サクセッションプラン(後継者育成計画)について解説します

経営者の高齢化と後継者不足が進む中、有効な手段として「後継者育成計画(サクセッションプラン)」が注目を集めています。

これは、経営者(社長)や幹部クラス(役員)など、会社の重要な役職を継承する後継者を確保し、次世代のリーダーとして配置・育成することを指す言葉。
後継者不足を回避し、より優秀な人材へと円滑に事業承継を行うために後継者育成計画を導入する企業が増えています。

今回のコラムでは、サクセッションプランに関する知識を詳しく解説します。

サクセッションプラン(後継者育成計画)の意味は?もっと詳しく

サクセッションプランの具体的な内容としては、

  • 会社に必要な人材要件の再定義
  • 客観的な人材の査定
  • 自社の組織力分析
  • 次世代人材の確保・育成および活性化
  • 人材を定着させる戦略

などがあります。

会社運営には様々な能力が求められますし、経営者の能力は企業業績に大きな影響を及ぼします。
早めに後継者を選ぶことで、経営に必要な知識を身に着けたり、経営のノウハウを計画的に学べたりとスムーズな事業承継の準備が行えます。

後任の育成は経営陣の仕事に

後継者候補
経営学の第一人者ピーター・ドラッカーは、「企業にとってリーダーの育成ほど大事なことはない」という旨の言葉を残しています。

よきリーダーを育成できない・リーダーがいない会社に明るい未来は見出せません。
ですが、後継者問題が企業存続の重要課題であると認識され始めたのは、2000年代に入ってからのこと。
進学や家業に対する若者の意識変化に伴い、特に中小企業において後継者不足による廃業を選択するケースが増えてきた時期です。

トップマネジメントである企業の最高首脳部が、直接後継者を計画的に育成・配置することが、ひいては会社の事業存続につながると認知されてきたのです。

サクセッションプランにはどのような目的があるのか

「事業承継を見据えた行動」は目的のひとつ。
他にも様々な理由で後継者育成計画が実行されています。
主なものとしては以下の3つです。

  • 企業の存続リスクを軽減する
  • 企業の独自性を保つ
  • 持続的成長を図り、ステークホルダーと従業員満足度を上げる

企業の存続リスクを軽減する

後継者不足に陥ることなくスムーズに事業承継を行うことができます。
また、後継者の知識・能力不足によるステークホルダーの信頼度や業績の低下を防ぎます。
自社に優秀な人材を定着させ、企業の成長を図ることにもつながります。

難易度が高い親族外承継

何らかの理由で親族に会社を継いでもらうことが難しく、社員や社外人材の中から後継者を探したいというケースも増えています。
しかし、親族外承継は親族内承継に比べて困難。
これは親族外の社員が事業における価値観やノウハウなどを学ぶ機会が、親族と比べると圧倒的に少ないためです。

後継者育成計画は、親族外承継の困難さをカバーする方法としても有効です。

企業の独自性を保つ

後継者育成計画によって未来の経営者を育て、後継者不在を原因とするM&Aを回避することで、自社のカラーや独自性を損なうことなく長期にわたって保つことができます。

持続的成長を図り、ステークホルダーと従業員満足度を上げる

企業が持続的に成長していくことで、企業価値が向上します。
企業価値が上がればステークホルダーの満足度もそれに伴って上がることでしょう。
また、優れた能力を持つ社員に昇格のチャンスを提供することが、長期勤続へのモチベーションにもなります。

これまでの人材育成や後任登用との違いは?

大きな違いは「事業計画に基づいてあらかじめ候補者を選定し、経営者や幹部が時間をかけて育成する」というところです。

人材育成との違い

「人材育成」とは、組織が掲げるビジョンに向かって社員の成長を促す施策のことです。
例えば、人事部が行う新入社員研修やフォローアップ研修などが該当します。
一方後継者育成計画では、経営層が後継者候補の育成を主導します。
経営方針や経営戦略を踏まえた長期的観点からの教育を現在の経営陣が行うことで、専門分野を深めるというより、すべての分野に対応できる人材を育てます。

後任登用との違い

「後任登用」は、直属の部下や活躍している現職者らを対象としたり、後任を据えたいポジションに近い年代の社員を選びだしたりすることでした。
「後継者育成計画」は、後継者候補をキャリアで判断せず、経営理念や経営戦略に基づいて後継者を選び育成します。

サクセッションプランのメリットは?

