意味は把握できているものの、正確にはわからないという方は多いのではないでしょうか。

のれんについて理解を深めることで、譲渡企業側はM&Aでの自社の売却額を上げられる可能性があります。
また、税務の関係上、譲受企業にとってものれんについての基礎知識を持つことはとても重要です。

今回は、「そもそものれんとはどういうものなのか」という基礎的なことから、のれんを活用して売却額を上げる方法まで、詳細に解説いたします。
是非最後までご覧ください。

  1. のれんとは?簡単に解説
  2. 財務におけるのれんについて
  3. M&Aにおけるのれん
  4. のれんの価値を高くする方法
  5. 情報は正確に伝えることが重要
  6. M&Aは早めの準備が大切

のれんとは?簡単に解説

のれんは会社の無形価値を指す

端的に説明すると、のれんは会社のブランド力や信用などの無形価値のことを指しています。
M&Aでは、将来的な収益も考慮して会社価値が決められるため、譲渡企業が所有する土地や建物などの有形価値だけでなく、ブランド力などの無形価値も判断材料として重要になってきます。

そのため、M&Aの買収価格と譲渡企業の純資産額は異なることがほとんどであり、買収価格と譲渡企業の純資産額の差がのれんとしての価値を示しています。

【具体例:のれんの簡易的な算出方法】

譲渡企業の純資産額:1000万円
買収価格:2000万円

このようなケースでは、本来の価格は1000万円の企業に対して、2000万円で買収しているため以下のようになります。

2000万円(買収価格)− 1000万円(譲渡企業の純資産額)=1000万円(のれん)

のれんの由来

貸借対照表における勘定科目の一つでもあるのれんは、飲食店などの入口にかけられている「暖簾(のれん)」が由来とされています。
ラーメン店の「暖簾分け」からも想像されるように、暖簾はその店のブランドや信用を示しています。

そのため、会計用語においても企業の信用やブランド力を示すものとして、のれんという言葉が使われています。

財務におけるのれんについて

のれんについての基礎的な情報について解説してきましたが、次は財務におけるのれんについて簡単に説明していきます。

M&Aのスキームで中小企業を中心に最も活用されるのが、株式譲渡です。
今回は、株式譲渡における財務諸表上での、のれんの取扱いについて解説いたします。

譲渡企業の財務諸表

譲渡企業は、のれんを簿外資産として保有しているため、財務諸表上のどの部分においても「のれん」が表示されていることはありません。
譲渡企業にとっての簿外資産であるのれんは、M&Aの際の譲受企業の財務諸表上において確認することができます。

譲受企業の財務諸表

会計上、個別財務諸表と連結財務諸表を分けて考える必要があります。
個別財務表は、その企業単体の財務諸表なのに対し、グループ会社が支配従属関係にある子会社などを加味して作成される財務諸表を連結財務諸表と呼びます。

株式譲渡で行われるM&Aでは、個別財務諸表にてのれんが計上されることはなく、連結財務諸表上でのみ、確認することができます。

そのため、M&Aの一般的なスキームである株式譲渡では、基本的に譲受企業が連結財務諸表を作成した場合に限り、財務諸表上でのれんが計上されることになります。

M&Aにおけるのれん

M&Aの際にのれんがどのように関係してくるのか、譲受企業と譲渡企業の両社に分けて解説いたします。

譲受企業におけるのれん

譲受企業は税務上でのれんを計上することで節税効果が期待できます。
税務におけるのれんは、計算上は費用として損金に算入され、その損金算入金額分だけ税金による負担を減らすことが可能になります。

譲渡企業におけるのれん

上述したように、のれんが税務上で計上されることで買い手側である譲受企業にも節税という大きなメリットがあります。

そのため譲渡企業は、譲受企業が節税した分だけのれんの価格を上げて交渉するという手法が取りやすくなります。
場合によってはのれんを計上しない時よりも、実質的な負担が減ることもあり、のれんの設定はM&Aにおける重要なポイントだと言えるでしょう。

では、のれんの価値を高めて売却するにはどうすれば良いのでしょうか。
具体的な方法を解説いたします。

のれんの価値を高くする方法

中小企業のM&Aでは、多くの場合は事業承継として行われ、経営者はリタイアを前提としていることが多く、できるだけ高い売却益を得たいという方も多いのではないのでしょうか。

のれん代の価値を可能な限り高めるために、以下の3つを意識しましょう。

  • 自社分析を徹底する
  • ニーズの高い買い手を探す
  • 複数の買い手候補を見つける

自社分析を徹底する

M&Aにおいて、自社分析はとても大切な手順です。
会社経営で日頃から自社の分析は行っているかもしれませんが、M&Aでは、「買い手(譲受企業)が自社にどのような価値を感じるか」ということに注目した分析を行う必要があります。

類似した企業と比べて自社のどのような点が差別化されているのかをしっかりと調査しましょう。
会社内部からの視点だけでなく、外部からの意見を取り入れることで、自身では気付くことが難しい自社の強みを見つけることに繋がり、客観的で正確な評価が可能になります。

M&A(事業承継)コンサルティングなどの専門家の力を借りて自社分析することもおすすめです。

買い手は対象企業のあらゆることを理解した上でM&Aに踏み切るため、財務情報をしっかりと整理し、準備することも大切です。
その際は会計士などの専門家の協力があれば、スムーズかつ正確に行うことができるでしょう。

名古屋事業承継センターは、税理士や会計士などの士業が数多く在籍しており、会社の価値算定から、M&A後の企業成長まで会社状況に合わせてサポートさせていただいております。
お困りの方は、是非一度無料相談をご利用ください。

ニーズの高い買い手を探す

のれん代は、無形資産であるため明確に価値が定まっているわけではありません。
そのため、自社への評価がより高い会社に売却した方が、当然価値は高まります。
譲渡企業は、譲受企業が自社のどのような点に価値を感じて、M&Aを行おうとしているのかを把握することで、有利に価格交渉を行える可能性があります。

複数の買い手候補を見つける

売り手はより高い額での売却を望み、買い手はより低い価格での買収を望んでいます。
そのため、両者の希望額にはギャップが生まれることがほとんどで、その間で最終金額が決まります。

しかし、複数の買い手候補を見つけ、オークションのように買収額を決定させることで、相場以上の価格で売却できる可能性があるため、複数の選択肢を持つこともM&A成功のポイントだと言えるでしょう。

情報は正確に伝えることが重要

M&Aの際は、どれだけ相手側と情報共有できるかが成功のポイントになります。
買い手企業は、買収を行う前にデューデリジェンスという監査を売り手企業に対して行います。

その際に、売り手側は買い手側からの質問に対して正直に答えることが必要です。
仮に、のれんが下がるような情報を伝えずに高い売却額でM&Aを行ったとして、後に解約されたり、損害賠償請求をされてはM&Aは失敗に終わってしまいます。

M&Aは早めの準備が大切

M&Aは、早くても半年、中には2年以上の期間を要する場合もあります。
余裕を持った計画を立てることで、より企業価値を高めた上で売却することができたり、多くの買い手候補から検討することができるかもしれません。

何から始めたら良いかわからないという方でも、是非名古屋事業承継センターにご相談ください。

自社の価値がどれくらいかを知りたいという方は、無料株価算定シミュレーションも行っているので、問い合わせフォームから是非お申し込みください。

※本記事は、その内容の正確性・完全性を保証するものではありません。
詳しくは当センターへお問い合わせいただくか、関係各所にお問い合わせください。