経営者にとって、会社を存続させていくためには避けては通れない事業承継。

会社の未来を左右する事業承継には大きな責任が伴うため、慎重に進める必要があります。
しかし、「何から始めて良いかわからない」「手続きや法令が複雑で自分でやりきる自信がない」と考える経営者も多いのではないでしょうか。

そこで、事業承継を進める際は税理士に依頼するのも1つの手段です。
本記事では、事業承継の手続きを税理士に依頼することのメリットや、具体的な業務内容などを詳しく解説します。

  1. 税理士は経営者にとって良き相談相手
  2. 事業承継を税理士に依頼するメリット
  3. 事業承継における税理士の基本的な業務内容
  4. 親族内承継における税理士の業務内容
  5. 親族外承継における税理士の業務内容
  6. M&Aにおける税理士の業務内容
  7. 税理士に事業承継の相談をする際の注意点
  8. 事業承継に精通した税理士を探す方法
  9. 事業承継をお考えの際は名古屋事業承継センターへご相談を

税理士は経営者にとって良き相談相手

決算書作成や税金の申告書作成、経理業務のサポートを依頼するため、ほぼ全ての企業は税理士と顧問契約を結んでいるでしょう。

税理士は、会社の業績や財務状況をよく知る人物の1人であり、社長以上に理解している場合もあります。
そのため、普段から税理士に会社の経営に関する相談をしている社長も多いのではないでしょうか。

税理士は財務周りの知識だけでなく、人事や労務に関する知識も有しており、経営全般に精通しているため、最も身近なコンサルタントとして寄り添ってくれるでしょう。

2020年に中小企業庁が発表した「2020年版 小規模企業白書」のデータによると、経営者の身近な相談相手として「税理士・公認会計士」が最も多いということがわかりました。

事業承継に関しても、税理士が良き相談相手となってくれるでしょう。

事業承継を税理士に依頼するメリット

事業承継を税理士に依頼するメリットとして、主に以下の4つが挙げられます。

  • 税負担を軽減するための手段を知っている
  • 事業承継の幅広い知識を持っている
  • 中立な立場から提案できる
  • 承継後の経営体制のサポートを受けられる

税負担を軽減するための手段を知っている

税理士は税金に関するプロフェッショナルです。

事業承継によって発生する税金は高額になる場合が多く、多額の税負担が足枷となり事業承継を進められないというケースも珍しくありません。
しかし、税理士に相談することで事業承継の手法や節税方法について、適切なアドバイスが受けられるでしょう。

税制優遇措置や控除の利用について税理士からアドバイスを受けることで、納税額を抑えながら事業承継を進めることができる可能性が高まります。

事業承継の幅広い知識を持っている

事業承継には、税金に関する知識だけでなく事業承継の手法や相続についての知識も必要になります。
税理士であれば、以下のような専門知識を持っているでしょう。

  • 企業価値の評価
  • 最適なスキーム選定
  • 遺産相続と相続税
  • 生前贈与と贈与税

事業承継の際は企業価値を正しく評価し、株式の価額を算出しなければなりません。
非上場企業であれば、株式が証券市場に出回っていないため、企業価値を算出するためには専門的な知識が必要です。

相続や贈与の知識が十分にないまま事業承継を進めると、株式が分散してしまい、後継者が経営権を握れない可能性が出てくるでしょう。
経営がスムーズに進まなかったり、社内や親族間で対立が起こったりといったトラブルに発展しないようにするためには、幅広い知識を持っている税理士の存在が欠かせません。

中立な立場から提案できる

事業承継の相談先として、税理士以外にも金融機関やM&Aの仲介業者が候補として挙げられます。

金融機関であれば、資金調達面で大きな力となってくれるでしょう。
しかし、融資を視野に入れた対策に偏る傾向があり、実際の事業承継に関する業務は提携を結んでいる税理士に外注することが一般的です。

M&Aの仲介業者は、M&Aを成約するまでのサポートや手続きに関しては心強い味方になります。
一方で、M&A仲介業者はM&A以外の手法に精通しているわけではないため、親族内承継や親族外承継を視野に入れた相談は難しいでしょう。

税理士であれば事業承継全般の知識を有しており、特定の手法や対策にこだわらず、公平・中立な立場からサポートができます。

承継後の経営体制のサポートを受けられる

税理士に事業承継のサポートを依頼すると、事業承継後の会社の経営を見据えて手続きを進めてくれます。

先述の通り、税理士は会社の経営状況をよく知る人物の1人です。
そのため、後継者の育成から役員の整理など、事業承継後も会社の経営を安定させることを見据えて事業承継を進めてくれるでしょう。

事業承継における税理士の基本的な業務内容

事業承継を税理士に依頼した際の基本的な業務内容は以下の通りです。

  • 承継方法やタイミングについての助言
  • 資金面・税務面の対策
  • 自社株の評価と調整

承継方法やタイミングについての助言

代表的な事業承継の方法は以下の3通りです。

  • 親族内承継:親族が後継者となる事業承継
  • 親族外承継:親族以外が後継者となる事業承継
  • M&A:他の会社へ経営権や事業を譲渡する事業承継

事業承継を考えるのであれば、まず初めに最適な方法やタイミングを検討する必要があります。
税理士は会社をどのような形で残したいか、どのような後継者に任せたいか経営者の意見を尊重し、客観的な視点から最適な方法やタイミングを提案してくれます。

