事業やビジネスを長期にわたって存続させることは簡単なことではありません。
人材不足や景気の悪化など、様々な原因によって倒産や廃業へ追い込まれる可能性があります。

企業の存続が危ぶまれるような状況で、これまで築き上げてきた事業やビジネスを守るのが事業承継です。
一言に事業承継と言っても様々な手法がありますが、その中でも知的資産の承継について詳しく解説いたします。

知的資産は会社の強みや価値の源泉と言っても過言ではありません。
そんな知的資産の承継が失敗してしまうと、多額の損害賠償を請求されたり、競争力を失ったりと、事業承継後の運営に大きな影響を与えることにもなりかねません。

本記事で知的資産の承継におけるポイントを押さえ、事業承継を成功に導きましょう。

  1. 知的資産とは?
  2. 知的資産と知的財産の違い
  3. 知的資産経営報告書について
  4. 知的資産経営報告書の活用方法
  5. 知的財産の価値評価
  6. 知的資産を共同保有している際の注意点
  7. まとめ

知的資産とは?


知的資産の説明をするにあたり、まずは事業承継について大まかに説明します。

事業承継とは、会社の経営権やあらゆる経営資源を後継者に引き継ぐことです。

事業承継においては、そのあらゆる経営資源を知的資産、人(経営)、資産の3つに分けて考えます。

その中で今回着目するのが知的資産についてですが、知的資産は、

  • 経営理念
  • 経営者の信用
  • 取引先との人脈
  • 従業員の技術・ノウハウ

といった、目に見えにくい経営資源のことです。
無形であるため、後継者との対話を通じて具体的な言葉や数値で丁寧な承継を行わなければなりません。

また、中でも重要なのが従業員の技術やノウハウです。
もし従業員が事業承継に納得できなければ、企業の強みである技術を持った従業員が退職してしまい、知的資産を失うことになりかねません。
会社としても大きな損失になってしまうため、従業員との信頼構築に向けた取組みが重要になります。

知的資産と知的財産の違い

知的資産と知的財産の違いについて説明していきます。

知的財産とは、著作権や特許権などの知的財産権に、ブランドやノウハウなど権利化されていないものまでを加えた概念です。
一方で、知的資産とは、知的財産のほか、さらに組織力、経営理念、顧客とのネットワークなどまでを含めた、財務諸表には記載されない経営資源の総称を指します。

知的資産経営報告書について

知的資産を承継する際にポイントとなってくるのが、知的資産の可視化です。
自社がどのような知的資産を保有していて、権利者は誰なのかを把握しなければいけません。

そのために役立つのが「知的資産経営報告書」です。

そもそも知的資産経営とは、自社の知的資産をしっかりと把握し、資産を活用することで業績の向上に結び付ける経営のことを言います。

そして知的資産経営報告書では、企業の持つ技術等をどのように活用して企業の価値創造に繋げていくかなどの、自社の知的資産に関する経営上の取組みをまとめます。
その後その内容を社会に開示することで、自社の成長性や将来価値などを示します。

知的資産の承継に必要となってくるのは、今持っている知的資産の整理と今後資産をどのように活用していくかの把握です。
本記事では知的資産経営報告書の具体的な活用方法を解説いたします。

知的資産経営報告書の活用方法

知的資産経営報告書の活用の目的は、知的資産の持つ強みや知的資産の活かし方の把握です。
ここでは知的資産経営報告書の作成に必要な以下の2つのステップについて理解しましょう。

  • 知的資産の棚卸し
  • 知的資産と収益の繋がりのまとめ(ストーリー化)

知的資産の棚卸し


まず、自社の知的資産の強みを把握する知的資産の棚卸しという作業を行います。
大きく2つの工程に分けて説明します。

まず1つ目の工程として、過去から現在までの経営方針や戦略を確認し、それに基づく投資実績や業績を確認します。
業績数値だけでなく、その時の経営方針等に基づいた投資実績をまとめることで、事業展開の変遷を整理することができます。