サクセッションプラン
サクセッションプランを長期的に運用していくことには、副次的なメリットもいくつかあります。

  • 経営者だけに頼らない会社経営の基礎を築ける
  • 人材登用基準が分かりやすくなる
  • 経営幹部のポストに空白期間が発生しない
  • 人材育成のコストを削減できる
  • 採用コストを削減できる
  • 優秀な人材を確保できる

経営者だけに頼らない会社経営の基礎を築ける

経営者だけでなく幹部候補も複数選抜し、後継者育成計画において「経営陣」として育成することができます。
一人のカリスマ社長が円滑に経営を運用していたが、退任後はそのノウハウが新たな経営陣に浸透しておらず一気に瓦解してしまった、ということを防げます。

人材登用基準が分かりやすくなる

後継者育成計画の作成にあたって必要なのが、経営者や幹部候補となる社員を選ぶ際にどういった能力を重要視するか定めること。
会社の舵取りに必要な知識や能力を明確にすることで、役職への昇進基準が分かりやすくなり、より有効な人材査定につながります。
この査定基準は幹部候補だけでなく、一般社員向けの評価システムに適用させることも可能です。
社員らにとっても評価の基準が明確になり、モチベーションの向上につながることも想定されます。

経営幹部のポストに空白期間が発生しない

あらかじめ幹部候補を選抜しておけば、経営幹部ポストに空白期間が生まれることはありません。
ですので、突然経営者や幹部が交代しても現場の混乱を軽減でき、企業運営の安定性を維持できます。

人材育成のコストを削減できる

後継者育成計画は社員の中から経営者・幹部候補を選抜するものです。
ですので、企業理念や経営戦略を学んでもらい、浸透させるのに時間的・経済的コストをかける必要がありません。
社員からの登用であれば、マッチング不和による人材の早期退職もないでしょう。
「選抜された候補者をどう育成するか」に特化したプログラムを柔軟に作成できるので、趣旨に見合わない研修に多大なコストを支払う事態にもなりません。

採用コストを削減できる

M&Aのマッチングサイトを活用したり外部から幹部候補を募ったりする場合、専門コンサルティング会社や人材紹介会社に紹介をお願いすることになります。
プロの支援は受けられますが、専門家が介入する分高額な手数料がかかります。
社員を経営者・幹部に登用するために後継者育成計画を策定することは、採用コストの削減にもつながっているのです。

優秀な人材を確保できる

幹部社員・経営者に昇進するための条件やプロセスをはっきりさせることで、優秀な社員の定着や人材確保の促進が可能です。
明確かつ妥当な人事評価制度がない場合、社員の能力を正当に評価できず、本当に能力が高い社員の転職や独立を招いてしまいます。
実際に経営に携わるメンバーが経営センスのある人材を社員の中から探し出せば、社員のモチベーションと満足度の向上も図れるでしょう。

課題点は長期的視点が必要なこと

後継者育成計画においてデメリットとされることがあれば、「時間と手間がかかる」という点でしょう。

  • 運用に数年~数十年はかかることが見込まれる
  • 気を配るべき点が多く根気が求められる

候補者に経営知識を身に着けてもらうだけが、後継者育成計画ではありません。
様々な育成プランを通して実践的な経験やトップのメンタリティを定着させることも求められているのです。
当然ながら一朝一夕で進められるものではありませんから、計画のスタートから実際の事業承継までには多大な時間がかかるのは大前提です。
また、該当者の定期的な見直しや、選ばれなかった社員のモチベーションの維持なども念入りに取り組みたいポイント。
これらを怠った場合、社員の不満や離職につながることもあるでしょう。

サクセッションプランの作り方

円滑な後継者育成計画に求められるのは、事前の準備です。
まずは準備の一環として、後継者育成計画の流れを簡単に把握するところからスタートしましょう。

  1. 「会社のこと」を明確にする
  2. 経営者・幹部候補を据えるポストを明確にする
  3. 必要な人材の要件を明確にする
  4. 要件とマッチする従業員を選ぶ
  5. 該当人材に機会を提供する
  6. 定期的に見直しを図る

各項目について、ここからは個別にご説明します。

1.「会社のこと」を明確にする

将来の幹部候補には、自社の企業理念と経営への理解が求められます。
自社の製品やサービスの特徴は何かを詳細に把握し、それを用いて会社はどこに向かい、何のために存在していくのかという企業理念を知らなければ、会社の舵を取ることはできません。
さらに、経営における自社の強みや企業風土、今後向かうべき方向、取るべき戦略も抑えておけば、将来的な事業承継に向けて盤石の備えを取ることも可能でしょう。
こういった項目を明文化しておくことで、将来経営を担うために必要な知識、能力、冷静さや価値観といった精神性などを抽出でき、「求める人材の要件を明確にする」につながります。

2.経営者・幹部候補を据えるポストを明確にする

次はどのポジションで人材を育成するかを決めましょう。
今あるポジションに固執することなく、自社の成長に必要だと考えられる役職を新たに設置する可能性も検討します。

3.必要な人材の要件を明確にする

必要なポジションを定めたら、次はそのポジションに就く人材に求める概要を明らかにします。
スキルや資質のどちらかに偏ることなく、まんべんなく要件を考えるのがベターです。

