最近、増加傾向にある「会社売却」。
後継者問題の解消や事業拡大にも繋がるM&Aの手法ですが、もし実施するのであれば、経営者は会社売却後のことも事前に考えておく必要があります。
本記事では、売却後にどのような人生を歩む経営者が多いのか、会社売却が経営者以外にどのような影響を与えるのかなど、会社売却後について詳しく解説します。
会社売却を成功させるためのポイントも併せてご紹介するので、ぜひ最後までご覧ください。
会社売却が経営者にもたらすメリット
会社売却という選択は、経営者に以下のメリットをもたらします。
- まとまった対価を得られる
- 経営のプレッシャーから解放される
- 個人保証から解放される
- 会社を残せる
まとまった対価を得られる
会社売却を実施すれば、その対価として経営者の手元にまとまったお金が入ってきます。
そのお金は次に考えている事業に充てたり、老後の資金として蓄えたりなど、様々な用途で使うことができます。
廃業や清算を選んだ場合には、費用や税金が多く発生します。
その一方で、多くの利益を得られる会社売却は、金銭面で経営者にメリットをもたらすといえるでしょう。
経営のプレッシャーから解放される
会社売却に成功すれば、経営者はその座から降りることができ、今まで背負ってきた大きなプレッシャーから解放されます。
平日・休日関わらず、常に会社や従業員のことを考えなければならない経営者のストレスは計り知れません。
会社売却によって大きな責任から解放され、自分の時間を自由に過ごすことができるのも会社売却のメリットの1つといえるでしょう。
個人保証から解放される
多くの経営者は、銀行や金融機関から借入れを行うことで資金を調達します。
そのため、経営者が借入れの際に連帯保証人となっている場合が多いです。
しかし、会社売却を行えば、その保証は買い手側が引き継ぐことになり、経営者は個人保証から解放されます。
会社を残せる
高齢化する日本で問題となっている後継者不足問題。
どれだけ会社を残したい気持ちが強くても、後継者が見つからず、泣く泣く会社の廃業を選択する経営者も少なくありません。
そこで、会社売却によって買収してもらえれば、後継者問題を解決できるだけでなく、長年維持してきた大切な会社を守ることにも繋がります。
会社売却後の経営者の人生とは
会社売却後、どのような人生を歩む経営者が多いのでしょうか。
代表的な選択肢を3つご紹介します。
- 顧問業を始める
- 別の会社を設立する
- 第二の人生を過ごす
顧問業を始める
培ってきたノウハウを引退後も活かしたいと考える経営者は、顧問業を始めるケースが多いです。
顧問業とは、高度な専門知識や経験を活かして、企業の補佐や指導を行う職業です。
顧問業というと弁護士や税理士を思い浮かべる方も多いかもしれません。
しかし、そういった士業だけでなく、経営者が経営陣にアドバイザーとしてノウハウを提供する形もよく見られます。
経験の少ない企業にとっては経営者の失敗経験も大きな価値を持つため、成功体験の無い経営者でも顧問業を始めることはできます。
アドバイザーとして、元経営者だからこそ提供できる経験やノウハウで企業をサポートすることも、売却後の選択肢の1つです。
別の会社を設立する
売却を機に別の事業や会社を立ち上げる経営者もいます。
「やってみたい事業はあるけれども、今抱えている事業で精一杯で、新しいことに挑戦できない」と悩みを抱える経営者も少なくありません。
今の会社を手放して、新たな領域の経営に挑戦するケースもよく見られます。
第二の人生を過ごす
会社売却を機に、悠々自適な第二の人生を過ごす経営者も多くいます。
今まで仕事のことばかりで、なかなか家族との時間がとれなかった経営者は、家族との時間を充実させるのも選択肢の1つでしょう。
引退後は会社に勤める必要がないため、住む場所を限定されず、海外に移住して家族とゆったり過ごすこともできます。
また、売却益や退職金によって手元にお金が増えるため、資産運用に回す方も。
ただし、お金は退職後の生活基盤を支える重要な資源です。
ハイリスク・ハイリターンな金融商品の取扱いには十分に気を付けなければなりません。
会社売却が経営者以外にもたらす影響とは?
