高齢化が進む日本では、多くの経営者が「事業承継」と「廃業」という選択肢に迫られています。
現状は廃業を選ぶ経営者が多く、このままでは2025年頃に大廃業時代を迎えてしまうかもしれません。

しかし、事業承継をせずに廃業するという選択をとることは、様々なリスクやデメリットをはらんでいます。

引退を考えている経営者は、本記事を参考に事業承継をしないことによるリスクを把握し、自社がどちらの選択をする方が良いのか検討してみてください。

  1. 日本における廃業の現状
  2. なぜ事業承継ではなく廃業なのか
  3. 事業承継しないことによるリスクとは?
  4. 事業承継の準備や対策をしないことによるリスクとは?
  5. 事業承継をするためには何をすればいい?
  6. 事業承継には早めの準備が不可欠

日本における廃業の現状

冒頭でも述べた通り、日本の多くの中小企業が廃業しています。

2023年に帝国データバンクが発表した調査結果によると、2022年に休廃業・解散を行った企業は5万3426件にのぼりました。
2022年の初頭から3%以上の企業が休廃業を迎えており、失われた売上は2兆円を超えています。

さらに、廃業した企業の過半数が黒字廃業という事実も出ています。
このまま廃業する企業が増え続ければ、日本のGDPはどんどん減っていき、国としても衰退していく可能性があります。

ではなぜ財務状況は安定しているのに、廃業を選ぶ経営者が多いのでしょうか。

なぜ事業承継ではなく廃業なのか

定款経営者が事業承継ではなく、廃業を選択する代表的な理由は以下の通りです。

  • 事業承継は時間と手間がかかる
  • 会社の業績が厳しい
  • 後継者を確保できない
  • もともと自分の代で辞めるつもりだった

事業承継は時間と手間がかかる

事業承継と廃業の大きな違いは、その時間と手間です。

事業承継をするとなると、

  • 自社の財産や債務の分析
  • 後継者の選定
  • 後継者の育成
  • 後継者を受け入れるための環境の整備
  • 膨大な数の手続き

など、多くの時間と手間を要します。
そのうえ、多額の費用も必要です。

一方、廃業は事業承継と比較して時間と手間がかからないうえ、経営のプレッシャーからも解放されます。
そのため、取り組むハードルが非常に低く、多くの経営者が廃業を選択する傾向にあるのでしょう。

会社の業績が厳しい

経営がうまくいかない状態が続くと、経営者は廃業を選ぶ傾向にあります。
会社の売却や事業承継をしたくても、赤字経営だと目を向けてくれる企業もなかなか見つからず、廃業を選ばざるを得ないと思ってしまうケースも少なくありません。

実際は赤字経営の会社でも売却することは可能ですが、黒字経営の会社よりもハードルが高くなってしまいます。
赤字を抱える中小企業では、会社の売却や事業承継に目を向ける余力もなく、廃業を余儀なくされているのです。

後継者を確保できない

日本では後継者不足が叫ばれています。
なぜ後継者を確保できないのでしょうか。
以下のような理由が考えられます。

  • 少子化で後継者候補が少なくなってきている
  • 親族内で意見が割れる
  • 後継者候補の実力・能力が不足している
  • 親族以外に後継することを躊躇う

経営陣や親族が納得のいく後継者が見つからない場合や、外部人材への信頼が低い場合には事業承継が実現せず、廃業となってしまいます。

もともと自分の代で辞めるつもりだった

2023年に日本政策金融公庫が行った調査では、廃業を予定している経営者に廃業理由についてアンケートを取っています。
1位にランクインしたのが「そもそも誰かに継いでもらいたいと思っていない」という回答でした。

その回答を選んだ理由としては、「経営者個人の感性・個性が欠かせない事業だから」「自分の趣味で始めた事業だから」など、経営者の属人的な資源や能力に関するものが多く挙げられています。

事業承継は経営者にとって労力がかかるものなので、上記の理由を超えてくる大きなメリットがないと、事業承継をしようとは思わないでしょう。

事業承継しないことによるリスクとは?

事業承継をしないことによって起こり得る具体的なリスクについて説明いたします。

  • 雇用・技術・ノウハウを全て失う
  • 金銭面で負担がかかる
  • 地域社会や取引先に影響を与える
  • 資産を正しく評価してもらえない

雇用・技術・ノウハウを全て失う

事業承継をしないとなると会社がなくなってしまうため、会社が積み上げてきた技術やノウハウ、長く共に働いてきた従業員を全て失います。

特に長年一緒に働いてきた従業員は、家族のようなかけがえのない存在となっているでしょう。
そのため、彼らの解雇は経営者にとっても精神的な負担が大きく、事業承継しないことによる大きなデメリットといえます。

金銭面で負担がかかる

「廃業することは、会社の経営を辞めるだけだからお金はかからないのでは」と考えている経営者も多いかもしれません。
しかし、事業承継に比べると額は小さいものの廃業にもコストは発生します。

保有資産の売却、従業員への退職金、解散・清算のための登記費用など、多方面で費用がかかってきます。
さらに、会社に残された資産より負債が大きい場合は破産手続きも必要になります。

個人保証をしている場合には、経営者個人の資産も売却しなければならない可能性も出てきます。

会社の経営状況によってかかる費用は異なりますが、費用面でも負担がかかるというリスクは頭に入れておく必要があります。

地域社会や取引先に影響を与える

長年続いてきた企業であればあるほど、取引先や地域と広く深い関係を築いているでしょう。
規模が大きな企業ほど、周りに与える影響は大きくなります。
廃業は自社内だけの問題ではないことを理解しておく必要があります。

