経営者であれば誰もが引退について考えますよね。
40代、50代、60代と年齢を重ねるに伴い、徐々にその頻度も高くなっていくのではないでしょうか。
ただ、そこで気になるのは「社長は何歳で引退すべきか」ということです。
会社や従業員のことを思うと、できるだけ早めに後継者に社長の座を譲った方が良いかもしれませんが、そのための準備も必要です。
今回のコラムで社長が引退する平均年齢や適齢期、またそのための事業承継について詳しく解説していくので、興味がある方は是非最後までご覧ください。
社長の平均引退年齢は何歳?
ご存知の通り、少子化や後継者不足などの社会問題により、社長の引退年齢は年々高くなってきています。
従業員数 | 前経営者の引退年齢 |
5人以下 | 67.0歳 |
6~20人以下 | 66.2歳 |
21~50人以下 | 65.1歳 |
51~100人以下 | 64.4歳 |
101~300人以下 | 64.0歳 |
301人以上 | 63.0歳 |
2021年に中小企業庁が発表した「中小企業白書」によると、所属する従業員数別で見た前経営者の平均引退年齢はこのようになっています。
一目見て気になるのは、従業員数が少ない会社ほど、引退年齢が高くなっているということ。
やはり中小企業の方が人材不足や後継者不足に悩まされている傾向にあり、その分社長が引退する年齢も高齢化していることがわかります。
社長引退の適齢期は?
どの規模の会社であっても、社長の平均引退年齢は60代となっていますが、本来は何歳頃が引退の適齢期なのでしょうか。
会社の都合や本人の希望によっても異なりますが、引退する年齢として理想的なのは一般的に50〜55歳頃だと言われています。
理由としては、経営者としてのピークの兼ね合いや、事業承継の準備に時間がかかることが挙げられます。
一見若すぎるように思えるかもしれませんが、社長を引退した後も多くの選択肢があります。
むしろ、まだ体力のあるうちに後継者にその座を譲ることで、また新たなことに挑戦する余裕を残すことになるでしょう。
早めに引退準備をすべき理由
社長ができるだけ早めに引退する、あるいはその準備を進めるべき理由をさらに詳しく解説していきます。
- 後継者不足が深刻化している
- 後継者の育成に時間がかかる
- 周囲の説得に時間がかかる
- 資金調達に時間がかかる
- 体力に余裕がなくなる
後継者不足が深刻化している
まず1つ目の理由として挙げられるのは、深刻化する後継者不足です。
以前の日本では現社長の子ども、またはその他の親族が後継者となることが当たり前の風潮がありましたが、現代においてそのような文化はなくなりつつあります。
こちらも2021年の中小企業白書のデータですが、以前は経営者となる経路として最大の割合を誇っていた「同族承継」は年々減少しています。
それに伴い、「内部昇格」の割合が徐々に大きくなってきています。
上図は2020年までのデータですが、最新の事業承継においては親族を除く社内からの昇進が主流になっていると言えるでしょう。
ただ、親族以外で目ぼしい後継者を選出するのも決して簡単なことではありませんよね。
経験や実績だけでなく、他の従業員からの人望も重要であるため、適切な後継者を選出するためにも早めに事業承継に取りかかることが望ましいです。
後継者の育成に時間がかかる
後継者を選出できたとしても、すぐに新社長に就任できるわけではありません。
仮に1人の従業員として著しい成果を上げてきたとしても、経営者としての素質があるかは別であり、社長として全従業員を導くことができない可能性もあります。
どの承継方法でも同じことが言えますが、長く健全な経営を続けるために、数年〜十数年かけて後継者としての自覚を育み、適切な能力を身に付ける必要があります。
周囲の説得に時間がかかる
事業承継を成功させるためには、社内や身内だけでなく、取引先や顧客といった周囲の説得にもある程度の時間を要します。
従来の親族内承継であれば、社長の子どもということで周囲からも受け入れられやすいというメリットがありましたが、近年増加している親族外承継などではそう簡単にいきません。
中には後継者の選出に不満を抱く関係者が出てくるリスクもあるため、後継者の育成と並行し、周囲の説得にも時間をかける必要があります。
資金調達に時間がかかる
事業承継において、度々大きなハードルになり得るのが資金調達です。
仮に親族ではない社外の人物が後継者になる場合、先代の社長から経営権を引き継ぐためには、多額の株式を買い取る必要がありますよね。
しかし、一社員がそのような多額の資金を用意するのは困難であり、融資や補助金といった、様々な対策を講じる必要があります。
士業や事業承継の専門機関に相談する時間が必要になることもあり、準備に時間がかかる理由の1つになっています。
体力に余裕がなくなる
最後の理由として挙げられるのは体力の衰えです。
心身共に充実し、経営者として最も力を発揮できるのは40〜50代と言われていますが、60歳を超えると徐々に衰えを感じ始めます。
実際のところ、「事業承継は予想以上に大変だった」「もっと若いうちから取り組んでおくべきだった」という声を上げる経営者は多くいらっしゃいます。
事業承継にかかる期間はどれくらい?
