商品やサービスを提供するうえで、一部の事業を外部に委託する企業も多くあるでしょう。
しかし、外部の会社間の取引きには手間も時間もかかります。

垂直統合という手段をご存知でしょうか。

垂直統合を行えば、外注先と取引きをする際の問題発生のリスクや事業の進行が滞るリスクを減らすことができます。
本記事では、垂直統合の魅力を伝えると同時に、デメリットや成功のポイントもご紹介します。


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  1. 垂直統合とは
  2. 垂直統合のメリット
  3. 垂直統合のデメリット
  4. 垂直統合と水平統合の比較
  5. 垂直統合を成功させるためには
  6. 垂直統合でお困りの際は当センターにご相談ください

垂直統合とは

垂直統合とは、製品やサービスを作るときに外注していた工程を自社でできるようにするために、M&A(買収)やアライアンス(提携)によって会社を統合することを指します。

垂直統合の例として、アパレル製造の会社において外部に任せていた製品の販売や原材料の調達といった工程を、全て自社内で完結できるようにすることが挙げられます。

垂直統合には川上統合(前方統合)と川下統合(後方統合)の2種類が存在します。
原材料の生産から製品の販売までの流れにおいて、原材料の生産に近い工程を担う会社の統合を川上統合、販売に近い工程を担う会社の統合を川下統合と呼びます。

垂直統合のメリット

垂直統合によってワンストップで供給ができるようになると、多くのメリットを享受できます。

  • 取引きにかかるコストを削減できる
  • 安定的で効率的な供給を実現できる
  • 差別化を図ることができる
  • 取引先の要求から解放される

取引きにかかるコストを削減できる

供給に必要なコストの大幅な削減は、垂直統合の大きなメリットです。

垂直統合により販売までの各工程を自社内で完結できるため、今までかかっていた外注費と社内コストの差額分が削減できます。

垂直統合によって自社に取り込む会社が多ければ多いほど、削減できるコストは増加します。

大幅なコストカットは利益率の改善に繋がるでしょう。

安定的で効率的な供給を実現できる

外部との取引きが減る分、自社の生産活動を計画的に進めやすくなります。

工程を外注している以上、外注先の経営状況の影響を受けるリスクを伴います。
取引先が休廃業や倒産といった状況になった場合、自社の生産がストップしてしまう可能性を否定できません。

自社内で工程を完結することによって他社の影響を受ける可能性が低くなるため、安定的な供給に繋がりやすいといえます。

さらに、自社内で一本化できることで生産プロセス全体がコントロールしやすくなるため、リードタイムの短縮や在庫管理の最適化を図ることができます

生産活動が安定的になるだけでなく、効率を向上させられるのもメリットの1つといえるでしょう。

差別化を図ることができる

垂直統合は、他社との差別化にも繋がります。

複数の企業が1つになることで、技術やノウハウ、顧客情報の共有ができるようになります。
自社内で情報共有が増えれば新しい発見が生まれる可能性が高まり、商品開発力や収益性の向上といったシナジー効果を得られるでしょう。

仮に複数の事業を持つ企業を統合した場合、今まで手を出してこなかった領域の事業に挑戦できる可能性も出てきます。

例えば、IT機器製造メーカーが半導体製造会社を統合したとします。その会社が自動車メーカーとも取引きしていた場合、コネクテッドカーの開発に自社のIT機器を導入できる可能性があり、新しい領域で事業を展開できるかもしれません。

シナジー効果による既存事業の強化だけでなく、新しい領域に踏み出すことによって競合と差別化を図ることができる点も、垂直統合の大きなメリットでしょう。

取引先の要求から解放される

外部企業に供給の一工程を担ってもらっている場合、価格や取引きの数量について無理な要求をされる可能性があります。

取引先に依存していればしているほど、その理不尽な要求を呑まざるを得ず、無駄なコストや工数をかけなければならない状況も考えられるでしょう。

そこで垂直統合をすることにより、その取引先の競合にあたる企業を自社に取り込むことにより、取引先との関係をシャットアウトします。
すると取引先からの圧力や一方的な要求を受けずとも、生産活動を行うことができます

