1. 医業承継とは?
  2. 親子間の医業承継のメリット・デメリット
  3. 親子間の医業承継が減少している原因
  4. 医業承継の流れ
  5. 医業承継が病院にもたらす変化
  6. 後継者不足は早めの対処が大切!

医業承継とは?

医療法人や個人医院における事業承継は「医業承継」と呼ばれ、承継方法としては下記の2種類があります。

  • 親族承継
  • 第三者承継(M&A)

以前は子供が親の病院を引き継ぐ親族承継が常識でしたが、近年、その割合は徐々に減少しつつあります。
本コラムでは、親子間の医業承継の特徴とともに、その件数が減少している要因について解説していきます。

親子間の医業承継のメリット・デメリット

M&Aなどの第三者承継と比較し、親子間での医業承継には、以下のようなメリット・デメリットがあります。

親子間の医業承継のメリット

  • スタッフや患者から受け入れられやすい
  • 初期費用を抑えることができる
  • 十分な育成期間を設けることができる
  • 相続対策を講じやすい

スタッフや患者から受け入れられやすい

医療業界に限らず、親から子供への事業承継は、周囲に受け入れられやすいというメリットがあります。
仮にM&Aによって経営方針や院内の雰囲気が大きく変わってしまうと、スタッフが不満を抱いて離脱してしまったり、患者が戸惑ってしまう場合があります。
後継者が現院長の子供だと、そのようなリスクを抑えられる傾向にあります。

初期費用を抑えることができる

規模や診療科によって異なりますが、病院の開業には少なくとも数千万円という多額の資金が必要です。
融資や補助金の活用を踏まえても、簡単に用意できるような金額ではありません。

日本医師会が実施したアンケート調査によると、新規で開業医となる平均年齢は41.3歳。
自分の病院を持ちたいという意思があっても、実際に開業するにはかなりの年数を要してしまう場合が多いです。

一方、後継者として病院を引き継ぐ場合、土地や建物だけでなく、医療機器・設備も新規で取り揃える必要はありません。
初期費用は大幅に抑えられ、年齢的にも若くして院長になることができます。

十分な育成期間を設けることができる

病院を継ぐには経営者としての能力も身に付ける必要がありますが、子供に病院を継ぐ意思があることがわかっていれば、育成に十分な期間を設けることができます。
承継準備も余裕を持って進めることが可能になり、スムーズに代替りできる傾向にあります。

相続対策を講じやすい

個人医院の場合、病院の資産は全て相続税の課税対象になります。
そのため、生前から相続対策を講じておく必要がありますが、どのような対策が適切であるかは場合によって異なり、ある程度の期間を要することも珍しくありません。

前述したように、親族承継は準備期間を長く確保できる傾向にあり、相続対策にも早めに取り掛かることができます。
専門家の協力が不可欠な支援制度などもあるため、前もって相談することをおすすめします。

親子間の医業承継のデメリット

  • 立地を動かすことができない
  • 選択できる診療科が制限される
  • 経営方針が異なる場合がある

立地を動かすことができない

土地や建物をそのまま引き継ぐことができる点が親族承継のメリットですが、裏を返せば、立地を動かすことができないということです。

  • アクセスが悪い
  • 人通りが少ない
  • 周囲から気付かれにくい

仮にこのような環境にあったとしても、病院の住所を移転することは容易ではありません。

選択できる診療科が制限される

内科、整形外科、皮膚科、眼科など、医師にも様々な診療科がありますが、親の病院を引き継ぐのであれば、基本的に同じ診療科を選択しなければいけません。
子供が本来希望する診療科が別にあっても、選択肢は制限されてしまいます。
病院に新しく診療科を追加するというケースも存在しますが、そのような件数は非常に少ないです。

経営方針が異なる場合がある

親子で経営方針が異なる場合もあり、例えば子供が病院の改革を望んでいるとしても、親がそれを受け入れないことは珍しくありません。
かといって、代替りしたタイミングでいきなり経営方針を大きく変えてしまうと、スタッフに大きな負担が掛かることになります。
事前に親子間で意思を統一し、院内に混乱を招かないように配慮する必要があります。

親子間の医業承継が減少している原因

後継者候補である子供に承継を拒まれてしまうと、その病院は高い確率で後継者問題に直面することになります。
以前は子供が親の病院を継ぐことは常識といっても過言ではありませんでしたが、なぜ現代ではそれが崩れつつあるのでしょうか。