それでは事業承継は具体的にどれくらいの期間を要するのでしょうか。
上の表は事業規模や承継方法を問わず、前社長が後継者に事業承継の意思を伝えてから、実際に経営権を譲渡するまでにかかった期間の割合です。
偏りがあるわけではありませんが、最も割合が大きくなっているのは「5年超」の32.3%。
特に親族や社内の人物が後継者になるケースはこのように長い期間を要する傾向にあります。
一方、「半年未満」というスピーディな事業承継の割合も22.4%あり、決して珍しいというわけではありません。
しかし、留意すべきなのはこのような短期間の事業承継はほとんどがM&Aということです。
別の企業が買収することで後継者の育成に時間がかからないという点が、期間を短縮している最大の理由です。
社長が引退するまでの流れ
では社長が引退するにあたって、具体的にどのようなステップを踏めばいいのでしょうか。
状況によって順番が前後する、あるいは同時進行していくことになりますが、大まかには以下の手順で進行していきます。
- 引退時期を決める
- 後継者を決める
- 後継者を育成する
- 事業承継方法を決める
- 事業承継資金を調達する
- 社内外の関係者に通達する
- 引退後の人生を決める
既に解説した通り、ステップが多いだけでなく、一つひとつの段階で時間がかかります。
また、同時に複数のことに取り掛かることになるため、事業承継の準備中は常に悩みが尽きません。
以上のことを踏まえると、十分な準備を整えて事業承継を完遂するには、確かに数年の期間がかかってもおかしくないでしょう。
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社長は引退後に何をする?
最後に、引退した社長は何をすればいいのかということを解説していきます。
主な選択肢は以下の3つです。
- 会長職に就く
- 別の会社を設立する
- セカンドライフを送る
会長職に就く
社長を引退した後の選択肢として一般的なのが「会長職」に就くことです。
「名誉会長」「名誉顧問」などと称されることも多いですが、簡単に言えば、新社長の相談役として、経営のサポートに回ります。
会長になれば第一線を退いた後も役員報酬を得ることができますが、注意すべきは経営に関与し過ぎるべきではないということです。
社長が交代した直後、少なからず経営が不安定になるのは仕方のないことですが、会長が口を出し過ぎると経営方針が揺らぎ、従業員の動揺を招くリスクがあります。
別の会社を設立する
今の会社を去り、また新たな会社を立ち上げるのも選択肢の1つです。
「ずっと挑戦したかった事業があるけど、今の会社のことで精一杯だった」
このような思いを抱く経営者は珍しくありませんが、引退して時間ができたからこそ別のことに挑戦するという選択が可能になります。
同様に、自分自身で会社を設立するのではなく、他社に勤めるという方も多いです。
セカンドライフを送る
最後に挙げられるのは、ビジネスからは身を引き、悠々自適なセカンドライフを送ることです。
- 新しい趣味を見つける
- 家族のために時間を割く
- 田舎や海外に移住する
このように、時間にもお金にもゆとりがあるからこそできることもたくさんあります。
特に元経営者の場合、それまでずっと仕事に身を投じてきたからこそ、引退後はそれ以外のことに時間を割きたいと考える人も多いです。
社長の引退は計画性が大切
全国的に社長の高齢化が進む日本社会ですが、引退の適齢期は50代前半であり、現状よりかなり早くなっています。
後継者やその他の準備を踏まえると、決して簡単ではありませんが、早め早めに準備を進めることで、世代交代はもちろん、その後の人生も有意義に送ることができるでしょう。
しかし、そのためにはできるだけ早く準備に取り掛かり、緻密な計画を立てることが大切です。
事業承継M&Aパートナーズでは、そんな早めの事業承継を考える経営者の方々もサポートさせていただいております。
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