事業承継で家業や会社を継ぐこととなった後継者。
経営の舵を取る責任の重さは計り知れないものがあり、多くの後継者は不安を抱えているでしょう。
そんな孤独を抱えた後継者同士が集い、様々な形で切磋琢磨しあう「後継者コミュニティ」というものがあります。
本記事では、後継者コミュニティの役割や目的から、どのような後継者コミュニティがあるのかまで、後継者コミュニティについて詳しく解説いたします。
後継者コミュニティとは?
後継者コミュニティとは、事業を承継することとなった後継者同士が集い、経営者になることへの不安や悩み、課題を分かち合い、経営者として成長していくためのコミュニティのことです。
後継者コミュニティは、多くの企業を悩ます後継者不在問題の解決に寄与する可能性が高く、近年注目を集めています。
後継者不在問題は、単に人材不足だけが原因ではありません。
自分が経営者になることに不安を抱え、その重荷を背負うことを拒む人が増えてきたことも一因であるといえます。
経営者になると孤独な悩みを抱えることになり、半端な覚悟ではその役割を全うすることはできません。
事業を承継することになった後継者ならば、多くの人が同じ悩みを抱えることになるでしょう。
そこで、同じ悩みや不安を抱えた後継者同士が集い、互いに切磋琢磨しあいながら経営者として成長できる環境を整備し、後継者を確保することを目的としてコミュニティが発足しました。
後継者コミュニティが生み出す価値
後継者コミュニティがあることによって、次の価値が生まれます。
- 気軽に相談できない悩みの解消
- 経営者としての成長
- 相互送客
気軽に相談できない悩みの解消
冒頭でも述べた通り、後継者になると周りの人に相談できない悩みを抱えることがあります。
起業して経営者になる人とは環境が違い、後継者ならではの悩みもあるでしょう。
しかし、同じ後継者という立場の人なら、その悩みを分かち合うことができます。
似た境遇を持つ者同士だからこそ分かち合える悩みや、他の経営者がどのようにその悩みを乗り越えたかなど、1人では解決できないこともコミュニティに参加することで解決できるかもしれません。
誰にも相談できない悩みを打ち明けることができるのは、後継者コミュニティならではの強みなので、コミュニティに参加した際は遠慮なく相談してみると良いでしょう。
経営者としての成長
後継者コミュニティの取組みの中で、経営者として成長するためのセミナーや交流会が開かれます。
それらに積極的に参加することで、経営者として成長することができるでしょう。
変化の激しい時代だからこそ、事業承継後の経営方法も様々です。
これまでの伝統を手堅く守っていく後継者もいれば、思い切って自身のやり方で事業の方針を一新する後継者もいます。
経営者としての知見を広げることで、今後の経営方針に活かすことができるかもしれません。
相互送客
後継者コミュニティに参加することで、経営者同士の繋がりを持てるようになり、経営者同士で互いに顧客を紹介しあう相互送客が可能になるかもしれません。
親和性の高い事業であれば協業して新たなサービスを生み出すことに繋がり、顧客へより高い価値を提供できるようになるでしょう。
自身の顧客が引き抜かれるかもしれないと考えるよりも、顧客のことを第一に考えてより良いサービスを提供できないかを模索することで、新たな可能性を広げることに繋がります。
そのように活動していれば、他の企業から顧客を紹介してもらえるようになるかもしれません。
持ちつ持たれつの関係を築くことを心がけましょう。
代表的な後継者コミュニティ
実際にどのような後継者コミュニティがあるのでしょうか。
日本にある代表的な後継者コミュニティをご紹介します。
- アトツギファースト
- 家業エイド
- 家業イノベーション・ラボ
アトツギファースト
アトツギファーストは、「一般社団法人ベンチャー型事業承継」が運営する、家業を継ぐ予定がある後継者が参加できる後継者コミュニティです。
「未来志向の経営者になるための学びのプラットフォーム」をコンセプトにしており、幅広い視野を持って野心的に挑戦できる後継者を育成することを目的としています。
コミュニティ内では、興味関心や同じ地方・業界で繋がれるグループ機能などがあり、共通点を持った者同士で繋がることが容易です。
メンター制度もあり、家業を発展させた先輩経営者と繋がることが可能です。
トークイベントや1on1を通して自身のロールモデルとなる経営者と出会うことができるかもしれません。
入会条件は、39歳以下で家業の承継予定者・承継者のみとなっており、士業やコンサルタントの方は入会することができません。
コミュニティ内での営業活動や宗教普及活動は禁止となっているため、営業目的での参加は禁止となっております。
家業エイド
家業エイドは、家業を持つ仲間同士で雑談や情報交換がカジュアルに行えるソーシャルプラットフォームです。
家業を継ぐ・継がないの2択ではない、自分らしい家業との関わり方のヒントを見つけることができるコミュニティとして、約9,000名が登録しています。
家業エイドは、Twitter感覚で投稿できるトーク機能、専門家からのアドバイスを受けることができるサポート機能、家業のPRや告知ができる掲示板機能の3つの機能を持ちます。
家業を持つ方のリアルな意見や考え方を共有したり、家業エイドのメンバー同士で新規事業にチャレンジしたりとカジュアルながらも活発なコミュニティの活用も期待できます。
無料で登録できるため参加へのハードルも低く、参加者の70%以上が20代・30代の若い後継者で構成されています。
