自分らしい生き方や働き方が尊重されるこの時代、経営者の人生にも様々な選択肢があります。

その一つが「ハッピーリタイア」。

多くの苦難やプレッシャーにさらされながらも守り抜いてきた会社を後継し、自由にセカンドライフを楽しんでみるのも良いかもしれません。

本記事ではハッピーリタイアとはどのようなものなのか、ハッピーリタイアを実現するためにはどんな準備が必要で、どんな手法をとればいいのか、経営者向けに解説いたします。

  1. ハッピーリタイアとは
  2. ハッピーリタイアのメリット・デメリット
  3. 経営者がハッピーリタイアを実現するための準備
  4. ハッピーリタイアを実現するための手法
  5. ハッピーリタイアを成功させるためには?
  6. 事業承継を活用してハッピーリタイアを実現しよう

ハッピーリタイアとは

一般的にハッピーリタイアとは、豊かな老後生活を送るための資金を確保したうえで定年前に退職(リタイア)し、自分の気の向くままにセカンドライフを満喫することを指します。

リタイアする前の準備やリタイアした後の計画を十分に行わないと、定年前に退職したものの、その後豊かな人生を送り続けることができなくなってしまうかもしれません。

退職するまで様々なものを背負って働いている経営者がハッピーリタイアを実現するとなれば、尚更相応の準備が必要になります。

次章では、まず経営者がハッピーリタイアを選択することで得られるメリット、そしてデメリットも合わせてご紹介します。

ハッピーリタイアのメリット・デメリット

ハッピーリタイアのメリット

  • 責任やプレッシャーから解放される
  • 家族や趣味に時間を費やせるようになる
  • 住む場所を限定されない

責任やプレッシャーから解放される

経営者は常に経営のことを考え、会社にまつわる全てのことに対して責任を負わなければなりません。
そのプレッシャーは経営者を経験した方にしか分かり得ないものでしょう。

しかし、ハッピーリタイアを迎えることができれば、大きなプレッシャーやストレスから解放され、精神的に落ち着いた生活を手に入れることができます。

ゆとりのある生活を手に入れられることは、経営者がハッピーリタイアによって得られる一番大きなメリットといえるでしょう。

家族や趣味に時間を費やせるようになる

経営者をやっていると、会社のことで常に頭がいっぱいだったり、急に休みの日も仕事をしなければならなかったりということも多いのではないでしょうか。
家族がいる経営者であれば、家族との時間をとることも難しいという場合も少なくないでしょう。

ハッピーリタイアを実現すれば、仕事のことを考える必要も、時間的な制約も、一切なくなります。
そのため、仕事にあてていた時間を家族と過ごしたり、新たに趣味を始めてみたりと、自分の好きなように時間を使うことができます。

一度きりの人生ですので、定年前にハッピーリタイアを迎え、早いうちから自分のやりたいことに時間を使える人生は魅力的だといえます。

住む場所を限定されない

経営から離れると、職場の位置を考える必要がなくなるため、好きな場所に住むことができます。

国内で働いている経営者であれば、海外でゆったりと過ごすという機会もなかなか無いのではないでしょうか。

ハッピーリタイアを機に日本を離れ、夏は涼しい国や地方に、冬は暖かい南の島で過ごすといった多拠点生活も可能になります。

ハッピーリタイアのデメリット

  • 社会人としてのキャリアがそこで止まる
  • やることがなく虚無感に陥ってしまう
  • 金銭面の不安が増える

社会人としてのキャリアがそこで止まる

仮に経営者を続けていればキャリアは継続するため、さらなる出世や別会社の経営者になるなど、キャリアアップの選択肢はたくさんあります。

ただし、退職をするとなれば仕事から離れることになるため、キャリアもそこで止まってしまいます。
ハッピーリタイアに、これまで積み上げてきたキャリアを手放せるだけの価値があるかは見極めなければなりません。

やることがなく虚無感に陥ってしまう

経営者は常に仕事と隣合わせです。
「どうすれば売上がもっと伸びるのか」「どうしたら従業員同士のコミュニケーションが活発になるのか」など、会社を良くするためにはどうしたら良いかをずっと考えています。

