事業承継・引継ぎ補助金は、事業承継に関する経費の一部を補助し、国全体の経済の活性化を図るために、政府が推進している補助金です。
今回のコラムでは、10月6日から3次公募の交付申請の受付が開始された「令和3年度補正予算 事業承継・引継ぎ補助金」について解説いたします。
当補助金の概要から、申請の流れにいたるまで詳しく解説いたしますので、ぜひ最後までご覧ください。
3種類の補助金の概要と適用要件
事業承継・引継ぎ補助金は、3種類の補助事業により構成されています。
- 経営革新事業
- 専門家活用事業
- 廃業・再チャレンジ事業
どの補助事業で申請するかで内容や要件が大きく異なるため、よく確認した上で申請しましょう。
また、3つの補助事業は単体での申請だけでなく、併用することも可能です。
経営革新事業
経営革新事業とは、中小企業者等(中小企業者や個人事業主)が事業承継やM&Aなどを契機に、経営革新を行う際の一部経費を補助するものです。
要するに、自社の現状や社会の環境変化に対応して、設備投資や新サービスの開発などの新たな取組みを行うことを指しています。
経営革新事業は、更に以下の3つに分類されます。
- 創業支援型(I型)
- 経営者交代型(Ⅱ型)
- M&A型(Ⅲ型)
創業支援型
創業支援型とは、他の事業所が保有している有機的一体として機能する経営資源を引き継いで創業した場合に対象となる補助事業です。
創業支援型によって補助を受ける場合は、以下の二つの要件を満たす必要があります。
- 事業承継対象期間内での法人(中小企業者)設立、または個人事業主として開業すること
- 創業にあたり、廃業を予定している者等から株式譲渡、事業譲渡等により、有機的一体としての経営資源の引継ぎを受けること
※設備のみの引継ぎなど、一定の資源だけを引き継ぐ場合は原則対象外
経営者交代型
経営者交代型とは、経営に関して一定の知識や実績を有する者が事業の承継者として、親族内承継や親族外承継などの方法で事業承継を行う場合、主に対象となります。
経営者交代型にて補助を受ける場合は、以下の二つの要件を満たす必要があります。
- 親族内承継や従業員承継等の事業承継(事業再生を伴うものを含む)によるものであること
- 経営等に関して一定の実績や知識等を有している者であること(産業競争力強化法に基づく認定市区町村または認定連携創業支援事業者により特定創業支援事業を受ける者等)
M&A型
M&A型とは、経営に関して一定の知識や実績を有する者が事業の承継者として、事業再編・事業統合等のM&Aを行う場合に対象となります。
M&A型にて補助を受ける場合は、以下の二つの要件を満たす必要があります。
- 事業再編・事業統合等のM&Aによるものであること
- 経営等に関して一定の実績や知識等を有している者であること(産業競争力強化法に基づく認定市区町村または認定連携創業支援事業者により特定創業支援事業を受ける者等)
専門家活用事業
専門家活用事業は、M&Aの際に必要となる費用の補助を行う事業を指します。
補助対象となる費用は、FA・仲介業者の手数料やデューデリジェンスに際して支払う費用などがあります。
専門家活用事業は、M&Aの買い手と売り手のどちらも対象となります。
そのため当補助事業は、
- 買い手支援型(Ⅰ型)
- 売り手支援型(Ⅱ型)
の2つの型に分類されます。
買い手支援型(Ⅰ型)
買い手支援型の補助対象者には、事業再編や事業統合などに伴う経営資源の引継ぎを行う予定の中小企業者等が該当します。
補助を受けるためには、以下の二つの要件を満たす必要があります。
- 事業再編・事業統合等に伴い経営資源を譲り受けた後に、シナジーを活かした経営革新等を行うことが見込まれること
- 事業再編・事業統合等に伴い経営資源を譲り受けた後に、地域の雇用など、地域経済全体を牽引する事業を行うことが見込まれること
売り手支援型(Ⅱ型)
売り手支援型の補助対象者には、事業再編や事業統合などに伴う経営資源の譲渡しを行う予定の中小企業者等が該当します。
補助を受けるためには、以下の要件を満たす必要があります。
- 既に地域雇用を推進するなど、地域経済を牽引する事業等を行っており、事業再編や事業統合によって第三者により継続されることが見込まれること
廃業・再チャレンジ事業
廃業・再チャレンジ事業は、事業承継やM&Aなどの際に、廃業にかかる経費の一部を補助する事業を指します。
補助の対象となる経費には以下のようなものがあります。
- 登記申請など廃業に伴う手続きに関する専門家活用費用
- 建物など設備の解体費用
- 在庫の廃棄費用
- 原状回復費用
この事業の特徴は、申請方法が2つに分類されることです。
- 併用申請
- 再チャレンジ申請(単体申請)
併用申請
廃業・再チャレンジ事業は、経営革新事業や専門家活用事業と併用して活用することができます。
活用事例としては、以下の3つの場合があります。
- 事業承継やM&Aで事業を譲り受けた中小企業者等が新規で取組みを実施するにあたり、既存の事業あるいは、譲り受けた事業の一部を廃業する場合(経営革新事業との併用)
- M&Aで事業を譲り受ける中小企業者等が事業を譲り受ける際に、既存の事業あるいは、譲り受けた事業の一部を廃業する場合。(専門家活用事業との併用①)
- M&Aで事業を譲り渡す中小企業者等が、M&A後に手元に残る事業を廃業する場合(専門家活用事業との併用②)
再チャレンジ申請(単体申請)
この事業を単体で活用することも可能です。
中小企業者等がM&Aなどに着手したが、成約にいたらず、既存事業を廃業する場合に当事業を活用することができます。
ただし、廃業後には地域の新たな需要の創造、雇用の創出をするような新規事業にチャレンジすることが求められます。
補助金の上限額
補助事業 | 類型 | 補助率 | 補助下限額 | 補助上限額 |
経営革新事業
|
創業支援型(I型) |
対象経費の3分の2以内
|
100万円
|
600万円以内
|
経営者交代型(Ⅱ型) | ||||
M&A型(Ⅲ型) | ||||
専門家活用事業
|
買い手支援型(I型) |
対象経費の3分の2以内
|
100万円
|
600万円以内
|
売り手支援型(Ⅱ型) | ||||
廃業・再チャレンジ
|
–
|
対象経費の3分の2以内
|
50万円
|
150万円以内
|
経営革新事業や専門家活用事業と併用して、廃業・再チャレンジ事業を活用する場合には、上乗せして150万円が補助されます。
補助金額の詳細な情報に関しては、事業承継・引継ぎ補助金に関する公募要領(事業承継・引継ぎ補助金事務局)をご確認ください。
事業承継・引継ぎ補助金の申請期間
申請受付開始日 | 申請提出期限日 | 交付決定日 | |
2次公募 | 2022年7月27日 | 2022年9月2日 | 2022年10月6日 |
3次公募 | 2022年10月6日 | 2022年11月24日 | 2022年12月下旬(予定) |
4次公募の申請期限はいつ?