会社売却は経営者が新たな人生を歩むための手段であると同時に、会社、従業員、取引先の方々に影響を与える手段でもあります。
どのような影響を周りに及ぼすのかをしっかりと把握したうえで、会社売却という選択をしましょう。
- 会社にもたらす影響
- 従業員にもたらす影響
- 取引先にもたらす影響
会社にもたらす影響
会社を廃業してしまうと、今まで築き上げてきた企業風土、ノウハウ、設備などを全て失うことになります。
一方、会社売却では従業員の雇用や取引先との関係を維持しながら会社を存続させられます。
加えて、買い手企業の事業とのシナジー効果を得られる可能性があり、事業規模の拡大も期待できるでしょう。
一方、会社売却後にトラブルが発生し、結果的に経営が危機的状況に陥ることも珍しくありません。
売却後に起こり得るリスクを洗い出し、買い手企業と対策を練っておきましょう。
従業員にもたらす影響
会社売却が従業員にもたらす一番のメリットは、雇用が維持されることです。
もし会社が廃業してしまえば、従業員本人だけでなく、その家族にも影響を与えます。
しかし、売却を行えば、従業員はこれまでのキャリアを無駄にすることなく、新たな環境で仕事に取り組むことができます。
また、買い手企業との関わりが増えることで、従業員のキャリアアップやスキルアップ、福利厚生の改善も期待できるでしょう。
しかし、経営者が変わることで、従業員のモチベーションが低下し、離職者が出てしまうケースも考えられます。
売却前に買い手企業の企業文化や経営方針を入念にチェックし、売却後に従業員が気持ちよく働けるように、従業員のケアをしっかり行っておきましょう。
取引先にもたらす影響
基本的に売却後も取引先はそのまま継続されます。
しかし、長年関係を築いてきた取引先の中には、経営者の人柄に惹かれて取引きを続けてきたという企業もあるでしょう。
そのような企業は、経営者が変わるタイミングで取引きの中止を申し出てくる可能性があります。
会社売却後にも取引先と安定した取引きを行うためには、事前に売却について十分に説明して、買い手企業が信頼に足る企業であることをわかってもらう必要があるでしょう。
会社売却を行う際の注意点
会社売却を成功させるためには、以下の4つのポイントに注意しておく必要があります。
- 希望通りの会社売却ができるとは限らない
- 情報漏洩をしない
- ロックアップが発生する
- 競業避止義務に注意する
希望通りの会社売却ができるとは限らない
現在、M&A市場は売り手市場となっていますが、買い手は交渉するうえで値下げを迫ってくる可能性があります。
できるだけ高い価格で売りたい気持ちはわかりますが、あまりにも売却額にこだわりすぎていると買い手は買収を辞めてしまう恐れがあります。
ときには譲歩することも大切です。
情報漏洩をしない
会社売却は秘密裏に行いましょう。
情報が市場に出回ると、この会社は簡単に大事な情報を外に漏らす会社だと買い手企業に判断され、取引きが中止になりかねません。
取引先や金融機関だけでなく、従業員への情報漏洩にも気を付けてください。
特に、売却プロセスの早い段階で従業員に知らせてしまうと、従業員は「売却を機にリストラされるのではないか」と不安になり、離職される可能性が高まります。
従業員には売却の最終契約前にしっかりと説明しましょう。
ロックアップが発生する
会社売却後すぐに経営者が抜けてしまうと、会社がまわらなくなってしまう可能性があります。
そのリスク防ぐために、売却後も経営者が一定期間会社に残らなければならない旨を定めたロックアップ条項が存在します。
一定の拘束期間があることを考慮して、売却後のプランを考える必要があるでしょう。
競業避止義務に注意する
会社売却後は、競業避止義務にも気を付けなければなりません。
会社売却時には、契約により、競業避止義務を課されるのが一般的です。
競業避止義務とは、会社売却後、経営者が一定期間、買い手企業と同一の事業による競争行為を行ってはいけないというものです。
期間や営業エリアは、契約時の取決めによります。
これにより、買い手企業の利益が守られます。
売却後、経営者として売却した事業と同じ領域の事業を新たに始めたい場合には、一定期間待たなければならないことを念頭に置いておきましょう。
会社売却はタイミングが重要
会社売却後の人生を豊かにするためには、会社売却自体を成功させなければなりません。
その鍵となるのが、会社売却を行うタイミングです。
タイミングを間違えると買い手がなかなか見つからなかったり、得られるはずだった高い売却益をみすみす逃してしまったりといったデメリットが生じてしまいます。
しかし、こまめに業界動向を見たり、財務状況を健全にしておいたりと、日頃から少し気を付けておくだけで、ベストなタイミングにスムーズな売却を行うことができます。
以下のコラムで詳しく解説しているので、気になる方はぜひご覧ください。
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後継者不足や事業拡大を機に「会社売却」という手段を選択する企業が増えてきています。 しかし、会社売却は適切なタ…
会社売却を成功させてセカンドライフを充実させよう
会社売却は経営者が素敵なセカンドライフを送るための1つの手段です。
経営の座を降りることで、大きく生活が変わるでしょう。
しかし、会社を売るということは、周りにも影響をもたらします。
売却が従業員や取引先に及ぼす影響を考慮して、売却後の人生計画を立てるようにしましょう。
事業承継M&Aパートナーズでは、会社売却を含むM&Aに関するご相談を承っております。
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