将来的に会社を引っ張っていく存在になる後継者は、新社長に就任するまでにやらなければいけないことが数多くあります。
- スキルを身に付ける
- 人間関係を構築する
- 資金を調達する
例えばこのようなことが挙げられますが、後継者に指名されたばかりの頃は不安も大きいため、何から手を付ければいいのかわからず、混乱してしまいます。
迷わず効率的に準備を進めていくために、後継者に指名された時、最初に何をすればいいのかを解説いたします。
適切な事業承継期間は?
後継者としてやるべきことを理解する前に、まず事業承継の準備にどれほどの期間が必要になるのかを確認しておきましょう。
中小企業庁が発表しているデータによると、後継者として指名されてから、実際に会社を引き継ぐまでに要する期間は上のグラフの通りです。
ほとんどの企業は数年間かけて準備しますが、半年以内に素早く事業承継を完了させる企業も22.4%あります。
ただ、そのような短期間での事業承継はM&Aのような外部機関への承継が高い割合を占めます。
親族や社内の役員・従業員が会社を引き継ぐ場合には、育成に時間をかける必要があるため、余裕を持って準備することが望ましいです。
後継者が最初にすること
次期社長を任された後継者が最初にしなければいけないことは、事業承継計画書を作成することです。
名前の通り、事業承継における計画を記す書類であり、具体的には以下のような項目を記入します。
- 会社の強み・弱み
- 会社や後継者が抱える課題
- 具体的な取組み
- 売上の推移
- 持株割合の推移
事業承継計画書は具体的にフォーマットが定められているわけではないため、自由に作成することができます。
中小機構からも記入様式が配布されており、こちらのページでダウンロードし、そのまま活用することが可能です。
会社の存続に関わる重大な計画書であるため、1人ではなく、現社長や役員たちと相談しながら作成しましょう。
代替りのタイミングで会社としての形態が変化する可能性もあるため、部署ごとに細かく計画を立てることも有効です。
後継者が会社を引き継ぐまでにやるべきこと
事業承継計画書には、実施する取組みの内容を詳細に記入する必要があります。
一般的にやらなければいけないことを紹介するので、一つひとつチェックしてみましょう。
- 会社の磨き上げ
- 経営者としてのスキルの習得
- 人脈の引継ぎ・構築
- 節税対策の検討
- 事業承継資金の調達
会社の磨き上げ
会社の磨き上げとは、自社分析によって明らかになった長所を活かしつつ、現在抱えている課題を克服していく過程を指します。
社長が交代するタイミングが近づいているにも関わらず、多くの課題が残っていると、計画の終盤になって予定が崩れてしまう可能性が高くなります。
他の取組みをスムーズに進行させるためにも、今抱えている課題は優先的に解決すべきだと言えるでしょう。
経営者としてのスキルの習得
後継者はもともと能力が高い人物が指名される場合が多いですが、経営者には高い先見性はもちろん、人事や労務といった幅広いスキルが求められます。
具体的なスキルについては後述するので、時間をかけて少しずつ習得していきましょう。
人脈の引継ぎ・構築
社長が交代した後も安定した売上を維持するためには、承継前からステークホルダーと良好な関係を築いておく必要があります。
特に中小企業においては、社長が多くの人脈を持っているケースが多いため、その人脈を引き継ぐと同時に、新しい関係を構築することが大切です。
節税対策の検討
主に親族内承継において重要なのが、節税対策を講じることです。
会社の所有権を引き継ぐということは、株式を引き継ぐということでもありますが、株式は資産として非常に高い価値があります。
贈与にしろ、相続にしろ、引き継ぎ時には多額の税金が発生する場合があるため、納税金額を抑える対策を練っておくことが望ましいです。
事業承継資金の調達
親族内承継とは違い、血縁関係にない役員や従業員が後継者になるには、現社長から株式を買い取るための資金が必要になります。
個人で全額を負担することが困難なことも珍しくないため、
- 金融支援を受ける
- SPC(特別目的会社)の活用
このような方法で資金を調達しなければいけません。
株式買取における資金調達については、こちらのコラムで詳しく解説しています。
興味があればぜひご覧ください。
株式買取の資金不足はどうすればいい?解決策と注意点を紹介
