一般的に事業承継にかける期間は5〜10年が適切だと言われています。
後継者の育成などは短期間で行うことが難しいため、本来は余裕を持った準備期間を設けることが望ましいです。

ただ、急な事業承継が求められるケースもあります。
今回のコラムでは、短期間で行う事業承継について解説するので、ぜひ最後までご覧ください。

  1. 急な事業承継が求められるケースとは?
  2. 事業承継で引き継ぐものは?
  3. 事業承継の主な選択肢
  4. 最も早く済む事業承継方法は?
  5. 他の事業承継を素早く行うことは可能?
  6. 廃業が求められるケースも
  7. 廃業と倒産の違いは?
  8. 余裕を持って準備を進めるのがベスト
  9. 早めに専門家に相談!

急な事業承継が求められるケースとは?

急な事業承継が求められるケースとして、例えば、現在の社長が突然亡くなってしまうことが考えられます。
もし事業承継の準備が何もされていない状態でそのような事態に陥ってしまうと、会社をどうするか、遺産相続をどうするかなど、残された親族や社員に大きな負担がかかります。

他にも、引退時期が迫っているにも関わらず、準備が進んでいない場合や、事業計画の変更に伴い、急な事業承継を迫られる場合も少なくありません。

どのような事業承継方法を選択するかによっても異なりますが、多くの手順を迅速にこなしていく必要があるでしょう。

事業承継で引き継ぐものは?

事業承継で引き継ぐものは、主に以下の3種類に分類されます。

  • 経営権
  • 資産
  • 知的資産

それぞれ具体的に何が含まれるのか、一つひとつ解説していきます。

経営権

事業承継で引き継ぐものの一つ目は「経営権」です。
「社長」という役職を引き継ぐことで、経営方針や労働環境の決定権が与えられます。

ただし、経営権を手にしたとしても、従業員や関係者から新たな経営者と認めてもらわなければ、完全に会社を引き継いだとは言えません。
経営者として適切なリーダーシップを身に付け、周囲からの人望を得る必要があります。

資産

二つ目は「資産」です。
土地や建物といった不動産のほか、設備や備品といった会社の資産を引き継ぎます。
現金、預金、株式なども資産に含まれます。

知的資産

知的資産」は、実際に目で見ることができないものや、その価値を具体的な金額で表すことが難しい資産のことを指します。
具体的には、人材、ノウハウ、ブランド力、人脈などが知的資産に含まれます。
第三者機関に会社を売却するM&Aでは、通常の資産だけではなく、この知的資産も加味し、買収に応じてくれる企業も多いです。

事業承継の主な選択肢

事業承継は選択する手法によって、平均的に要する期間が異なります。
どのような手法があるのかを解説いたします。

親族内承継

社長の子供や親族が後継者として会社を引き継ぐことを、親族内承継と呼びます。
近年は親の跡を継ぐ子供が減少している傾向にありますが、全ての事業承継の中で、この親族内承継が依然として最も高い割合を誇ります。
従業員や関係者からの理解を得やすく、資産の引継ぎに関しても、贈与や相続など、幅広い選択肢があるという特徴があります。

親族外承継

親族外承継は、自社に所属している、親族以外の従業員が会社を引き継ぐ手法のことを指します。
会社の理解が深いベテランの従業員を後継者として選任すれば、会社にかかる負担が少なく済みます。
ただし、現在の経営者が所有している株式の引継ぎに多額の資金が必要になるデメリットがあります。

M&A

親族や社内に目ぼしい後継者候補が見つからない場合、M&Aという選択も考えられます。
M&Aは会社の合併や買収を指し、自社を他社に売却することで後継者問題を解消しつつ、会社や従業員の雇用を守ることができます。
現金あるいは株式が素早く手に入るという点もM&Aのメリットです。

最も早く済む事業承継方法は?

