会社の代表である社長は様々なスキルが求められるだけでなく、重い責任も伴うため、誰にでも務まる役割ではありません。
そのため、次期社長に指名されることは一般的にとても名誉なことですが、近年はワークスタイルの多様化も進み、経営者になることを望まない人も増えてきています。
実際、後継者に指名されたものの、会社を継ぐ意志がなく、断りたいと考えている人も多いです。
しかし、何らかの理由で断れない人も珍しくないため、今回のコラムでは会社を継ぐ意志がないにも関わらず、後継者に指名されてしまった時の対策を解説いたします。
誰もが後継者になりたいわけではない
- 会社の将来性が低い
- 他にやりたい仕事がある
- リスクを負いたくない
例えばこのような理由で、会社を継ぐことに抵抗を抱いている人は非常に多いです。
社長になれるチャンスは万人に訪れるわけではないため、後ろめたさを感じてしまうこともありますが、会社を継ぐ理由・継がない理由は人によって様々です。
こちらのコラムで詳しく解説しているので、興味があればぜひご覧ください。
家業を継ぐ理由・継がない理由!後継者不足の原因は?
家業を継ぐ人は年々減少している 近年の後継者不足の背景には、家業を継ぐことを拒む20代・30代が増加しているこ…
会社経営のハードルは年々高くなっている
近年の日本のGDP成長率はプラスとマイナスを繰り返しているものの、長いスパンで見るとほぼ横ばい状態を維持しています。
ただ、人口減少の影響もあり、今後国内ではあらゆる業界の市場が徐々に縮小していくことでしょう。
つまり、現在の日本は経営者にとって優しい状態とは言えず、一世代前に比べて会社運営のハードルは確実に上がっています。
これから経営者になるには強い覚悟が求められ、後継者を引き受ける場合も深く考えて決断する必要があります。
後継者指名を断れない理由
自分自身に会社を継ぐ意志がないとしても、後継者になることを断れないケースは珍しくありません。
状況は様々ですが、例えば以下のような理由が挙げられます。
- 他に後継者がいない
- 周囲の期待を裏切れない
- 会社を潰すことに罪悪感を抱く
- 家族関係が崩れる
現在の日本では多くの企業が後継者不足に悩まされており、特に中小企業は深刻です。
以前のような社長の親族が会社を継ぐという風潮はなくなりつつあり、後継者候補が複数人いるような会社も非常に珍しいと言えるでしょう。
そのため、他の候補者がいない状況で後継者になることを断ると、社長や他の従業員の期待に応えられないことに留まらず、会社の存続そのものが危ぶまれます。
家業として長年続いてきた会社であれば尚更で、家族関係に軋轢が生じることも考えられます。
後継者が指名されてから就任するまでの期間
後継者に指名されたとしても、すぐに新しい社長に就任するわけではありません。
2021年版の中小企業白書によると、社長から事業承継の意志を伝えられてから、後継者が新たな社長に就任するまでに要した期間は以下の通りです。
グラフによると、M&Aや外部招聘といったその他の事業承継にかかる期間は短く、半分近くが半年以内に事業承継を終えています。
一方で親族や社内の役員・従業員への事業承継は時間がかかる傾向にあり、特に親族内承継では5年以上の期間を要することも珍しくありません。
返事の保留は可能?
上記の通り、事業承継は中長期的なスパンで行うことが一般的ですが、もし後継者に指名された場合には、できるだけ早く返事をすることが望ましいです。
現社長の引退が何年後に計画されているかにもよりますが、事業承継では後継者育成や会社の改善など、やるべきことが数多くあります。
そのため、例え会社を継ぐか迷っていたとしても、いつまでも返事を保留にするわけにはいきません。
自分が会社を継ぐかどうかに関係なく、次のステップに進むためには早めに決断する必要があります。
後継者指名を断ったら会社を離れなければいけない?
「後継者指名を断ったら会社を離れなければいけないのか?」という疑問を抱いている方は珍しくありませんが、もちろん法律的にそのような決まりはありません。
万が一、会社を離れざるを得ない状況になってしまえば、会社側の過失に他ならないでしょう。
ただ、これまで通り会社に在籍するとしても、居心地が悪くなってしまう可能性は高いです。
また、社長を含めた周囲の従業員からは向上心がないと判断されてしまうかもしれません。
他にも後継者候補がいるような状況であれば、断ることは難しくありませんが、そうではない場合、後継者指名を断ることは非常に大きなストレスに繋がります。
会社を継ぎたくない場合の対策
後継者の指名を断りつつ、できる限りこれまで通り会社にいるためには、適切な対策を実行する必要があります。
後継者にはならなくても、会社の一員として、全員が納得できる結末になるように尽力すべきだと言えるでしょう。
継ぎたくない理由を解消できないか考える
まず検討すべきことは、後継者になりたくない理由を解消した上で、会社を継ぐことができないかということです。
例えば、他にやりたい仕事があるのであれば、会社の新規事業として始められる可能性があります。
また、経営者として会社を運営していくことに不安を抱いている場合は、必要なスキルを習得することで自信を持てるかもしれません。
このように、会社を引き継いだ後、あるいはその前から実行できることは多いです。
社長になることで裁量の幅は一気に広がるので、まずは後継者になりたくない理由を明確にし、将来的にその問題を解決できる可能性がないか、今一度考えてみましょう。
社長と一緒に他の方法を考える
例え後継者指名を断ったとしても、会社を裏切るわけでもなければ、敵になるわけでもありません。
会社の一員として、社長と一緒に他の事業承継手段がないか考えましょう。
- 他に後継者候補となる人物はいないか
- 優秀な人材を外部から招聘できないか
- M&Aで外部機関に売却することはできないか
廃業以外にも、例えば上記のような手段が考えられます。
積極的な姿勢を見せることで信頼を損なわずに済むので、後継者にはなれなくても、できる範囲で会社に貢献していきましょう。
外部の専門家に相談する
社内だけで問題を解決することが難しい場合には、外部の専門家に相談することも有効です。
ノウハウや実績が蓄積されている専門家であれば、一つひとつの会社に合わせて適切な解決策を提示してもらえる可能性が高いです。
また、もともと事業承継は専門知識や複雑な手続きが伴うことから、スムーズな承継を実現するためにも有効だと言えるでしょう。
しっかりとコミュニケーションを取ることが重要
もし会社を継ぐ意志がないにも関わらず、後継者に指名されてしまうと、非常に重いストレスがかかり、断る場合も気まずい思いをすることになってしまいます。
そのため、当初から自分以外の人物を後継者候補として選出する、あるいは他の事業承継手段を検討することが望ましいです。
会社のためにも、自分自身のためにも、日頃から頻繁にコミュニケーションを取り、会社の将来像を社長と共有しておきましょう。
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