会社に関する全てのことに対して責任を持つ経営者。

その責任の重さに耐えきれず、うつ病になってしまう経営者も少なくありません
しかし、経営者が企業の舵を取れない状況では会社は回らなくなり、最悪の場合、倒産となってしまいます。

そこで本記事では、経営者がうつ病にかかってしまう原因や対策を中心に解説いたします。

経営者がうつ病のリスクヘッジをしておくことで、常に健全な経営を維持できるような体制を整えておきましょう。

  1. 経営者がうつ病にかかってしまう原因とは?
  2. 経営者がうつ病になることによる影響とは?
  3. 経営者のうつ病対策6選!
  4. うつ病になったときのリスク対策は?
  5. うつ病のリスクに備えて早めの対策を!

経営者がうつ病にかかってしまう原因とは?

経営者はどのような原因でうつ病にかかってしまうのでしょうか。
考えられる原因は、以下の通りです。

  • 経営状況の悪化
  • 従業員との人間関係
  • 長時間労働
  • 孤独感
  • 経営環境の不確実性
  • 長年のビジネスパートナーの裏切り

経営状況の悪化

経営状況の悪化は市場変動や競争激化といった様々な事象によって起こり、経営をしていくうえで不可避の現象と言っても過言ではありません。

経営者はその要因を分析し、対策を講じる必要がありますが、決して簡単なことではありません。

いち早く原因を突き止め、改善に向かわないと、株主や従業員からの不満の声も上がってくるでしょう。

会社の状況を早く回復させなければという責任感が経営者を追い込み、うつ病になってしまうケースが考えられます。

従業員との人間関係

経営者の場合、顧客や取引先だけでなく、従業員との関係性がストレスに繋がることがあります。

年齢や性別の差異もそうですが、日々のコミュニケーションが業務的なものばかりで淡泊になっていると、従業員と良好な関係は築けず、業務の円滑な進行も難しくなっていきます。

そうなると、経営者は頼りたいときに従業員を頼れず、悩みや苦しい状況を1人で何とかするしかなくなり、そのストレスからうつ病になる可能性が出てきてしまいます。

長時間労働

あらゆる事象に会社の代表として対応していると、気が付けば長時間労働が当たり前になっており、十分な睡眠時間を確保できないようになっています。

厚生労働省が2023年(令和5年)10月13日に発表した「令和5年版過労死等防止対策白書」では、労働時間が長くなるほど、翌朝に疲労を持ち越す頻度が増え、うつ傾向が高くなるという分析が示されています

長時間労働による短い睡眠は、うつ病だけでなく、生活習慣病や認知症といった症状が発生するリスクを高めることにも繋がります。

孤独感

経営者はその仕事柄、会社や事業の課題を誰にでも相談できるわけではなく、相談相手が少ないことが特徴として挙げられます。

経営者という立場上、安易に周りに心を許したり、弱音を吐くべきではないと考えてしまう方も多いです。

すると、家族や従業員にも腹を割って話しにくくなり、全て1人で抱え込むことでどうしたら良いかわからなくなってしまい、うつ病になってしまうケースが考えられます。

経営環境の不確実性

経営をしていくうえでは、「予想外」と隣り合わせです。

昨今でもAIの台頭によりどんどん情報化が進み、ビジネスでもDX化が加速しています。

経営環境はこのように想像を超えるスピードで変化していくため、変化をいち早く察知して柔軟に適応できなければ生き残っていくことができません。

とはいっても、全ての物事を最初から予想できる人間はいません。
人間は予想外の出来事が起こるとストレスを感じます。

経営者として予想外の事象に対応する中でストレスが蓄積されていくと、うつ病にも繋がりかねません。

後継者特有の重圧

経営者が何代も続いてきた会社の後継者の場合、「自分の代で会社を潰すわけにはいかない」という大きな責任感を背負って仕事に取り組んでいることでしょう。
そのような中でなかなか結果が出せないと、どんどん自分に経営者としての自信も無くなっていきます。

長く勤める従業員からは、「先代経営者はもっと良くやってくれた」と耳の痛い言葉を投げかけられることもあるかもしれません。

後継者が周りから受ける期待や先代との比較もうつ病の原因になります。

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長年のビジネスパートナーの裏切り

経営者にとって、企業の立ち上げから一緒に頑張ってきたビジネスパートナーとも呼べる人物の存在があることも少なくないでしょう。

しかし、信頼を置いていた人物に急に裏切られるケースは珍しくありません。

一度そういった裏切りを経験すると、従業員であっても信用しきるのが難しくなります。
「従業員を信用したいが、裏切られるのが怖い」というジレンマが経営者を孤独にさせ、うつ病に追い込むケースがあります。

経営者がうつ病になることによる影響とは?

経営者がうつ病になってしまうと、どのような影響が出てくるのでしょうか。

  • 経営判断力の低下
  • 売上の減少
  • 従業員の離職

経営判断力の低下

うつ病が招くのは身体の不調だけではありません。
経営者の判断能力や記憶力を著しく低下させ、適切な経営判断ができなくなる可能性があります。

経営者の決定は会社の命運を大きく左右します。
判断力が低下している状況で経営者が意思決定をするのは非常に危険です。

売上の減少

経営判断力が低下してくると、その次に考えられるのが売上の減少です。

うつ病で経営者が不在の間、経営を立て直すための時間が必要ですが、その間にも仕入れ資金や社員の給与、債務の返済など固定費用は発生し続けます。

売上を生み出すための時間もコストも十分に割くことができず、売上が減少してしまうでしょう。

従業員の離職

経営者のうつ病が従業員に知れ渡ると、従業員は「この会社にいて大丈夫なのか」と将来を不安に感じ、退職を願い出る可能性が高まります。

トップが不在の会社では、自分たちの今後も危ういと感じるのは無理もないでしょう。

うつ病による経営者の不在は従業員の離職を促してしまいます。

経営者のうつ病対策6選!