しかし、ハッピーリタイアを一度してしまえばそんな生活が一変し、仕事のことを考える時間が一気になくなります。
そのため、自由に使える時間がありすぎてやりたいことをやり尽くしてしまい、虚無感に陥ってしまうということも考えられます。

ハッピーリタイアを迎える前に、自分のやりたいことはどのくらいあって、どれくらいの時間を要するものなのかを、おおまかでもいいので把握しておきましょう。

金銭面の不安が増える

退職後は年金とこれまでの貯蓄で生活をしていかなければならないため、手持ちのお金が徐々に減っていく不安を感じるでしょう。

定年前にリタイアすると、受け取れる年金額が減ってしまい、より不安は強まってしまうかもしれません。

加えて、経営者という肩書が無くなるため、社会的な信用度が下がり、賃貸を借りるときの審査が通りにくくなったり、金融機関からお金を借りにくくなるという事態も考えられます。

仕事をせずに生きていくには、お金のことは十分に考える必要があるでしょう。

リタイア後に投資で不労所得を得る方も多いようです。
投資について勉強して活用していくのも一つの手といえます。

経営者がハッピーリタイアを実現するための準備

ハッピーリタイアを実現するためには相応の準備が必要で、サラリーマンならもちろん、経営者は尚更です。
2点の準備すべき点について説明していきます。

  • 自分の生活費の準備
  • 会社と従業員のための準備

自分の生活費の準備

ハッピーリタイアのデメリットで挙げた通り、資金について考えることは必要不可欠です。
リタイア後に生活費で困らないように見通しを立てておかなければなりません。

年金は毎月いくらもらえるのか、どれくらいの貯蓄があればリタイア後に不自由なく生活できるのかを計算して概算を出し、適切なタイミングでリタイアするようにしましょう。

年金は退職する年齢や家族の構成などで異なるため、Web上の一般的な例を参考にするよりも、シミュレーション等を使って自分のもらえる金額を明確に出すことをおすすめします。
自身が口座を開設している銀行へ相談するなど、専門家のアドバイスを受けてみるのも良いかもしれません。

会社と従業員のための準備

経営者がハッピーリタイアをすると、退職した後の会社を支えていくのは残された役員や従業員です。
ハッピーリタイア後に彼らが会社を運営していけるように、入念な準備と引継ぎが必要です。

また、経営者が個人事業主の場合は会社を清算しても周りに影響はありませんが、従業員がいる場合や会社を残したい場合は、後継者を見つけなければなりません。

後継者を見つけるところから、後継者が経営の舵を取れるようになるまで多くの時間を要します。
親族内や従業員への承継であれば後継はスムーズかもしれませんが、外部の人材が後継者の場合、残された従業員との関係性の構築や会社の方向性の理解には時間がかかるでしょう。

退職後も円滑に会社の経営が進むように意識して準備しておくことをおすすめします。

次章ではハッピーリタイアを実現するための手段である、後継者への事業承継の方法について解説いたします。

ハッピーリタイアを実現するための手法

  • 親族内承継
  • 従業員承継
  • M&A
  • 廃業

親族内承継

現経営者の身内や親族に会社を引き継ぐ方法を親族内承継と呼びます。

親族内承継は後継者が親族であり、経営者としての知識やノウハウを伝える教育期間を長く設けやすくなります。
そのため、後継者は経営していく上で必要な情報を時間をかけて整理することができ、継承後の不安を減らすことができるでしょう。

後継者も会社内外問わず受け入れられやすく、スムーズな承継が可能です。

一方で、必ずしも親族に経営者の素質をもった人物がいるとは限らないことに加え、親族間での承継はトラブルが起きやすいというデメリットも持ち合わせています。

詳しくは過去のコラムにまとめています。
ぜひご覧ください。

親族内承継の具体的な手法やメリット・デメリットまで徹底解説!