自社がなくなれば、取引先まで廃業に追い込む可能性も否定できません。
廃業を選択する場合は、周りに与える影響を明確化し、早いうちから廃業の事情や影響の説明をしておかなければなりません。

取引先や地域との関係性を考慮したうえで、廃業するか否かを決断しましょう。

資産を正しく評価してもらえない

業歴が長い会社ほど様々な資産を保有しています。
廃業となると、社屋や社用車、在庫などの資産は全て売却され、清算されます。

廃業を前提とした売却では、どれだけ価値が高い資産も正当な売却額よりも安値で取引きされてしまいます。

事業承継やM&Aで会社が残っていれば、正当に資産価値を評価してもらえますが、廃業となるとそうはいかないというのも事業承継しないことによるリスクだといえます。

事業承継の準備や対策をしないことによるリスクとは?

事業承継をしないリスクを把握したことで、廃業ではなく事業承継に切り替えようとして、焦って取り組んだとしてもうまくはいきません。
事業承継の成功には、長い時間をかけて準備や対策をとることが必要不可欠です。

本章では、事業承継の準備や対策をしないことによって起こり得るリスクについて説明します。

  • 望ましい人物に後継ができない
  • 相続トラブルが生じる

望ましい人物に後継ができない

事業承継前にしっかり時間をとってどの人物に後継するかを検討しないと、後継者に相応しい人材を見つけることができない可能性が出てきます。

特に経営者が高齢の場合、予期しないタイミングで大きな病気や怪我に見舞われ、経営に関われなくなってしまうかもしれません

早めに事業承継の準備に動き出すことで、先代経営者が理想とする後継者を見つける可能性を上げましょう。

後継者に誰を選ぶかで会社の未来は大きく変わります。
事前に誰を後継者にしたいかを書面や口頭で役員に伝えておくなど、予測不能の事態が起きても後継者に関して後悔しないように対策を打っておきましょう。

相続トラブルが生じる

中小企業の事業承継において大事な項目が「相続」についてです。

特に親族内承継においては、後継者とそれ以外の親族で遺留分や株式の配分に関して揉めることは珍しくありません

相続トラブルを防ぐためには、生前贈与を行って相続時の財産を減らしたり、遺言書で相続の方針を示しておくことが重要です。
急死や急病は避けられるものではないので、早めの取組みを推奨します。

事業承継をするためには何をすればいい?

様々なリスクを踏まえたうえで、事業承継を成功させるために最低限必要なことを本章でご紹介します。

  • 企業全体を「見える化」する
  • 事業承継の手法や制度を知る
  • 資金調達をする
  • 専門家に相談する

企業全体を「見える化」する

事業承継をするにあたって、まずは企業全体を見える化しましょう。

企業理念や知的資産、経営方針などの目に見えないものはもちろん、どんな資産を持っていて、どんな課題を抱えているのかなど、企業の現状を明確にしましょう。
ここを明確にしないと、どんな人物に後継すべきか、どのような準備や対策をして事業承継を進めなければならないかが決まりません。

企業の現状を見える化し、現在のポジション、目指すべきポジションを把握して、事業承継を進めるようにしましょう。

事業承継の手法や制度を知る

事業承継には

  • 親族内承継
  • 親族外承継
  • M&A

など、手法に種類があります。
加えて、事業承継をスムーズに進めるために活用すべき制度も様々です。
手法や制度を押さえておくことで、自社の状況に合った事業承継ができ、費用の負担を多く軽減することが期待できます。

中でも特例事業承継税制は確実に押さえておきましょう。
活用次第では大きな節税効果が得られますが、2024年(令和6年)の3月31日までに申請をしないと利用ができません。
詳しくは過去のコラムをご覧ください。

【特例措置】事業承継税制とは?「贈与税」「相続税」の納税猶予や免除の要件を解説

事業承継税制とは、事業承継に関する贈与税・相続税を猶予される制度です。後継者の死亡などにより最終的には免除とな…

資金調達をする

事業承継には多額の費用がかかります。
具体的な費用はケースによるので一概にはいえませんが、自費だけで賄うことは難しく、資金調達は避けられないでしょう。

資金の調達方法に関しても過去のコラムに掲載しておりますので、ぜひご覧ください。

事業承継で必要な資金とは?調達方法についても解説

事業承継では、しっかりと会社の現状を分析し、計画を立てることが大切です。 計画を立てる際に重要なのは、「事業承…

専門家に相談する

事業承継を自力で全て行うには限界があります。
困ったときにいつでも相談できる専門家を見つけておくことをおすすめします。
何かあったときに頼れる専門家がそばにいると非常に心強いでしょう。

当センターでも事業承継やM&Aに関するご相談を無料で受け付けております。
気軽にご連絡ください。

事業承継には早めの準備が不可欠

高齢化が進む日本において、自分が経営を退いた後について考える経営者は多いはずです。
手間がかからないからと簡単に廃業を選ぶのではなく、事業承継を選択しないことによるリスクを踏まえたうえで決断をしましょう。

事業承継をすると決めたら、早めの動き出しが大切です。
スムーズに事業承継を進めるためにも、できるだけ早く動き出しましょう。

名古屋事業承継センターは、事業承継に関する様々なご相談を承っております。
どんな些細なご相談でも構いません。
無料で承りますので、気軽にご連絡ください。

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