  • 親族内承継
  • 親族外承継
  • M&A

以上の三つの手法を解説しましたが、一般的にこの中で最も素早く事業承継できるのはM&Aです。

他の二つの手法は、後継者を次の社長として育成するために数年以上の期間を要しますが、M&Aはその必要がありません。
買収先の企業とスムーズにマッチングしさえすれば、1年以内に事業承継が完了するケースも多いです。

  • 業績が優れている
  • 他社にないノウハウを有している
  • 優秀な人材が集まっている

このような優良企業であると、素早くマッチングする可能性が高い傾向にあります。

他の事業承継を素早く行うことは可能?

親族内承継の場合

親族内承継の場合、後継者となる子供や親族が既に会社に所属しているかどうかで、状況は大きく異なります。

既に会社に所属し、後継者として十分な実力や信頼を得ているのであれば、急な事業承継でも対応できる可能性はあります。
ただ、これから社員の一員として会社に加わるのであれば、長い育成期間が必要になるため、短期間で事業承継を終えることは非常に難しいでしょう。

親族外承継の場合

一方で親族外承継の場合は、後継者として選出されるのは卓越したスキルを持ったベテランの従業員であることが多いです。
経営者としてのスキルを身に付ける必要はありますが、親族内承継と比較すると、育成にかかる期間は比較的短く済む傾向にあります。

ただし、親族外承継の大きな課題は株式の買取資金です。
現在の社長が所有している株式を買い取るには相応の資金が必要であり、個人では賄えない金額であることも考えられます。

銀行から融資を受けるといった対策方法はありますが、長い期間が掛かってしまうこともあります。

廃業が求められるケースも

会社を存続させることが必ずしも正しいとは限らず、場合によっては、廃業することも選択肢の一つとして考えられます。

  • 後継者が見つからない
  • 業績が悪い
  • 将来性が低い
  • 支払・返済ができない

これらのケースのように、廃業が選択される場合は基本的に経営状況が良くないことが多いです。
会社がなくなることはもちろん、従業員も解雇することになりますが、廃業を選択することにより、責任者が被る損害や、関係者への負担を最小限に抑えることができます。

廃業と倒産の違いは?

廃業に関して、倒産との違いをあらかじめ理解しておきましょう。

廃業は、会社の状況が悪化した際、経営者が自ら事業活動を辞めることを指します。
一方で倒産とは、債務の返済や給料の支払いなど、資金繰りが難しくなった場合、経営を辞めることを余儀なくされることを指します。

つまり、事業活動を辞めるという点においては同じでも、自発的に辞めるか、やむを得なく辞めるかという点において、廃業と倒産は大きく異なります。

こちらのコラムでは、他にも破産や解散などとの違いについて、より詳しく解説しているので、興味があればぜひご覧ください。

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余裕を持って準備を進めるのがベスト

事業承継をできるだけ早く終えることについて解説いたしましたが、本来、事業承継は余裕をもって準備を進めることが望ましいです。

  • 後継者の選任・育成
  • 事業承継計画書の作成
  • 運営資金・承継資金の調達
  • 相続対策

このように、事業承継を完了するためには多くの手順を踏む必要があり、後継者の育成などは特に時間をかけて行う必要があります。
1、2年で事業承継を完了させることも不可能ではありませんが、準備が不十分な状態で会社を引き継ぐと、その後の業績が落ちてしまう可能性が高まります。

承継後も順調に業績を伸ばしていくためにも、可能な限り早く行動を起こし、作成した事業承継計画書に沿って準備をしていくことが大切です。

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早めに専門家に相談!

今回のコラムで触れたこと以外にも、事業承継には様々な選択肢があり、会社によって適切な対策を選択するには専門知識が不可欠です。
急いで事業承継を行う場合も、早めに準備に取り掛かる場合も、まずは事業承継の専門家に相談することをおすすめします。

名古屋事業承継センターでは、お客さまの状況に応じて、最適な事業承継をご提案させていただきます。
後継者不足や相続対策など、何かお悩み事があれば、下のお問い合わせフォームから気軽にご連絡ください。

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