多くの経営者の方は60~70代から事業承継に取り組み始めます。
企業によって実際に掛かる期間は異なりますが、期間不足により「もっと早く準備をしておけば良かった」と後悔してしまうケースが珍しくありません。

本コラムでは事業承継の準備を開始すべき年齢について解説いたします。
事業承継計画をまだ立てられていない経営者の方は、ぜひご覧ください。

  1. 事業承継・引退の平均年齢は?
  2. 事業承継に要する期間
  3. 事業承継は何歳から始めるべき?
  4. 事業承継準備を早めに始めるメリット
  5. 引退した後の選択肢は?
  6. 事業承継は40~50代からの準備が最適

事業承継・引退の平均年齢は?

近年深刻化している後継者不足によって、経営者の引退年齢は徐々に高齢化しつつあります。
2021年版「中小企業白書」によると、従業員数別に見た、最新の経営者の平均引退年齢は以下のようになっています。

従業員数 前経営者の引退年齢
5人以下 67.0歳
6~20人以下 66.2歳
21~50人以下 65.1歳
51~100人以下 64.4歳
101~300人以下 64.0歳
301人以上 63.0歳

この表からわかる通り、従業員規模が小さい企業ほど、経営者が引退する年齢は高いことが分かります。
要因の一つは、後継者を含めた人材不足です。
小規模であるほど、経営者の引退が企業に与える影響は大きいため、なかなか引退を決心することができず、準備期間も長く掛かってしまいます。

一方、事業承継によって新しく就任した経営者の平均年齢はこのようになります。

従業員数 新経営者の就任年齢
5人以下 49.8歳
6~20人以下 49.6歳
21~50人以下 51.8歳
51~100人以下 53.7歳
101~300人以下 55.1歳
301人以上 55.7歳

前経営者の引退年齢とは反対に、従業員数が少ない企業であるほど、就任年齢は低くなりますが、理由の一つは企業規模が小さいほど親族内承継の割合が増えるためです。
子どもや孫が後継者となるケースが多くなる分、新経営者の平均年齢が下がります。

事業承継に要する期間

参照リンク:2021年版「中小企業白書」

事業承継が具体的にどれほどの期間を要するのか解説いたします。

上のグラフは、後継者が先代から事業承継の意思を伝えられてから、実際に新経営者として就任するまでに掛かった期間の調査結果です。

最も割合が高いのは「5年超」の32.3%です。
法的・税務的手続きもある程度の時間を要しますが、後継者の育成や修行に数年以上掛ける企業が多いということになります。

その他の割合はどの期間も10~20%台。
「半年未満」という極めて短期間に事業承継が完了するケースも20%以上ありますが、先代の急病など、早急に事業承継を行う必要がある場合も含まれています。

続いて以下の三つのケースに分けて、事業承継に掛かる期間をより詳細に解説いたします。

  • 親族内承継
  • 親族外承継
  • 外部招聘・その他

親族内承継に要する期間

参照リンク:2021年版「中小企業白書」

親族内承継に限定した場合、「5年超」の期間が掛かった企業の割合は43.9%にまで増加します。
「3~5年未満」の割合もわずかながら増加し、それ以外の項目は少しずつ低くなっています。

早い段階で後継者を選出し、十分な準備期間を確保しやすい点が親族内承継のメリットです。
後継者である自覚を持ちながら育成することができるため、比較的年齢が若くてもスムーズな事業承継を行える傾向にあります。

親族外承継に要する期間

参照リンク:2021年版「中小企業白書」

社内の役員や従業員を後継者とする親族外承継の場合、掛かった期間は上のグラフのようになります。
親族内承継と比較して、全体的に短期間で事業承継を完了している傾向にあります。
既に企業に精通している人間を後継者とすることで、育成期間を短縮することができる点が理由の一つとして挙げられます。

ただし、会社の経営権だけではなく、支配権まで承継するためには、先代が所有している自社株式を買い取らなければなりません。
そのための資金を調達する、あるいは別の手段で事業承継を完了するために、ある程度の期間を要するケースがあります。

外部招聘・その他の事業承継に要する期間

参照リンク:2021年版「中小企業白書」

最も所要期間が短く済む傾向にあるのは、企業の外部から招聘した人物を後継者にする、またはその他の手段で事業承継を行う場合です。
「半年未満」の割合が45.5%と全体の半分近くを占め、「3~5年未満」と「5年超」の割合は二つを足しても20%にもいたりません。

外部招聘、あるいはヘッドハンティングされる人物は企業にとっても即戦力であることが多く、時間をかけて事業承継をすることは少ないです。
もともと企業と何らかの関係性が築かれていることも珍しくありませんが、社内事情を熟知しているというわけではないため、承継後も先代がしばらくの間、事業に関わることもあります。

事業承継は何歳から始めるべき?

