親が会社を経営しているという方が後継者候補として挙げられることは多いと思います。
しかし、親の想いに応えたい一方で、経営者になることに対して様々な不安を抱えている方も少なくありません。
本記事では、多くの後継者候補が抱える悩みに焦点を当て、悩みや不安を少しでも解消する方法などを解説していきます。
親の会社を継ぐことの良い面と悪い面の両方を比較した上で、後継者を引き受けるか否かを判断しましょう。
親の会社を継ぐ際に後継者が抱える悩み
後継者として誘ってもらってはいるものの、一歩が踏み出せないという方に共通する悩みを以下にまとめました。
1つずつ解説していきます。
- 資金繰りのノウハウがない
- ベテラン社員との軋轢が生まれる
- 会社への思い入れがない
- 先代経営者と比較される
- 自分に自信が持てない
- 将来のビジョンが見えない
- スケジュール感がわからない
- 税負担の程度が予測できない
資金繰りのノウハウがない
1つ目の悩みとして、資金繰りのノウハウがないことが挙げられます。
ここに関しては、先代経営者とともに金融機関へ挨拶をしたりする中で解決する部分になってきますので、安心してください。
ただし、あまりにも資金繰りに関する知識がないと会社の評価を落としかねません。
事前に勉強したり、資金繰りに関する情報を金融機関の担当者に提供してもらうなど、積極的に学ぶ姿勢でいることが大切です。
ベテラン社員との軋轢が生まれる
先代経営者と長きに渡って会社を成長させてきたベテラン社員との軋轢が生じることも後継者候補の悩みの種です。
現場経験に関しては、どうしても後継者はベテラン社員には敵いません。
しかし、現場の従業員も経営に関しては知識がありません。
後継者は「ベテラン社員の主張」と「新しい時代に合わせた経営をしなければならないという義務感」の板挟みになり、親の会社を継ぐとなった際に大きく悩んでしまいます。
多くの後継者が悩む部分ではありますが、後継者がリーダーシップを取り、ベテラン社員に対してビジョンや経営方針を明確に示し、社員を引っ張るリーダーシップを発揮することが、社員の不安解消には有効です。
また、公平性のある評価制度を整えたり、ベテラン社員との積極的なコミュニケーションも軋轢解消の手段の1つです。
会社への思い入れがない
会社をここまで大きくしたのは、紛れもなく先代経営者です。
そのため、後継者の中には会社に対しての想いや、情熱が持てず、「この先このモチベーションでやっていけるのか」と悩む方も少なくありません。
しかし、会社への想いというのは会社を引き継いでから育まれるものです。
会社がどんな危機をどのように乗り越えてきたのか、どんなエピソードから商品が生まれたのかなどを知っていく中で、自然と会社への思い入れも出てくると考えられます。
先代経営者と比較される
親の会社を継ぐとなるとどうしても避けられないのが、先代経営者との比較です。
長く会社に勤める従業員からは「先代経営者のときはこうだった」などと耳が痛い言葉をもらうこともあるかもしれません。
しかし、最初から先代経営者と同じようにできたら誰も苦労しません。
先代経営者も長く経営に携わることでできるようになったこともたくさんあるはずです。
親と比較されて言われた言葉などは鵜吞みにせず、後継者として経営を進めていく中で従業員の信頼を得て、経営者としてのポジションを確立していきましょう。
自分に自信が持てない
自分に自信が持てないというのも親の会社を継ぐ後継者の悩みとしては大きなものだと言えます。
「自分が経営をやっていけるのか」、「従業員がついてきてくれるのか」、「業績が悪化したらどうしよう」といった漠然とした不安が積み重なると、どんどん自信が無くなっていってしまいます。
気持ちはわかりますが、不安は行動することでしか解消しません。
経営面で不安があるのであればビジネスや経営に関する書籍や講座、セミナーに参加し、知識やスキルを身につけることが重要です。
従業員がついてきてくれるか不安なのであれば、自社のビジネスや戦略について積極的に従業員に情報を伝え、積極的にコミュニケーションを取り、互いの不安を解消させましょう。
業績悪化への不安がある場合は、会社の課題を正確に把握することが必要です。
どの分野や商品で売上が落ちたのか、どの費用が多くかかっているのか、どの工程で生産効率が悪いのかなどを洗い出し、課題を設定してそれに取り組むことが重要です。
将来のビジョンが見えない
将来のビジョンが見えないと、親の会社を継ぐ決断は難しいと思います。
しかし、将来のビジョンというのは会社に入ってからでないと見えてこないところですので、後継前は見えなくて当然です。
親の会社を継ぐ際は、まずは会社を深く知るところから始めてみましょう。
会社のことを知ると、自ずと会社の将来性やビジョンも見えてくるはずです。
スケジュール感がわからない
事業承継というのは通常業務のように納期が決まっているわけではないので、いつから始めるべきなのか、どのくらいのペースでやればいいのかがわからないという方も多いです。
一般的に事業承継には5年から10年かかると言われています。
継承期間中は、親世代と後継者との情報共有や指導、後継者の成長やスキルアップのための研修や育成などが行われます。
多大な準備が必要になるため、計画的に事業承継の準備を進めていきましょう。
税負担の程度が予測できない
親の会社を継ぐとなったときに、事業承継にかかるコストも気になるところになってきます。
特に、税負担に関しては不安になる方も多いと思います。
後継者側には相続税や贈与税の負担が発生してきますが、会社の資産等により金額は変動します。
当然大きな会社や多くの資産を持っている会社ほど税負担は大きくなります。
見えない税負担は大きな不安要素になってきます。
