後継者不足によって「事業承継ができない」と悩む経営者が増えています。

そこで、相談先の候補として挙がってくるのが銀行です。

日頃から関係を築いていることから、銀行にとりあえず相談してみようという経営者も多いのではないでしょうか。

本記事では、事業承継を銀行に相談するメリットやデメリットを中心に解説いたします。
記事の後半では事業承継について相談できる銀行以外の機関も紹介しますので、併せてご確認ください。

  1. 事業承継を銀行に依頼する企業は多い?
  2. 事業承継を銀行に相談するメリット
  3. 事業承継を銀行に相談するデメリット
  4. 銀行以外の事業承継の相談先は?
  5. 事業承継の相談先を選ぶ際に見ておくべきポイント
  6. 事業承継のご相談は名古屋事業承継センターまで

事業承継を銀行に依頼する企業は多い?

事業承継の際に、銀行を含む金融機関に相談する中小企業は多いです。

2017年に中小企業庁が「事業承継ガイドライン」を発表しています。
この文書によると、後継者が決定している企業の47.2%が、後継者が未決定の企業の34.5%が、事業承継を銀行に相談していることがわかっています。
※事業承継ガイドラインをもとに筆者作成

金融機関への相談は「顧問の公認会計士・税理士」「親族、友人・知人」への相談の次に多い結果となっています。
とりあえず身近なところに相談するという理由で銀行を頼る経営者が多いようです。

事業承継を銀行に相談するメリット

事業承継を銀行に相談すると、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。
1つずつ解説いたします。

  • 企業の経営状況を把握したうえでアドバイスをくれる
  • 相続問題にも対応してくれる
  • 事業承継後も融資を受けやすい
  • 相談料や着手金が発生しない銀行が多い
  • 自社株式の価値を算定できる

企業の経営状況を把握したうえでアドバイスをくれる

日頃から取引きを行っている銀行であれば、企業の経営方針や財務状況をある程度把握しています。
そのうえで事業承継についての相談に乗ってくれるため、質の高いアドバイスをもらえるでしょう。

全く関わりのない機関に決算書や財務諸表を提出し、経営理念や自社の内情を説明する手間が省けるのは、企業にとっても大きなメリットです。

相続問題にも対応してくれる

事業承継の中でも主流である親族内承継では、相続トラブルが発生しやすいです。
事業承継に関して後継者が納得していても、後継者以外の親族が納得していないことでトラブルに発展してしまいます。

銀行は事業承継の相続時に発生する金銭的な問題に対応してくれます。
生じた問題によっては多額の相続税が発生してしまうケースもありますが、そのような場合の対策や解決策も提案してくれるでしょう。

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事業承継後も融資を受けやすい

銀行の紹介先で後継者が決まれば、銀行との信頼関係はより強固になるでしょう。

その場合、銀行は事業承継後も快く融資してくれる可能性が高まり、承継後に会社が資金面で問題を抱えるリスクを減らすことができます。

相談料や着手金が発生しない銀行が多い

地方銀行に相談する場合、事業承継の相談料や着手金を請求しないところがほとんどです。
相談後に税理士やM&A仲介会社といった事業承継の専門家に繋ぐことが多く、銀行は繋いだ専門家から紹介料をもらう形が多いからだと考えられます。

お金のかかる事業承継において、銀行での相談によりコストカットができるため、大手企業ほど資金に余裕のない中小企業は相談しやすいでしょう。

自社株式の価値を算定できる

自社株式の価値は、事業承継やM&Aの取引きを適切に行うために必要な数値です。

自社株式の価値算定により、事業の実態や資産の評価額、将来性が客観的にわかり、適切な取引条件や価格の見積もりが可能になります。

それだけでなく、正確な価値が提示できると、取引相手からの信頼にも繋がります。

銀行では公正・公平な取引きを行うための的確な価値算定が行えるので、そのまま事業承継の相談もしてしまうという経営者は多いでしょう。

銀行だけでなく、名古屋事業承継センターでも無料で株価算定を行っておりますので、ぜひご活用ください。

事業承継を銀行に相談するデメリット

事業承継を銀行に相談することにはたくさんのメリットがありますが、デメリットも存在します。
良い面も悪い面も把握したうえで相談先を検討しましょう。

  • 承継先の選定が狭まる
  • 紹介先の手数料が高額なケースがある
  • 利益相反になる可能性がある
  • 事業承継の経験が豊富ではない

承継先の選定が狭まる

地方銀行の場合、大手銀行や事業承継の専門機関と比べ、紹介できる企業や後継者の数は多くありません。

後継者は会社の将来を左右する重要な存在です。
銀行が提示できる少ない選択肢だけで決めてしまうと、ミスマッチのリスクを起こしてしまう可能性があります。

候補を聞いたときに、自社の希望条件を満たす企業が少なかったり、明らかに候補が少なかったりした場合は、専門機関やマッチングサービスを紹介してもらいましょう。

紹介先の手数料が高額なケースがある

銀行への相談だけで解決できない場合は、専門家やM&A仲介会社などを紹介されます。
その際に、依頼料を確認せずに紹介先のサービスを利用してしまうと、予想以上に手数料を取られてしまうという状況になりかねません。

