経営者が次の世代に会社を引き継ぐ年齢は年々高まっていますが、最大の原因の1つは後継者不足です。
以前とは違い、現代では経営者の子どもが会社を引き継ぐ件数は徐々に減少してきています。

その風潮を受け、徐々に普及してきているのが「脱ファミリー化」というワードです。
名前からイメージできる通り、親族ではない後継者が会社を継ぐことで、それまでの家族経営を脱却することを指しますが、いくつかのメリットとデメリットがあります。

脱ファミリー化が増加する理由も含めて解説していくので、ぜひご覧ください。

  1. 後継者不在の状況
  2. 脱ファミリー化が進む理由
  3. 脱ファミリー化のメリット・デメリット
  4. 社外の人物への承継のメリット
  5. まとめ

後継者不在の状況

2022年11月、帝国データバンクが全国のあらゆる業種の企業(27万社)を対象に行った調査で、2022年の後継者不在率が57.2%であるというデータを発表しました。
新型コロナウイルスの影響も決して小さくありませんが、後継者不在率は5年連続で低下しており、60%を下回ったのは2011年以降初めてです。

そして、それ以上に注目すべきは、非同族への事業承継の割合が初めて最大になったということです。
もともと親族内承継の割合は減少してきていましたが、脱ファミリー化が促進されていることを裏付けるデータと言って過言ではありません。

参照:全国企業「後継者不在率」動向調査(2022)

脱ファミリー化が進む理由

  • 親族内承継を希望する経営者の減少
  • 後継者としての能力不足

脱ファミリー化が進む理由は、以上の2つだと考えられます。

親族内承継を希望する経営者の減少

働き方は年々多様化が進み、誰もが多くの選択肢を持っています。
以前は子どもが親の会社を継ぐことは当たり前という風潮がありましたが、現代ではその限りではありません。

  • 他にやりたい仕事がある
  • 経営者になることに魅力を感じない

など、人によって理由は様々ですが、親の会社を継ぐこと以外の道を進む若者の増加に伴い、親族内承継の件数が減少しています。

後継者としての能力不足

本人の意思とは別に、子どもに会社を経営する資質がなく、後継者として能力不足であることも考えられます。
当初は親族内承継を行う予定であったものの、そういった理由で断念するというケースも少なくはありません。

近年の市場の成熟、競争の激化に伴い、経営者に求められる資質のハードルは上がっているという見解もあります。
後継者候補を親族外にも拡大することで、より優秀な人材が見つかる可能性がある点も、脱ファミリー化が促進されている理由の1つだと言えるでしょう。

脱ファミリー化のメリット・デメリット

脱ファミリー化した事業承継のメリットとデメリットをそれぞれ説明します。

脱ファミリー化のメリット

  • 後継者の選択肢が増える
  • 経営の一貫性を保てる
  • 経営能力のある人物を選定できる

後継者の選択肢が増える

既に述べた通り、親族外の事業承継であれば、後継者候補の選択肢が広がります。
より高い資質を持った後継者が見つかる可能性が高いだけでなく、既に経営者として十分な能力を有する人材を招聘することで、育成にかかる時間を最低限に抑え、スピーディーな事業承継が実現します。

経営の一貫性を保てる

脱ファミリー化といっても、社内の人材を後継者として選出するという手法もあります。
例え親族ではないとしても、既に会社に精通していることで、事業承継を完了させた後も、社風や経営の一貫性を保ち、会社を存続させることができます。

経営能力のある人物を選定できる

親族内承継のデメリットの1つが、経営者としての資質が不十分な人材が会社を継いだ場合、経営状況が悪化するリスクがあるということです。
それがきっかけとなり、会社が倒産に追い込まれてしまうケースも決して珍しくないのが現状です。

一方、親族外承継では社内外問わず、経営者として妥当な能力を有することを前提として後継者を選出します。
一概に断言することはできませんが、後継者の能力不足が原因で経営状況が悪化してしまうリスクは少ないと言えるでしょう。

脱ファミリー化のデメリット

  • ステークホルダーの理解を得られない可能性がある
  • 従業員の離職につながる
  • 個人保証の引継ぎが難しい

ステークホルダーの理解が得られない可能性がある

家族経営の会社によくあるのが、ステークホルダーとの関係性が経営者に依存しているというケースです。

  • 社歴が長い
  • 地域性が強い
  • 一部の取引先に依存している

このような特徴に当てはまる会社は特にその傾向が強く、親族ではない人材が後継者となることに対し、ステークホルダーの理解を得ることが困難な場合があります。

従業員の離職につながる

例えばM&Aのように、これまで何の関係もなかった人物が会社を引き継ぐ場合、良くも悪くも労働環境に大きな変化をもたらす可能性があります。
それにより危惧されるのは、それまで会社に貢献してくれていた従業員が事業承継前後でギャップを感じ、会社を離れていってしまうことです。

特に先代経営者を強く信頼している従業員ほどそのリスクが高く、親族外承継を行う場合には最も慎重に対策しなければいけない点の1つだと言えます。

個人保証の引継ぎが難しい

金融機関からの融資など、何らかの債務に対して経営者が個人保証を立てているケースは珍しくありません。
特に中小企業ではその割合が高いですが、事業承継の際はその個人保証も引き継ぐ必要があります。

しかし、個人保証を引き継ぐことは後継者にかかる負担が大きく、それを理由に後継者となることを拒否されることもあります。
個人の資本力によっては金融機関に引継ぎが認可されないことも考えられ、親族外承継における大きなハードルになっています。

社外の人物への承継のメリット

親族外承継には社内の従業員が後継者となるケースと、社外の人物が後継者となるケースの2通りがあります。
一見社内の後継者の方が会社への理解が深く、スムーズに事業承継できるイメージがありますが、社外の人物への事業承継も以下のようなメリットがあることを理解しておきましょう。

  • 事業拡大の可能性がある
  • 後継者に資金力がある

事業拡大の可能性がある

社外の人物が後継者になることで、それまで会社になかった文化や技術がもたらされる可能性が高いです。
従業員の間に戸惑いが発生するリスクはあるものの、

  • 新規事業のきっかけになる
  • 既存事業がさらに成長する
  • 課題の解決に繋がる

このようなシナジー効果が発揮されることもあります。

後継者に資金力がある

事業承継において度々障害になるのが株式買取資金の確保です。
経営権を引き継ぐには、先代の株式を買い取る必要がありますが、中小企業でも膨大な費用がかかり、一従業員が個人で費用を用意するのは非常に困難です。

しかし、十分な資本がある第三者機関であれば、その点も問題ありません。
先代の経営者にとっても、素早くキャッシュが手に入るというメリットがあります。

まとめ

高齢化社会を迎えている日本において、経営者は早いうちから後継者問題と向き合わざるを得ません。
事業承継の形は様々ですが、中でも脱ファミリー化の波はだんだん広がってきており、後継者不足に陥った際には有力な選択肢の1つとして検討すべきと言えるでしょう。

ただ、これまで家族経営だった会社が脱ファミリー化をするには様々な問題が発生するリスクがあり、現経営者も後継者も、大きなストレスを感じることになります。

脱ファミリー化に限らず、事業承継に関する悩みや疑問をお持ちの方がいれば、ぜひ名古屋事業承継センターにお問い合わせください。
実績豊富なコンサルタントが経営者様に寄り添ってサポートいたします。

※本記事は、その内容の正確性・完全性を保証するものではありません。
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