垂直統合によって、生産計画に影響を与える企業と関わることによるコストや時間のロスの削減が可能です。

垂直統合のデメリット

多くのメリットがある垂直統合ですが、デメリットやリスクも併せ持っています。

  • 多額の費用がかかる
  • 専門性が希薄になる恐れがある
  • 買収した企業の取引先が離れる可能性がある
  • 原則自社内での取引きとなる

多額の費用がかかる

垂直統合の一番大きなデメリットは多額の費用がかかることです。

垂直統合では以下のような費用がかかります。

  • 買収・統合費用
  • 専門家の仲介手数料
  • デューデリジェンスの実施費用
  • 企業価値の算定費用

会社を買収・統合すること自体に上記の費用が発生します。

本事業とは異なる事業に進出していく場合は、上記の費用に加えて新設備の導入や新規顧客の開拓といった先行投資としての費用を負担する必要があります。

新規事業を始めても、必ず成功するとは限りません。
事業が軌道に乗らなかった場合には撤退の費用もかかってきます。

垂直統合において、多額の費用の発生は避けて通れないでしょう。

専門性が希薄になる恐れがある

供給のほぼ全ての工程を自社で行うとなると、経営資源が分散してしまいます。
すると、本事業へリソースを十分に割けなくなり、本事業における専門性が希薄になってしまう可能性があります

取り扱う事業が増えれば、今まで本事業に注ぎ込んでいた資源を他の事業に回さなければなりません。
そのため、本事業において強みとしていた技術力やノウハウといった専門性が発揮しづらくなってしまいます。

垂直統合によって専門性が低下すると長期的には競争力の弱まりにも繋がり、自社ならではの強みを失ってしまうリスクがあるということを覚えておきましょう。

統合した企業の取引先が離れる可能性がある

統合した企業の取引先が自社の競合だった場合、垂直統合を機にその取引先が離れていってしまう可能性があります。

取引先を失うことで、その分の売上は無くなってしまいます。
売上の減少分を予測したうえで、垂直統合に踏み切りましょう。

原則自社内での取引きとなる

一度統合をしてしまうと、原則自社内での取引きになります。
そのため、統合後に統合した企業よりも良い条件の企業を見つけたとしても、すぐにそちらに取引先を切り替えることはできません

統合後すぐに統合を解除した場合、周りの印象も良くはないでしょう。

垂直統合の際は、本当にその企業が統合するにあたってベストな企業なのか、慎重に選ぶことが大切です。

垂直統合と水平統合の比較

垂直統合とよく比較されるのが水平統合です。

水平統合も垂直統合と同じくM&Aの一種ですが、目的と統合の対象となる企業が大きく異なります。
以下の表をご覧ください。

目的 対象企業
垂直統合 サプライチェーンの
内製化と効率化
供給の上流工程や
下流工程を担う企業
水平統合 市場シェアの拡大や
スケールメリットによる
競争力強化
同一業種・業態の企業

垂直統合を成功させるためには

垂直統合を成功させるために押さえておくべきポイントがあります。
統合する前も後もそれぞれ気を付けるべき点があるため、しっかり把握しておきましょう。

  • コストを慎重に見極める
  • 自社の強みを明確にする
  • 企業間で密にコミュニケーションをとる

コストを慎重に見極める

当たり前かもしれませんが、統合後に自社内の取引きでかかるコストと、現在外注費としてかかっているコストをしっかり比較しましょう

また、統合後は自社の経営資源に制約がかかり、本事業の拡大が難しくなる可能性があります。
その場合、外注していた方が少ないコストで事業を継続できるかもしれません。

垂直統合後のコストに関する予測は慎重に行いましょう。

自社の強みを明確にする

垂直統合後に事業領域を広げていくと、経営資源が分散し、自社の強みが何なのかを見失ってしまう可能性があります。

どの事業にどれだけの経営資源を割くべきかのバランスを考えながら経営を行っていかないと、全ての事業が中途半端になってしまいます。

競争力やブランド力の低下を招きかねません。
自社の強みはどこなのかを常に明確にしておくことで、経営資源の配分バランスをコントロールしながら経営していきましょう。

企業間で密にコミュニケーションをとる

垂直統合後は、異なった特徴を持つ事業を同時に運営していかなければなりません。
異なる事業を同じ経営方針で運営していくのは難しいでしょう。
それぞれの事業の強みや特徴を活かした経営方針や施策を行う必要があります。

そのためには、事業間で密にコミュニケーションをとり、方針や施策の擦り合わせをしていかなければならないでしょう。

コミュニケーションを怠るとどんどん事業間で認識や方針の違いが生まれ、運営にも支障が出かねません。
こまめに情報共有やコミュニケーションをとることで、事業間の認識の乖離を防ぎましょう。

垂直統合でお困りの際は当センターにご相談ください

垂直統合では大きなお金が動きます。
自社だけで完結させるのは不安だという経営者が多いでしょう。

事業承継M&Aパートナーズでは垂直統合を含むM&Aや組織再編のサポートを行っております。
初回相談は無料ですので、ぜひ一度気軽にご連絡ください。

※本記事は、その内容の正確性・完全性を保証するものではありません。
詳しくは当センターへお問い合わせいただくか、関係各所にお問い合わせください。