相談料が無料で済んだのにも関わらず、相談後に多額の費用がかかってしまうと、トータルで考えたときに大きな負担になってしまいます。

銀行側から紹介先の料金の提示が無かった場合は、依頼料を事前に確認してから依頼しましょう。

利益相反になる可能性がある

銀行の取引先に事業承継を行う場合に起こりかねないのが、利益相反です。

売手企業はできるだけ高い金額で売却したいと考えます。
しかし、銀行は買い手となる企業の投資回収リスクを下げるために買収金額を抑えたいと考え、売却価格を微妙に引き下げる可能性があります

以上のような利益相反取引は法律で禁止されているので、あからさまに取引価格を下げることはないと思われますが、若干の引下げが行われる可能性は否定できません。

銀行の利益相反管理方針をチェックしたり、少しでも疑問を感じたら銀行に問い合わせたりすることで対策しましょう。

事業承継の経験が豊富ではない

地方銀行の場合、大手とは違い、事業承継の支援の実績や経験が豊富でないことが多いです。

事業承継やM&Aには専門的な知識が必要ですが、地方銀行となると支援内容も限定的になることも多く、相談に対して柔軟な対応ができるかは明言できません。

専門機関やメガバンクに比べると、地方銀行への事業承継の相談では物足りないと感じる可能性があるということは念頭に置いておきましょう。

銀行以外の事業承継の相談先は?

銀行以外にも、事業承継の相談先はたくさんあります。
以下の表にそれぞれの機関のメリットとデメリットをまとめたので、ぜひ参考までにご覧ください。

機関名 メリット デメリット
事業引継ぎ相談窓口・事業引継ぎ支援センター 全国に設置されている公的機関で、公平なアドバイスを受けられる。しつこく営業されることもなく、相談料も無料。 登録機関や士業の支援を受ける場合には、報酬が発生する可能性がある。
商工会議所 商工会議所に入会していれば、融資、福利厚生、税務など、幅広い経営の相談を無料でできる。 専門家に報酬の支払いが生じる可能性がある。スピード感があまりない。
弁護士・行政書士 法的な観点からアドバイスをくれる。事業承継時の相続対策や遺言書の依頼なども併せて相談できる。 分野に偏りがあるため、十分な相談ができない可能性がある。
公認会計士・税理士 多くの中小企業をサポートしているため、経営や事業承継に関する知識やノウハウが豊富。 弁護士・行政書士同様、分野に偏りがあるため、十分な相談ができない可能性がある。
M&A仲介会社・M&Aコンサルティング会社 M&Aに関して実績が豊富で、相談内容に応じた専門家が対応してくれる。 対応できるのはM&Aによる事業承継のみ。

事業承継の相談先を選ぶ際に見ておくべきポイント

「事業承継はどこに相談すれば良いか決めきれない」という方もいらっしゃるでしょう。
そういった方向けに、どのようなポイントで相談先を比較するのが良いのかをご説明します。

  • 事業承継やM&Aの実績
  • 連携している専門家や各種機関
  • コミュニケーションの取りやすさ

事業承継やM&Aの実績

事業承継やM&Aの実績は相談先を決めるうえで参考になる重要な指標です。
実績があるということは、それだけの知識やノウハウを持っているということを裏付けています。

実績があると過去に自社と似た事例を担当した可能性もあり、より適切なアドバイスを受けることができるかもしれません。

連携している専門家や各種機関

1つの相談先だけで抱える悩みを解決できるのが最善ですが、事業承継に関わる人数や会社規模などによっては、その機関だけでは解決できないケースもあるでしょう。

そこで、相談先を選ぶ際にはその機関がどのような専門家や機関と連携しているかを確認するのもおすすめです。

もしその機関だけで解決が難しくても、連携先が多ければ事業承継に関する悩みの解決に近づく可能性も高まります。

コミュニケーションの取りやすさ

円滑なコミュニケーションが図れる相談先を選ぶことも大切です。

事業承継は内容が複雑になることも多く、コミュニケーションがうまくとれないと、気付いたときには思っていた形と違う方向に進んでしまうことも。

事業承継という大きな決断には、経営者の強い想いが込められています。
真摯に寄り添ってくれる相談先を選びましょう。

事業承継のご相談は名古屋事業承継センターまで

事業承継を銀行に相談することのメリット・デメリットを詳しく解説いたしました。

身近で、自社のことをある程度把握している銀行への相談は、事業承継の手間やコストを考えたときに選びやすい選択肢です。
銀行は頼りやすい反面、専門性や実績は他の専門機関に劣ることも多いでしょう。

他の専門機関とも十分に比較したうえで、相談先を選ぶことをおすすめします。

名古屋事業承継センターでも事業承継やM&Aに関する相談を無料で承っております。
お困りの際は、ぜひお気軽にご連絡ください。

※本記事は、その内容の正確性・完全性を保証するものではありません。 詳しくは当センターへお問い合わせいただくか、関係各所にお問い合わせください。