資金面・税務面の対策

事業承継の際、後継者に多額の資金が必要となるケースが多いです。

例えば、親族へ株式を贈与・相続した場合、後継者は多額の贈与税・相続税を納める義務が発生します。
後継者に多額の税金を負担できるほどの資金力がない場合、事業承継税制を活用して贈与税・相続税を減免するといった、税負担を軽減する策を講じることも税理士の業務の1つです。

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自社株の評価と調整

非上場企業の株式は証券市場で取引きされることがないため、会社の財務状況によって株価を算出します。
自社株の評価には専門的な知識が必要になるため、税理士が請け負います。

自社株の評価が高ければ高いほど、後継者は多額の資金が必要です。
あらかじめ資金を用意できていれば問題ないですが、納税や買収のために後継者が資金を借入れしなければいけないケースもあるでしょう。

多額な資金の借入れは後継者にとって大きな負担になります。
できるだけ負担を小さくするためには、自社株の評価を引き下げる対策を施すことが望ましいでしょう。

自社株の評価を引き下げるには、利益を減らす取組みが有効です。
役員退職金や設備投資、オペレーティングリースなど様々な方法があり、会社にとって最適な対策を税理士がアドバイスします。

親族内承継における税理士の業務内容

事業は継続するが、相続人は経営に関わらない基本的な業務内容に加えて、親族内承継の場合は以下の業務も税理士が担当します。

  • 遺産分割シミュレーションの実施
  • 株式分散の対策

遺産分割シミュレーションの実施

親族内承継をする場合、後継者は遺産分割を経て、相続で自社株を引継ぐケースがほとんどでしょう。
後継者に株式を集中させて経営の安定化を図るには、財産のほとんどを後継者に引き継がなければいけません。

しかし、後継者以外にも相続人がいる場合、不公平な遺産分割をしてしまうと他の相続人から遺留分の侵害請求をされる可能性があります。
そのような事態に備えて、あらかじめ遺産分割についてシミュレーションを実施し、どのような対応をするべきか考えておくことも、税理士の役割です。

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株式分散の対策

相続によって株式が分散してしまうと、後継者が経営権を握れないという事態に陥りかねません。
事業承継後、後継者が確実に経営の実権を握るためには、後継者に株式を集中させるための対策を講じることが必要です。

例えば、遺産分割によって株式が分散する可能性がある場合、経営者が保有している株式を会社が買収するという方法があります。
自社株の所有者を会社にしておくことで、遺産分割によって株式が分散することはありません。

後継者が安定して経営を進めるために、株式が分散しないように対策を講じることも税理士の役割の1つです。

親族外承継における税理士の業務内容

相談しているビジネスマン親族外承継における税理士の業務内容は、以下の通りです。

  • 後継者の資金調達サポート
  • 経営を引き継ぐ方法に関する助言

後継者の資金調達サポート

役員や従業員に事業承継する際は、後継者が株式を買収するために多額の資金が必要です。
しかし、一般的に後継者となる人物が株式を買収できるほどの資金を有していることが少ないため、何らかの方法で資金を調達しなければならないでしょう。

後継者に必要な資金がない場合でも、税理士のサポートがあれば特別目的会社(SPC)を設立して、資金調達するといった複雑な手法を実現させることができます。

その他にも様々な資金調達方法があり、税理士は最適な資金調達方法を選定し、手続きをサポートしてくれるでしょう。

経営を引き継ぐ方法に関する助言

資金調達が困難なケースは決して珍しくありません。
そのため、株式譲渡以外の方法が検討されることがあります。

例えば、株式の大半は引退する経営者や親族が保有し、社長としての地位のみを後継者に譲り、会社の代表とする方法です。
その後、後継者が株式を買収できる資金を調達できてから株式を買収し、経営権を握るという流れで事業承継を進めることもあります。

税理士は、資金調達が難しい場合の事業承継方法について考える役割を果たします。

M&Aにおける税理士の業務内容

悩む男性M&Aで事業承継を行う際は、スキームの選定や企業価値評価、デューデリジェンスの実施が欠かせません。
M&Aでは、以下の業務を税理士に依頼することができます。

  • M&Aスキームの選定
  • 譲渡条件に関する助言
  • 税務デューデリジェンスの進行

M&Aスキームの選定

M&Aのスキームは多岐に渡るため、どのスキームを選定することが自社にとって最適なのかわからないという方も多いでしょう。
そのような場合、税理士に相談することで最適なM&Aのスキームを選定することができます。