ほとんどの経営者の方が事業承継の準備を開始するのは60代以降になってからですが、前述した通り、事業承継を完了するまでに数年以上の期間が掛かることも珍しくありません。
60代のうちに世代交代することを想定すると、それ以前から事業承継の準備に取り組み始める必要があります。

参照リンク:中小企業庁

事業承継のタイミングに関して、準備を開始する年齢として「ちょうど良いと感じた」という割合が最も多いのは40~49歳だということが分かっています。
50歳以上だと「遅いと感じた」という割合が増加し、反対に40歳未満だと「早いと感じた」という意見が多くなっています。

事業承継準備を早めに始めるメリット

事業承継の準備を早めに始めると具体的にどのようなメリットがあるのか解説いたします。

後継者選定に時間を掛けられる

数多くの企業が後継者不足に悩まされていますが、その課題はすぐに解決できるものではありません。
経営者の急逝、急病といった万が一の事態に備えて、適切な後継者を時間を掛けて選定する必要がありますが、早めに準備を開始することでその時間を確保することができます。

後継者の育成ができる

既に後継者が定まっている場合には、その育成期間に充てることができます。
親族内承継にはスムーズに事業承継できるというメリットがある一方、育成が不十分で、承継後に企業の業績が悪化してしまうケースが珍しくありません。
後継者の自覚を持ちながら日々勤務することで、経営者としての能力を向上させる効果があります。

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早期リタイアできる

もともと引退を希望していた年齢を超えてから、事業承継を行った元経営者は非常に多いですが、もっと早い段階で準備に取り組むことで、そのような事態を回避できていたことも十分考えられます。
余裕を持って事業承継を行えば、理想の年齢で引退できるどころか、早期リタイアすることも可能です。

急逝・急病にも対応しやすい

どのような経営者にも急逝・急病のリスクはあります。
年齢が高くなるほどそのリスクも高まりますが、まだ健康であるうちに事業承継を進めておくことで、万が一の事態が起きた際、残された役員・従業員への負担を最小限に抑えることができます。

事業承継資金を集めることができる

株式買取資金、納税資金、事業資金など、多額の資金が必要になる事業承継も珍しくありません。
場合によっては中・長期間掛けてその資金を蓄えておく必要があるため、できるだけ早く事業承継を視野に入れておくことが大切です。

節税対策を進めることができる

事業承継に必要な資金を抑えるために、節税対策を進めることも重要ですが、例えば生前贈与や株価の引下げなどの対策を短期間で実施することは難しいです。
専門家のアドバイスを取り入れつつ、自社に合った節税対策を講じましょう。

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引退した後の選択肢は?

事業承継を終え、経営者として引退することになった後、どのような選択肢があるのか解説いたします。
それによって適切な引退時期が変化する可能性もあるため、どのような生活を送るか考えてみましょう。

会長職に就く

引退後も企業の経営に携わっていく意思があれば、会長職に就くという選択肢があります。
完全に企業を離れることを惜しく感じたり、次代の経営者に不安が残る場合は、この選択をする経営者が多いです。

ただし、第一線を退いたはずの会長が経営に関与しすぎることは一般的にあまり好ましいことではありません。
新しく就任した経営者の成長を妨げたり、社内の混乱を招く恐れがあります。

役員報酬の金額についても慎重に設定する必要があります。
会長の役員報酬は社長時の60~70%であることが一般的ですが、企業規模によって状況は全く異なるため、他の役員とのバランスも考慮しながら決定しましょう。

就職する・新事業を開始する

例え引退することになっても、それまで培ったスキルやノウハウが失われるわけではありません。
それらを活かすため、別の企業に就職する、あるいは新しい事業を開始するという選択肢も考えられます。

引退前と同等以上の収入を得ることは難しいと考えておくべきですが、仕事を続けることで人生にやりがいを見出したり、社会貢献することができます。
ただし、この選択をする場合はどうしても体力的な課題が伴うため、できる限り早い段階で事業承継することが望ましいです。

セカンドライフを送る

「経営者」という肩書が無くなったことを機に、仕事からは完全に離れ、自由にセカンドライフを送ることを選択する方も多いです。
趣味を楽しむ、旅行をする、家族と過ごすといった、多忙だった経営者の頃ではなかなか難しかったことに時間を費やすことができます。

事業承継は40~50代からの準備が最適

事業承継は数年以上掛かる可能性もあるため、40~50代から準備を開始することをおすすめします。
前述したように、早めに準備に取り掛かることには多くのメリットがあり、事業承継の選択肢の幅も広がります。

名古屋事業承継センターでは、40~50代から取り組める長期間の事業承継もご提案させていただきます。
問題を解決するだけでなく、より満足度の高い事業承継を行うためにも、まずはお気軽にご相談ください。

※本記事は、その内容の正確性・完全性を保証するものではありません。
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