サクセッションプラン経営者のうつ病を未然に防ぐために、以下のような対策方法があります。

  • 社長にしかできない仕事を減らす
  • 経営者の仲間を作る
  • 社内イベントを充実させる
  • 定期的にカウンセリングを受ける
  • 経営コンサルを利用する

経営者にしかできない仕事を減らす

経営者の業務量は従業員の業務量よりも多いことがほとんどでしょう。

しかし、その仕事の一部は経営者が行わなくてもいい仕事かもしれません
幹部候補に引き継ぐべき業務を経営者が行っている可能性もあるでしょう。

そこで、経営者が抱えている業務を洗い出して属人的な業務を減らしてみることをおすすめします。

経営者の業務量を減らすことは業務時間の短縮に繋がります。
すると睡眠時間を今までよりも多く確保できるようになり、うつ病のリスクを下げることができるでしょう。

経営者の仲間を作る

家族や従業員に相談ができないのであれば、経営者のコミュニティに入り、経営者の仲間を作りましょう

経営者であれば同じような悩みを抱えていることもあり、最短距離で悩みを解決できるかもしれません。

ただし、競合他社の経営者だと、利害関係がゆえに腹を割って話がしにくい可能性も考えられます。
相談する経営者を選ぶ必要があることも覚えておきましょう。

社内イベントを充実させる

社内イベントを充実させ、従業員との関係性を良好にすることは、うつ病の原因となる経営者の孤独を解消する1つの手段となるでしょう。

懇親会や社員旅行などを定期的に開催することで、従業員とのコミュニケーションの機会を増やすことができます。
プライベートな時間をともに過ごすことは相互理解にも繋がり、業務にもプラスに働くでしょう。

社内イベントは、経営者と従業員の距離を縮めるだけでなく、従業員の仕事に対するモチベーションの向上ももたらす、一石二鳥の施策です。

定期的にカウンセリングを受ける

経営者の仕事は、常に精神的な負担を強いられるものです。
うつ病対策として、定期的なカウンセリングを行うことをおすすめします。

企業や病院が提供するカウンセリングサービスでは、悩んでいることを整理させてくれたり、セルフメンタルケアの方法や今後どのように自分と向き合ったら良いかを教えてくれたりします。

「カウンセリングを受ける=うつ病」ではありません。
最初はカウンセリングを受けることに抵抗があると思いますが、心の健康を守るためには大切なことなので、ぜひ検討してみましょう。

経営コンサルを利用する

経営コンサルを利用することも経営者が抱える悩みの迅速な解決に繋がるため、うつ病対策の1つだといえます。

経営コンサルでは第三者的な視点でアドバイスをくれるので、社内では気付けない問題点を発見することができ、企業の飛躍のきっかけにもなり得ます。

費用はかかってしまうものの、1人で悩みを抱えてうつ病になることを考えれば安いものでしょう。

うつ病になったときのリスク対策は?

経営者がうつ病にかかってしまったときのリスク対策として以下の2つをご紹介します。

  • 保険に入っておく
  • 権限委譲できる状態を整える

保険に入っておく

従来、経営者に関する保険といえば「死亡保険」による備えが一般的でしたが、昨今の精神病にかかる経営者の増加から「就業不能保険」というサービスが出てきています。

よく間違えられるのが医療保険ですが、医療保険が保障するのは入院や手術時の治療費です。
退院した後の給付は一切ありません。

一方、就業不能保険に加入していれば、「働けない状態になったとき」にかかる生活費に充てる給付金を継続的に受け取れます

就業不能保険に入っておくことで、生活費に関して不安を感じることなく休養に入ることができます。

しかし、サービスを提供する会社によっては、精神病を対象に含めない場合があるので、受給条件を確認するようにしましょう。

権限委譲できる状態を整える

経営者がいない状況でも会社を回していけるよう、経営者が健全な状態のときに権限委譲の準備を整えておきましょう。

この準備が整っていないと、会社の状況が気になってしまい、経営者は治療に専念できません。
経営者に権限がある仕事の一部を事前に幹部に委譲することで、経営者がいない状況でも健全な経営をすることが可能になります。

権限を委譲する際は、明確な目標を設定してあげることと、委譲する権限の範囲をはっきりと提示することがポイントです。
与えられた権限や目指す方向性が明らかだと、幹部も仕事に取り組みやすくなります。

うつ病のリスクに備えて早めの対策を!

経営者のうつ病は普段のストレスやプレッシャーの積重ねにより起こってしまうことが多い病気です。

しかし、未然の対策で十分に防ぐことができる病気でもあります。

自分は大丈夫と高を括らずに早めに動いておくことで、会社はもちろん、自分自身の心も守りましょう。

※本記事は、その内容の正確性・完全性を保証するものではありません。
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