M&Aを実行すると、株式や事業を譲渡した対価として獲得した譲渡益に対して税金が課されます。
そのため、スキーム選定の際には税金の負担を考慮することが必要です。

税務に精通している税理士であれば、できるだけ税負担を軽減し、手元に多くの資産が残るように最適なスキームを選定してくれるでしょう。

譲渡条件に関する助言

M&Aで会社を売却する際、売り手側は交渉の目安となる価額を提示しなければなりません。
一般的には、自社株の評価によって算出した金額を提示します。

交渉が進む中で、買い手側から提示された価額や条件で売却しても良いか判断に迷うことがあるかもしれません。

判断に迷った場合は、税理士に相談して助言を求めましょう。
交渉が成立したあとに「もっと良い条件で売却できた」という事態が起こらないようにするためには、自身だけで判断するのではなく、経験豊富な第三者の意見を取り入れることが大切です。

税務デューデリジェンスの事前対策

買い手企業は、売り手企業に税務リスクがないか調査するために税務デューデリジェンスを実施します。
デューデリジェンスの結果を基に最終的な契約交渉が行われるため、売り手企業としては自社の税務リスクを明らかにしなければなりません。

買い手側企業によるデューデリジェンスで問題点が見つかった場合、売却価額の減額に繋がる可能性があります。
そのため、買い手企業によるデューデリジェンスが行われる前に、自社に対するデューデリジェンスを事前に実施しましょう。

改善点が明らかになって事前に対策することができます。

税理士に事業承継の相談をする際の注意点

税理士に事業承継に関する相談をする際は、以下の2点に注意してください。

  • 全ての税理士が事業承継に精通しているわけではない
  • 実績や料金体系をよく確認する

全ての税理士が事業承継に精通しているわけではない

税理士であれば誰でも事業承継に精通しているわけではありません。
事業承継の分野は非常に複雑な専門知識が多く、事業承継に関する業務を専門外としている税理士もいます。

顧問税理士が事業承継に関する知識や経験がない場合は、外部の税理士と契約するという手段もあります。
顧問税理士に断りなく外部の税理士と契約すると、顧問税理士との関係が悪化してしまう可能性があるため、一度顧問税理士に相談してから依頼するようにしましょう。

実績や料金体系をよく確認する

事業承継を税理士に依頼する際は、実績や料金体系を事前に確認することを忘れないでください。

豊富な実績がある税理士であれば、過去の事例をもとに多彩な提案が可能です。
実績が少ないから信頼できないというわけではありませんが、複雑で専門性の高い事業承継分野において、過去の実績は事業承継の行方を左右する要素の1つといえるでしょう。

事業承継の業務を依頼する際の料金体系は、税理士事務所によって様々です。
どのような業務を依頼すると料金が発生するのか、どれくらいの金額が必要なのかをしっかり確認し、予期せぬ出費が発生しないように注意しましょう。

料金の高さだけではなく、対応の質や請け負ってくれる業務範囲などを考慮して判断すると良いです。

事業承継に精通した税理士を探す方法

顧問税理士が事業承継に対応できない場合、以下の方法で事業承継に精通した税理士を探すことができます。

  • 顧問税理士に紹介してもらう
  • 取引きのある金融機関に相談する
  • インターネットで探す

顧問税理士に紹介してもらう

まずは顧問税理士に紹介してもらうことをおすすめします。
顧問税理士に相談すれば、同業者のネットワークを駆使して事業承継に精通した税理士を紹介してもらえるかもしれません。

顧問税理士と繋がりのある税理士に依頼すれば、税理士同士の関係も良好になりやすく、情報の共有もスムーズに行えるでしょう。
会社の財務状況や経営状況は顧問税理士がよく知っているため、顧問税理士と事業承継税理士の連携が上手くできれば、事業承継を成功させられる可能性を高めることができます。

取引きのある金融機関に相談する

取引きのある金融機関に相談することで事業承継業務を担当できる税理士を紹介してもらえるでしょう。

基本的に金融機関は税理士と業務提携をしています。
事業承継業務を金融機関に依頼する経営者もいますが、金融機関は提携している税理士へ依頼していることがほとんどです。

インターネットで探す

インターネットを使って探すことも手段の1つです。
顧問税理士や取引きのある金融機関の紹介では出会えないような税理士を見つけられるかもしれません。

税理士をインターネットで探す場合は、実績や依頼する手続きの流れ、料金体系をしっかり確認しましょう。
さらに、税理士事務所に対する口コミがあれば併せて確認しておくと良いです。

初回相談を無料で実施している事務所が多いため、まずは無料相談に申し込んで対応の質や担当できる業務範囲など、気になることを確認しておきましょう。
1つの税理士事務所に絞るのではなく、複数の税理士事務所に相談してみることをおすすめします。

事業承継をお考えの際は名古屋事業承継センターへご相談を

事業承継を税理士に依頼することに関して詳しく解説しました。

税理士は、事業承継に関する幅広い業務を依頼できるだけでなく、公平・中立な立場から最適な事業承継を提案してくれる心強い味方です。
しかし、全ての税理士が事業承継に精通しているわけではないという点に注意が必要です。

名古屋事業承継センターは、事業承継に精通した税理士が多数在籍する事業承継のプロ集団です。
貴社の事業承継を複数名のチーム体制でサポートし、最善の事業承継を実現します。

事業承継でお困りのことがあれば、名古屋事業承継センターまでご相談ください。
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