現在(10/31)4次公募に関する詳細な日付けは発表されていませんが、大まかな日程に関しては、公式に告げられています。
申請受付開始日 | 申請提出期限日 | 交付決定日 | |
4次公募
|
2022年12月下旬
|
2023年2月上旬
|
2023年3月中旬(予定)
|
3次公募に手続きが間に合いそうにない場合は、4次公募への申請を目標に日程を組むのも良いかもしれません。
申請受付期間など、最新の情報に関しては、事業承継・引継ぎ補助金の公式サイトにて随時更新されています。
事業承継・引継ぎ補助金申請の流れ
事業承継・引継ぎ補助金の申請は基本的に以下の流れで行われます。
- 補助対象事業の確認
- 認定経営革新等支援機関への相談
- 「gBizIDプライム」のアカウント設定
- 交付申請(jGrants)
- 交付決定通知
- 補助対象事業の実施・実績報告
- 確定検査・補助金交付
- 後年報告
1. 補助対象事業の確認
まず最初に補助対象事業の要件や内容を確認し、補助を受けることができるのか、どの補助事業を活用するかを確認しましょう。
事業承継・引継ぎ補助金の事業の詳細や公募要領に関しては、公式サイトにて公開されています。
2. 認定経営革新等支援機関への相談
専門家活用事業の申請では必要ありませんが、経営革新事業もしくは、廃業・再チャレンジ事業の活用を行う場合には、認定経営革新等支援機関に相談する必要があります。
当機関では、事業の申請にあたり、経営革新や再チャレンジにおける事業計画に妥当性があるかの確認を受けます。
3. 「gBizIDプライム」のアカウント設定
事業承継・引継ぎ補助金の大きな特徴の一つが経済産業省が運営する補助金の電子申請システムである「jGrants」を使って申請する必要がある点です。
この「jGrants」を利用するためには、「gBizIDプライム」のアカウントが必要になります。
「gBizIDプライム」のアカウントは、「gBizID」のホームページから作成することができます。
ただし、アカウント取得には1〜2週間程度要するため、補助金の利用を検討し始めた段階で、事前にアカウントを取得しておくことをお勧めします。
「jGrants」「gBizIDプライム」のどちらを利用するにしても、登録料や利用料などの費用は必要ありません。
4. 交付申請(jGrants)
原則、電子申請による交付申請しか受け付けていないため、事前に取得した「gBizIDプライム」のアカウントを用いて「jGrants」で申請を行います。
5. 交付決定通知
審査の結果は、申請の際に利用した「jGrants」上にて通知されます。
また、交付決定者が中小企業庁や事業承継・引継ぎ補助金のホームページにて公表されるため、そちらで確認することも可能です。
6. 補助対象事業の実施・実績報告
交付決定通知を受け、補助対象事業の実施に取り掛かります。
事業の実施が完了した後は、定められた手続き方法で実績報告を行います。
原則として、実施完了後30日以内に実績報告をしなければいけないため、期限には注意しましょう。
7. 確定検査・補助金交付
実績報告を行った後に、確定検査を受ける必要があります。
確定検査では、書面もしくは状況に応じて現地での調査が行われ、補助事業の成果や経費処理の状況が確認されます。
以上の一連の流れを受け、最後に事務局が交付金額(補助金額)を確定し、交付します。
8. 後年報告
事業によって、求められる報告内容や報告期間は異なりますが、補助対象事業が完了した後に一定の報告をする必要があります。
まとめ
事業承継・引継ぎ補助金の申請は明確な期限が設けられているため、入念な準備と的確な対応が必要となります。
事業承継M&Aパートナーズは、経営革新等支援機関に認定された機関によって運営されています。
また、年間1000件以上の相談実績、創業35年以上に渡り培ったノウハウを元に、お客様の事業承継をサポートいたします。
ぜひお気軽にお問い合わせください。
※本記事は、その内容の正確性・完全性を保証するものではありません。
詳しくは当センターへお問い合わせいただくか、関係各所にお問い合わせください。