事業承継の手法は様々ですが、引き継ぎの際、株式を買い取るために多額の資金が必要になる場合が多いです。 しかし、…
経営者に必要なスキル
会社を引き継ぐ前に、後継者が身に付けておくべきスキルを具体的に解説していきます。
様々なスキルが挙げられますが、中小企業庁を参考にすると、以下の二つに分類されます。
- 事業運営に必要な実務スキル
- 企業存続に必要な分析・判断能力
事業運営に必要な実務スキル
社長の大きな役割の一つは会社全体をきちんと管理することです。
中でもお金と人に関することは詳細に把握しておく必要があり、以下のようなスキルが求められます。
- 決算書の見方など財務に関する知識
- 企業経営、事業承継に必要な税金の知識
- 企業法務の知識
- 人事・労務の知識
- コンプライアンス
管理部があるとしても、会社の口座情報など、基本的に社長が管理しなければいけないことは少なくありません。
会社の規模に関係なく、最低限の管理スキルを身に付けておくべきだと言えます。
企業存続に必要な分析・判断能力
会社の運営方針は、時代の流れや市場の変化に合わせて随時変更していく必要がありますが、そのためには様々な情報を分析し、良し悪しを見極める判断力が求められます。
- 業界の動向、見通しなどを踏まえた自社の経営環境の分析
- 経営戦略・マーケティング分析
- 第二創業プランの策定
- 利益・資金計画策定
- リスクマネジメント
具体的にはこのようなスキルが挙げられますが、効率的に習得するにはある程度の責任が伴う業務をこなしていくことが有効です。
会社経営にも徐々に携わりつつ、まずは小さい規模からPDCAを回していきましょう。
社長になる前にやっておいて良かったこと
必須事項ではないものの、社長に就任する前にやっておくと望ましいことを解説いたします。
承継後もスムーズに会社を運営していける可能性が高まります。
- 現社長の思想を理解する
- 会長の振る舞いを取り決める
- 他社の社長の話を聞いておく
現社長の思想を理解する
別々の人間である以上、現社長と後継者では少なからず思想に違いがあります。
特に会社を創業した初代と、2代目ではそのギャップが大きく、会社に対する愛着や理解の深さには少なからず差が出てしまいます。
そのギャップは会社全体、あるいは外部にまで影響を及ぼしてしまう恐れもあるため、承継前に現社長の思想をしっかりと理解しておきましょう。
普段のコミュニケ―ションはもちろん、2人で真剣に話し合う場を意図的に設けることが大切です。
会長の振る舞いを取り決める
事業承継が完了した後も、引退した旧社長は会長職に就き、経営に携わることは多いです。
どの程度関わるかにもよりますが、注意点は新社長より会長の方が影響力が強い傾向にあるということです。
もし新社長と会長の間で方針にギャップが生まれた際、従業員はどちらの指示に従えばいいのか混乱してしまいます。
そのような事態を回避するための防止策として、あらかじめ会長に就任した後の振る舞いを取り決め、必要に応じて就任期間も定めておきましょう。
他社の社長の話を聞く
社長の意志やそれまでの企業文化を引き継ぐことも大切ですが、事業承継は会社が一段階進化するための絶好の機会でもあります。
他社の社長と頻繁にコミュニケーションを取り、有効なシステムや文化を積極的に取り入れていきましょう。
既に知り合っている社長と接するだけでなく、セミナーに参加することも有効です。
やることを整理して計画通りに進行させよう
後継者に指名されてから新社長に就任するまで、やるべきことは数多くあります。
当初は混乱してしまうことも多いですが、いざ社長を交代する際に戸惑わないよう、まずは事業承継計画書を作成しましょう。
実際に準備を進めていく際も、後継者が全ての責任を背負い込むのではなく、現社長や他の従業員たちと積極的にコミュニケーションを取り、会社全体でより良い会社作りを実行することが大切です。
また、外部の専門機関を利用することもおすすめです。
事業承継M&Aパートナーズでは、これから事業承継を控えている企業や後継者の方々をサポートいたしますので、何か不明点やトラブルを抱えている場合にはぜひご相談ください。
※本記事は、その内容の正確性・完全性を保証するものではありません。
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