具体的には、以下のような理由が挙げられます。

  • リスクのある経営者より、安定している勤務医を選択する
  • 親子で診療科目が異なる
  • 子供が都心部の病院に勤務しており、地元の病院を継ぐ気がない
  • 病院の経営状況が良くなく、後継者が承継のメリットを感じない

このようなケースが増加傾向にあるため、医療業界においても後継者問題は深刻化しつつあります。

※参照 全国社長年齢分析/医師・歯科医師・薬剤師統計の概況

小規模な医療法人・個人医院を中心に病院の数は年々減少し、上のグラフのように、医療業界の経営者の平均年齢は、他の業界と比較しても高くなっています。

他にも、近年は医業承継に関して様々な悩みを抱える病院が増加しています。
早期解決のためにも、まずは事業承継の専門機関にお問い合わせください。

医業承継の流れ

親子間での医業承継の流れを解説いたします。
スムーズに準備を進めるために、どのような手順で承継されるのかをチェックしておきましょう。

承継意思の確認

まずは子供に病院を継ぐ意思があるのかを確認します。
子供が医師になったとしても、後継者として病院を継ぐとは限らず、途中で考えが変わる可能性もあります。
コミュニケーションを欠かさず、常に子供の意思を理解しておくことが大切です。

経営方針の擦り合わせ

経営方針の不一致は、親子関係が悪化してしまう主な理由の一つです。
それが原因でスタッフに負担をかけてしまう恐れもあるため、この点に関してもコミュニケーションが大切です。
より良い病院にするという目的は共通しているため、お互いが相手の意見に耳を傾け、病院の将来性を高めていきましょう。

事業承継計画書の作成

義務付けられているわけではありませんが、スムーズに医業承継を完遂するためには、事業承継計画書の作成が欠かせません。
顧問税理士や専門家に相談しながら病院の経営状況を把握し、適切な承継方法を検討しましょう。

課題の抽出・改善

事業承継計画書に則りつつ、病院の課題を抽出し、同時に改善を図ります。
もし子供が病院を継ぐか決めかねている場合、この段階が決断を大きく左右する可能性もあります。
何か重大な問題を抱えている場合は、子供に委ねるのではなく、親の代で解決するという意思を持つことが大切です。

財産権・経営権の移転

最後に財産権と経営権を後継者に移転すれば、医業承継はひとまず完了します。

個人医院の場合は事業譲渡によって経営権を譲渡しますが、それには個人医院を一旦廃止し、子供が新規開業の手続きを行わなければいけません。
他にも、社員の再雇用手続きや、不動産の所有権移転登記手続きなどが必要になります。

一方で医療法人の場合は、出資持分を譲渡し、社員の入替えを行います。
ただし、法人格はそのまま引き継ぐため、個人医院のような名義変更や契約者変更の手続きは必要ありません。

医業承継が病院にもたらす変化

院長の交代は、その病院にとって大きな転機になります。
スタッフや患者にも大きく影響するため、具体的にどのような変化が考えられるのか、事前にチェックしておきましょう。

診療内容の変更

代替りによって経営方針が変わると、診療内容も変化する可能性が高いです。
例えば、細かい検査内容が変更されたり、患者とのやり取りもそれまで通りにいかない場合があります。
病院の規模によっては、診療科の追加といった大きな変化がもたらされる場合も稀に存在します。

スタッフの増員

診療内容の変更に伴い、スタッフが増員されることも考えられます。
院内の人間関係も大幅に変化するため、各スタッフに配慮しつつ、労働環境を整えていくことが求められます。

設備・機器の導入

医療設備や医療機器の技術は年々進化しています。
病院を長く存続させるためには、定期的に新しい備品を導入し、診療内容の拡大や業務の効率化を図る必要があります。
特に代替りはその絶好の機会であり、スタッフもスムーズに受け入れてくれる傾向があります。

後継者不足は早めの対処が大切!

現代の日本はどの業界も後継者不足に悩まされていますが、医療業界も例外ではありません。
子供が後継者となるのはもはや常識とは言えず、M&Aといった第三者継承を選択する経営者の方も増加しています。

もし子供に後継者となる意思がないのであれば、早めに別の選択肢を検討する必要があるでしょう。

名古屋事業承継センターでは、医業承継に関するお悩みも受け付けております。
承継方法や相続対策など、何か疑問などをお持ちであれば、お気軽にご相談ください。

※本記事は、その内容の正確性・完全性を保証するものではありません。
詳しくは当センターへお問い合わせいただくか、関係各所にお問い合わせください。