過去の実績等を確認した上で、2つ目の工程として、自社の強み・弱みなどを明確にしていきます。
その手段の一つとしてSWOT分析が挙げられます。
自社の知的資産を強み、弱み、機会、脅威に分けて整理することで、どのような強みが知的資産として蓄積されているかを可視化します。

【SWOT分析のイメージ図】

好影響 悪影響
内部環境 強み
(Strength)
弱み
(Weakness)
外部環境 機会
(Opportunity)
脅威
(Threats)

SWOT分析では強みだけでなく弱み・機会・脅威も明確にできるので、知的資産をどのように運用していけばよいのかという方向性も見えてきます。

このような流れで知的資産の棚卸しをすることで、なぜその知的資産が強みになったのか、現在どういう立ち位置にその資産があるのかなどが明確になります。

知的資産と収益の繋がりのまとめ(ストーリー化)

知的資産の棚卸しの次に、自社の知的資産がどのように収益に繋がるかをまとめる「ストーリー化」を行います。
これにより必要な資産と不要な資産を明確にします。

過去から現在、現在から未来の2段階に分けてストーリー化を行っていきます。

過去から現在のストーリー化

どのような経営哲学や経営方針、戦略の下で事業を展開してきたかをまとめます。
その中で知的資産がどのように蓄積や活用をされてきたかをストーリーで示します。
過去から現在までの知的資産の活用方法や活用するに至った経緯などを整理することで、今後の経営のために承継すべき資産とそうでない資産をはっきりさせることができます。

現在から未来のストーリー化

過去から現在までのストーリーと事業承継後の会社の経営方針や戦略を考慮しながら、将来、収益を出すためのストーリーを策定します。
そのストーリーを実現するために強化すべき知的資産と、今後必要になる知的資産を明確にしていきます。

経済産業省が様々な企業の知的資産経営報告書を公開しているので、参考にしてみても良いでしょう。

以上のように、知的資産の棚卸しとストーリー化を用いることで、自社の知的資産の強みや運用方法が整理され、納得のいく知的資産の承継に繋げることができます。

知的財産の価値評価

知的資産を承継する際に把握しておくべきなのが資産の価値です。
そこで知的資産の経済的価値の評価方法として、定量的なものが以下の3つになります。

  • コストアプローチ(原価法)
  • マーケットアプローチ(取引事例比較法)
  • インカムアプローチ(収益還元法)

中でも主流なのがインカムアプローチ(収益還元法)です。
知的資産が将来的に事業活動に用いられることで生み出される収益(主にキャッシュフロー)をベースに評価します。

上記の3手法の中でも特に国際標準的な方法として用いられています。
資産評価法のグローバルスタンダードを形成しているような立ち位置にある方法ですので、資産を承継される側も評価に対して抵抗感を持ちづらいでしょう。

一方、将来の収益予測は必ず当たるものではありません。
また、将来の予測には評価者の主観的な判断が入らざるを得ないので、客観性の担保が容易ではないというデメリットが生じます。

知的資産を共同保有している際の注意点

知的資産を承継する側の企業が他社と資産を共同保有しているケースが考えられます。
この場合、承継をする際に、知的資産を共同保有している企業の承諾も必要になってくる可能性があります。

ただし、他企業の承諾が必要になってくるのは、当該資産の独占利用をしたい場合のみです。
買い手企業が他企業との共同利用をするのであれば、他企業の承諾は必要ありません。
また、承継後にその資産を使わないのであれば、買い手側は事業譲渡によって特定の資産だけ受け取らないという選択肢を取ることも可能です。

知的資産の所有者が複数になってくると、トラブルに発展する可能性が高くなるので、承継は慎重に行いましょう。

まとめ

今回は知的資産の承継について解説いたしました。
知的資産は目に見えず、取扱いが難しい資産ではありますが、会社の成長や収益の確保に必要不可欠な存在です。
承継に失敗すれば、大きな損失になりかねません。
本記事を参考に、知的資産の事業承継を慎重に行い、計画的に成功させましょう。

もし知的資産の承継に少しでもお困りであれば、名古屋事業承継センターに気軽にご相談ください。