まだ家業を継ぐことを決めていない人でも参加できるため、自分と似た状況の人と繋がりたいと感じたら、気軽に参加を検討してみても良いかもしれません。
家業イノベーション・ラボ
家業イノベーション・ラボは『「めぐり会い」で家業を再発明する』をコンセプトに掲げ、家業を成長させるためにイノベーションを起こそうとする次世代の挑戦者を応援するコミュニティです。
家業の伝統を受け継ぎつつ、時代に合わせた新たなイノベーションを起こそうと挑戦する後継者を後押しする活動をしており、100年後に語り継がれる出会いを生み出すことを目標としています。
コミュニティはFacebookのグループ機能を利用して形成されており、年齢に関係なく家業を持っている人であれば参加することができます。
コミュニティ内では、全国の家業後継者が繋がり、悩みの相談や事業のアドバイス、相互メンタリングが行われています。
悩み相談会や飲み会などのカジュアルなイベントも開催されており、気軽にイベントへ参加することが可能です。
コミュニティに参加するかどうか迷っている方向けに事前説明会を実施しているため、どのような活動をしているのかなどを聞いたうえで参加できるのも嬉しいポイント。
Facebookを利用しており、家業に新たなイノベーションを起こしたいというモチベーションのある方は、ぜひ参加を検討してみてはいかがでしょうか。
後継者の活躍を後押しする「アトツギ甲子園」
後継者コミュニティとは少し違ったものになりますが、後継者のイベントとして「アトツギ甲子園」というものがあります。
アトツギ甲子園とは、全国の中小企業・小規模事業者の後継者が、新規事業アイデアを競うイベントです。
多彩なアイデアで新規事業を考案してその新規事業で描く未来を熱く語り、競うバトルイベントとなっております。
アトツギ甲子園は、これまで3回開催され、最優秀賞者への特典として「中小企業庁長官賞」の贈呈や複数メディアへの掲載の可能性があります。
東日本ブロック、中日本ブロック、西日本ブロックで予選が開催され、15名のファイナリストが決勝大会へ駒を進めることができます。
アトツギ甲子園への挑戦資格は、39歳以下の中小企業後継者であることです。
条件を満たしている後継者の方で、革新的なイノベーションや事業承継に熱い想いがある方はぜひ参加を検討してみてはいかがでしょうか。
後継者コミュニティを有効活用するコツ
後継者コミュニティに参加するうえで、最大限有効活用するために心がけるべきコツを紹介します。
- 視野を広げ異業種の後継者とも交流を持つ
- インプットよりもアウトプットを重視する
- 切磋琢磨と相互扶助の精神を持つ
視野を広げ異業種の後継者とも交流を持つ
自社の事業に関係のある後継者と関わりを持つことはもちろんですが、異業種の後継者とも良い関係を築くことも大切です。
これまで見えていなかった課題に気付くことができたり、異業種での取組みが自社ビジネスの課題解決に繋がったりするケースも珍しくありません。
新たなイノベーションは模倣から生まれることも多く、新たな要素として異業種のアイデアを取り入れるという方法があります。
自身の事業と関係が無さそうだからといって壁を作るのではなく、広い視野を持って様々な後継者と良好な関係を築きましょう。
インプットよりもアウトプットを重視する
知識やアイデアをインプットすることを重視するあまり、そのインプットした知識を活かすことができない方も多くいます。
しかし、ビジネスの場においてアウトプットが無ければ実績をあげることは難しいでしょう。
どのようにアウトプットすれば良いかわからないという方は、まずは簡単に取り組める「話す」「書く」「発信する」を意識してみることをおすすめします。
学びをコミュニティ内で発信する、ノートに書き出す、コミュニティの仲間同士で意見交換するなど、できるところから始めましょう。
切磋琢磨と相互扶助の精神を持つ
コミュニティに所属していると、自身よりも優れた能力を持つ後継者と出会うこともあります。
そういった方を見て「自分には才能がない」と卑屈になるのではなく、刺激を受け切磋琢磨することが大切です。
上昇志向や成長意欲が無ければ、恵まれた環境にいても自身を成長させることはできません。
自分よりも優れた仲間がいるという恵まれた環境を最大限活かすためにも、積極的に他の後継者と関わるようにしましょう。
また、コミュニティ内で他の後継者と良い関係を築くためには、自身の利益だけを優先させていてはいけません。
互いに助け合う相互扶助の精神を持ち、お互い持ちつ持たれつの関係を築くことを意識してください。
相手に与えることを厭わず行動していれば、それを見た周りの人が積極的に協力してくれるようになるでしょう。
後継者コミュニティに参加して次世代の経営者と繋がろう
後継者コミュニティについて詳しく解説しました。
コミュニティに参加することで、後継者として同じ悩みを抱える者同士で繋がり、自身の進むべき道が見えてきます。
未来の経営者として成長できる環境が手に入るかもしれません。
事業承継の形も日々多様化しています。
後継者になることを決めていなくても参加できるコミュニティもあるため、似た境遇の方がどのような選択をしたのかを参考にする意味でも、後継者コミュニティの活用を検討してみましょう。
事業承継M&Aパートナーズでは、事業承継に関する様々なご相談を承っております。
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※本記事は、その内容の正確性・完全性を保証するものではありません。
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