例えば、スキルで言えば以下のようなものが挙げられるでしょう。

  • 経営に関する知識
  • 責任あるリーダーポジションの経験
  • 十分な実務経験
  • 語学力
  • 業務に関する専門的な知識

また、資質でいえば下記が求められるかもしれません。

  • 社内外との人脈
  • チームをまとめる力、リーダーシップ
  • 冷静さ
  • 誠実さ
  • コミュニケーション力
  • 粘り強く継続する力

4.要件とマッチする社員を選ぶ

後継者育成計画は長期的に進めるものです。
幹部層に近い階級や年代から候補を選ぶというより、将来的な継承を見据えて若手人材を選抜することが、後継者育成計画が持つ本来の効果をより発揮するポイント。
これまでの実績や経験の延長線上で昇格させるのではなく、今後成長する可能性を見越して人材を選ばなければなりません。
また、本人のやる気も重要です。
自社を繫栄させようという思いや、周囲に対する思いやりがあるかなど、トップにふさわしい熱意と人柄を有しているか見極めることが求められます。

選抜方法は?

「自薦」「他薦」「アセスメント方式」の3つが想定されます。

自薦方式

育成対象者を立候補で募ります。意識の高い人材を確保しやすい点がメリットです。
社内等級や年齢などで軽い縛りを付けると、選抜したい層の若手社員に対して働きかけやすくなります。

他薦方式

上司からの推薦は一般的によく使われている方法です。
そのため社内での困惑が比較的少ないうえ、選外となった社員にも分かりにくいというメリットがあります。
ただし選ばれた社員が本当に幹部候補として活躍したいかはわからないため、推薦の際の充実したヒアリングが必須です。

アセスメント方式

外部の資質テストなどを用いて選抜を行います。有名なものは採用にも使われる「クレペリン検査」などでしょう。
保有能力の高さを把握しやすく、資質的な育成効率の理解も早まります。

複合方式

いくつかの方法を組み合わせて複合的に選抜を行うことも有効です。
例えば、自薦で熱意のある社員を募ったのち、論文や面接、グループディスカッションといった試験を実施して能力を把握するといった方法です。
多角的な視点から評価するのが理想ですね。

選抜者にはどのように知らせればいい?

本人に通知をはっきり行うか、様々な育成プランを提供して選ばれたことを感じ取ってもらえるよう図るかのいずれかでしょう。
後継者育成計画は情勢や企業の業績変化などを踏まえて定期的な見直しを図るものです。
選ばれたとはっきり伝えれば当人のモチベーションは上がりますが、後から見直しを実施した際候補者から外れることもあり得ます。
選外の場合、通知した本人にショックを与えることにもなるでしょう。

そのため、選抜結果については、5.「機会提供」によってそれとなく伝える企業が多いようです。

5.該当人材に個別で機会を提供する

選抜が終了したら、候補者ごとに策定した育成プランを実行します。
将来トップマネジメントとして働いてもらうため、様々なプランによって学びの機会を提供します。

  • 座学
  • 各部門での実務経験
  • 責任あるポジションでの経験
  • 経営現場での体験

座学

経営方針や経営課題への理解や、マネジメントの基礎といった座学を実施して経営理論を学びます。
OJTやトレーニングによる実地研修と併せて実施することが多いです。
外部のトレーニング機関に依頼して専門家に指導してもらうケースもあるようです。

各部門での実務経験

社内の様々な部門・部署をローテーションで経験してもらいます。
各エリアの業務に関する専門知識を身に着けながら、業務フローの理解、社内人脈の構築となどにつなげます。

責任あるポジションでの経験

社内プロジェクトのリーダーや管理職としての子会社への出向、海外事業への参加、関係会社の経営といった経験をさせることで、マネジメントを学び将来行う経営を疑似的に体験できます。

経営現場での体験

実際の経営会議にオブザーバーとして参加させます。
また、会議の運営スタッフとして資料作成や各種手配業務といった事務的な作業に携わらせることもあるようです。
経営の現場を肌で感じてもらうことも、疑似的な経営体験へとつながるでしょう。

6.定期的に見直しを図る

後継者育成計画には、定期的な見直しと修正が必要です。
経営の状況は目まぐるしく変わっていくものですから、プランの進捗確認や改善点の検討を適宜行わなければなりません。
問題が見つかれば、計画の変更や再構築といった柔軟な対応が求められるでしょう。
幹部候補生の見直しから行うこともあります。

サクセッションプランは未来の会社繁栄に向けたプラン

サクセッションプラン
サクセッションプランは事業承継にも有効ですが、本来は事業の存続と発展に大きく効果を発揮するもの。
ですから、育成プランを進めるうえでも、人事部ではなく経営層が大きく関与することになるでしょう。
経営者としての意識を高めてもらうためにも、経営者本人が企業理念や心構え、経営のスキルといった必要な内容を直接幹部候補生たちに伝えるのは有効な手段です。

後継者育成計画を成功させて事業承継と自社の安定につなげましょう!

本記事は、その内容の正確性・完全性を保証するものではありません。
詳しくは当センターへお問い合わせいただくか、関係各所にお問い合わせください。