事業承継税制などを活用することによって、納税を猶予したり、免除したりすることができます。
このような制度についてしっかりリサーチを行い、最大限負担の少ない事業承継を行いましょう。
親の会社を継ぐメリット
続いて、親の会社を継ぐことのメリットを説明していきます。
- 裁量が大きい
- 定年やリストラがない
- 社外との信頼関係を構築しやすい
- 資産の承継方法が選択できる
裁量が大きい
経営者になると、従業員のように決まった勤務時間がないため、休日設定などに融通が利きます。
また、既存事業を継続する義務もないため、後継者の意思を柔軟に経営に反映することが可能です。
会社の理念を崩さないのであれば、事業の譲渡や売却、事業の方針などをある程度自由に決めることができるので、働き方に関しても、経営に関しても、裁量が大きいと言えます。
定年やリストラがない
定年やリストラの心配がないというのもメリットになります。
経営者であれば、60代で定年を迎えたり、会社の都合による解雇を言い渡される心配がありません。
しかし、事業や経営が上手くいっていないと、定年前に倒産や廃業をしなければならないケースも出てくるため、注意しましょう。
社外との信頼関係を構築しやすい
後継者が先代経営者の子どもであれば、社外の取引先にも受け入れられやすい傾向があります。
M&Aなどで社外の人間が後継者となると、外部との関係性を一から作らなければならず、会社の経営的にも後継者の精神的にもマイナスな影響が考えられます。
しかし、先代経営者の子どもということであれば、顔や名前も知られている可能性が高く、取引先との関係性は比較的維持しやすいでしょう。
後継してからもスムーズに外部とのやりとりができます。
資産の承継方法が選択できる
親族内承継の場合、後継者が資産を引き継ぐ方法を相続・株式売買・生前贈与の3つから選ぶことができます。
後継者の資産の状況に合わせた承継方法の検討ができ、相続や生前贈与といった方法は株式売買に比べて容易に行えます。
資産の承継方法を比較検討できるというのも親の会社を継ぐメリットの一つと言えるでしょう。
過去の記事に親族内承継のメリットとデメリットをまとめておりますので、ぜひご覧ください。
親族内承継の具体的な手法やメリット・デメリットまで徹底解説!
事業承継は、主に「親族内承継」「親族外承継」「M&A」の3つの種類に分けられます。 中でも親族内承継は…
親の会社を継ぐ後継者の悩みを軽減するには?
親の会社を継ぐ際の悩みや不安を少しでも解消する具体的な方法を以下で説明していきます。
- 専門家を頼る
- 事業承継税制を利用する
- 事業承継ガイドラインや事業承継マニュアルを活用する
- 先代経営者の思想を理解する
専門家を頼る
基本的に人間の不安は「知らない」ことから生じます。
上で挙げた悩みや不安も「知らない」ことによるものが多くありました。
親の会社を継ぐ決断をするには、ある程度の自信と事業承継に関する情報の量が不可欠です。
事業承継には複雑な工程や内容も多いので、わからないことは税理士や公認会計士といった専門家に頼りましょう。
専門家を頼る分費用はかかりますが、それ以上に得られる情報の価値があり、不安の解消に直結します。
事業承継税制を利用する
親の会社を継ぐ際の大きな不安として税負担が挙げられますが、事業承継税制を利用することで節税対策が図れます。
上手く活用できれば納税が免除になる可能性もあり、長期的な経営をしていく上では大きなメリットとなります。
しかし、細かい要件や注意すべき点がたくさんありますので、過去のコラムを参考にしてみてください。
事業承継税制とは?贈与税・相続税の納税猶予や免除要件をわかりやすく解説
事業承継税制とは、事業承継に関する贈与税・相続税を猶予される制度です。後継者の死亡などにより最終的には免除とな…
事業承継ガイドラインや事業承継マニュアルを活用する
親の会社を継ぐとなってから疑問や悩みが生じたときは、中小企業庁のホームページにある事業承継ガイドラインや事業承継マニュアルを活用しましょう。
「誰が承継するのか」「いつ承継するのか」という基本的なところから、事業承継計画の立て方、後継者の育成方法、資金調達の方法までを詳しく記載しています。
手順やスケジュール感がわかると徐々に事業承継が見えてくることに加え、中小企業庁という信頼できる情報元からの情報なので安心感もあります。
事業承継ガイドラインや事業承継マニュアルを活用することで、事業承継に対する漠然とした不安を軽減しましょう。
先代経営者の思想を理解する
親子とはいえ、別々の人間ですので、考え方や価値観が異なります。
特に、先代が初代経営者の場合、先代と2代目では会社への想いなどのギャップが大きくなってきます。
普段からコミュニケーションをとることで、先代の考え方や事業の方向性などが徐々に見えてくる可能性もあります。
親と子がお互いが歩み寄ることで、後継後の経営に関する不安が解消されるかもしれません。
後継者は最初に何をすればいい?社長になる前にやって良かったこと
将来的に会社を引っ張っていく存在になる後継者は、新社長に就任するまでにやらなければいけないことが数多くあります…
まとめ
親の会社を継ぐというのは大きな決断だからこそ、後継者が不安になるのは当然です。
だからこそ、後継者がどこに不安を抱えているのかを客観的に把握し、適切にアプローチすることで不安を解消しましょう。
事業承継は慎重に行う必要があります。
何かお困りごとがありましたら、事業承継M&Aパートナーズに気軽にご相談ください。
※本記事は、その内容の正確性・完全性を保証するものではありません。
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