「会社経営を自主的にやめる」という意味を持つ廃業ですが、経営状態の悪化や、後継者の不在など、経営者が廃業を選択する経緯は様々です。
廃業するためには、各種手続きが必要になり、その過程で費用もかかります。
今回のコラムでは、廃業にかかる費用を中心に、税金や手続きに関しても解説していきます。
廃業にはどれだけ費用がかかる?
廃業にかかる費用は、主に
- 法的手続き・登記に関する費用
- その他の施設・設備の処分や原状復帰などの費用
の二つの種類に分けられます。
法的手続きや登記でかかる費用は、基本的に会社によって大きく異なることはありませんが、設備の処分など、その他の部分では、費用負担が大きく変わることもあります。
法的手続き・登記に関する費用
法的手続きや登記に関する費用は、主に以下の2つが挙げられます。
- 登録免許税やそれに付随する費用
- 官報公告費
①登録免許税やそれに付随する費用
会社を廃業する際は、登録免許税を支払う必要があります。
解散の登記に3万円、清算人及び代表清算人の選任に関する登記に9000円必要になり、それに加えて清算結了の際には清算結了の登記で2,000円がかかるため、合計4.1万円の登録免許税の支払が必要になります。
また、司法書士に依頼した場合には、合わせて司法書士報酬も必要となります。
〈登録免許税、それに付随する費用〉
- 登録免許税‥‥3万円
- 清算人登記‥‥9000円
- 決算結了登記‥‥2000円
:全体で4.1万円
+司法書士報酬
②官報公告費
上記の手続きに加えて、廃業の事実を債権者に報告するために、官報公告というものが必要になります。
官報の公告では、一行につき3589円の費用がかかり、廃業の公告では、10行ほどが目安とされているため、約4万円の費用が必要になります。
また、登記の前後で会社の情報を収集するため、登記事項証明や商業・法人登記情報を所得する必要があり、その費用として約1500円かかります。
廃業での法人税
法人税に関しては、債権者に債権放棄をしてもらう際に発生する債務免除益も課税対象となることがあるため注意が必要です。
廃業での消費税
清算する際、会社の保有する不動産を売却することで、消費税を支払わなければならないケースがあります。
土地の売却では消費税は発生しませんが、建物の場合では消費税を支払わなければいけません。
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廃業の手続き
廃業の手続きには期限が設けられているものもあり、複雑な作業も求められます。
廃業は基本的に以下の流れで進めることができます。
- 廃業の事前準備
- 株主総会での2/3以上の賛成、清算人の選任
- 解散登記と清算人選任登記
- 財産目録・貸借対照表の作成・承認
- 廃業・解散届出
- 官報にて解散公告の掲載
- 債務整理
- 解散確定申告と清算結了
廃業の事前準備
廃業の手続きに取り掛かる前に、まず会社関係者へ廃業の旨を伝える必要があります。
会社が廃業するとなると、従業員や取引先に影響を及ぼすことは避けられません。
少なくとも3ヶ月前には廃業挨拶状を関係者各位に送付することが望ましいです。
株主総会での2/3以上の賛成、清算人の選任
会社にとっての重要事項の決定は、株主総会での特別決議が必要であると会社法で定められています。
解散もその重要事項に該当するため、株主総会を開き、
- 株主の過半数の出席
- 2/3以上の賛成
以上をもって承認される必要があります。
また、株主総会で清算人の選任をする必要があります。清算人には基本的に代表取締役が選任されます。
解散登記と清算人選任登記
株主総会で解散決議をされた日から2週間以内に、管轄の法務局にて解散登記と清算人選任登記をする必要があります。
財産目録・貸借対照表の作成・承認
清算人は財務目録及び貸借対照表を作成する必要があり、それらの承認を株主総会にて得なければいけません。
廃業・解散届出
登記が完了した段階で、税金や保険関係の各種機関に廃業・解散の届出を提出する必要があります。
廃業に伴い、従業員を解雇する際は、労働局や社会保険事務所にも届出を提出しなければいけません。
官報にて解散公告の掲載
解散の決議をした後に、官報にて解散の公告を行います。解散の公告では、2か月以上の期間を定めて、債権者にその債権を申し出るよう通知する必要があります。
債務整理
清算人が会社の財産を確認し、債務回収と債務弁済をし、残った財産があった場合は株主へ分配します。
解散確定申告と清算結了
事業開始日から廃業した日までの解散確定申告を行います。
廃業日から2ヶ月以内に解散確定申告をしなければいけないため注意しましょう。
また、該当する事業年度の清算確定申告を、会社に残った資産が明確になった日から1ヶ月以内に行う必要があります。
清算確定申告が完了したら、株主総会にて清算の決算報告書の承認を得ます。
承認を得てから2週間以内に清算結了登記を法務局にて行います。
この手続きを経てようやく法人は消滅したことになります。
最後に清算結了届を税務署に提出し、会社廃業の手続きは終了します。
有限会社(特例有限会社)での廃業手続き
有限会社の廃業の費用、手続きは基本的に株式会社と大きな違いはありません。
しかし多少の違いがあるため代表的なものを簡単にご紹介します。
基本的に会社の廃業・解散についての決議は、株主の過半数が出席し、2/3以上の賛成が必要ですが、有限会社の場合、3/4以上の賛成が必要である点が異なります。
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事業承継やM&Aも視野に入れた検討を!
経営者の引退方法として、廃業以外にも事業承継やM&Aなど、選択肢が以前より広がってきています。
後継者が見つからず、事業承継ができない場合でも、M&Aを行えば売却益を得られる上、会社の事業や従業員の雇用を守ることができます。
そのため廃業をお考えの方は、事業承継やM&Aも視野に入れて検討することをおすすめします。
事業承継M&Aパートナーズでは、廃業の手続き、及び事業承継やM&Aまで幅広く対応させていただいております。
何から進めるべきか分からないという場合でも、お気軽にご相談ください。
※本記事は、その内容の正確性・完全性を保証するものではありません。
詳しくは当センターへお問い合わせいただくか、関係各所にお問い合わせください。