事業承継は、主に「親族内承継」「親族外承継」「M&A」の3つの種類に分けられます。 中でも親族内承継は…

従業員承継

経営者の親族に後継者候補が見つからない場合、従業員承継が候補として挙げられるでしょう。

従業員承継の場合、会社の経営理念や事業の方向性が理解できている人物に後継するため、後継がスムーズに進みやすいです。
後継者が会社への想いが強い人物であれば、仕事により強くやりがいを感じられるようになり、モチベーションも向上するでしょう。

一方で、従業員の頃よりも仕事に対する責任が重くなったり、経営者の意識ではなく従業員の感覚で仕事をしてしまうなど、気を付けなければいけないポイントもあります。

従業員ではなく経営者であるとスイッチを切り替えるサポートを行い、承継後も会社運営がうまくいくように後継者を献身的に支える意識が重要になります。

従業員承継についても過去のコラムに詳しく掲載していますので、ぜひご覧ください。

従業員承継の流れ一覧!後継者が知っておくべきデメリットや課題は?

社長の子供や親族に後継者候補が見つからない場合、社内の従業員を後継者とする、従業員承継が選択される場合がありま…

M&A

親族にも社内にも後継者に適した人材がいないとなると、外部人材への承継、つまり、M&Aによる承継を考える必要が出てきます。

近年の後継者不足の日本ではM&Aによる事業承継が増えてきていて、売手よりも買手の方が多い現状があります。

そんなM&Aによる事業承継では、従業員の雇用が維持でき、譲受企業との事業シナジーを狙うことも可能です。
社外の人材に目を向けるため、優秀な人材と出会える可能性も広がります。

ただし、M&Aには多額の資金が必要です。
加えて、これまでに会社に関与していなかった人物への承継になるため、本当に信用していいのかの判断が難しいという側面も持ち合わせています。

詳細が気になるという方は過去のコラムをご覧ください。

親族外承継とは?メリット・デメリットや手順、MBOについても解説!

親族外承継とは、文字通り会社の株式を親族以外の第三者に承継することを意味しています。 既に会社に在籍している役…

事業承継をする際に必ずかかってくるのが多額の税金。
後継者にも大きな負担になり、それで事業承継が実現できないということも。

そんな方におすすめなのが事業承継税制です。

事業承継税制とは?贈与税・相続税の納税猶予や免除要件をわかりやすく解説

事業承継税制とは、事業承継に関する贈与税・相続税を猶予される制度です。後継者の死亡などにより最終的には免除とな…

不明点等あれば、気軽に名古屋事業承継センターにご相談ください。

廃業

後継者が見つからなかったり、個人事業主で経営をしていた場合に出てくる選択肢が廃業です。

廃業の最大のメリットは、関係者への影響を最小限に抑えられるという点だといえます。
買掛金などの債務が溜まっている場合、それらを返済してから会社をたたむことができるため、スッキリした気持ちで退職後の生活をおくることができます。

しかし、廃業には費用がかかります。
債務の返済はもちろん、設備の処分に費用がかかったり、廃業のための手続きも面倒です。

メリットとデメリットを十分に比較検討したうえで、廃業を選択しましょう。

廃業と清算、倒産、破産、解散などの違いは?意味や手続きの流れも解説

近年、経営者の高齢化と後継者不在の状況が原因でより一層件数が増えている「廃業」。 帝国データバンクの調査でも、…

ハッピーリタイアを成功させるためには?

ハッピーリタイアを成功させるために気を付けておくべきポイントがあります。
一つずつご紹介します。

  • ハッピーリタイア後の生活を入念に考えておく
  • 高リスクな投資に手を出さない
  • リタイア後に会社の経営に口を出さない

ハッピーリタイア後の生活を入念に考えておく

何度も申し上げますが、リタイア前の準備がどれくらいできたかが、リタイア後の生活を大きく左右します。

経営者の生活はリタイア前後で180度変わります。
ハッピーリタイア後のプランを明確に言語化し、どこまでの準備をしなければいけないのか、そのために今何をすべきなのかを整理しておきましょう。

高リスクな投資に手を出さない

先ほど、ハッピーリタイア後の資金面に不安がある方には投資をおすすめしましたが、ハイリスクハイリターンな投資は避けた方が良いかもしれません

ハイリターンが得られるといわれる金融商品はハイリスクであることが多く、収入が少ない状況での運用資金の目減りは経営者の生活をさらに圧迫します。

リスクを踏まえたうえで、投資という手段を利用しましょう。

リタイア後に会社の経営に口を出さない

退職後に会社の経営に口を出してしまうと、後継者や残った従業員が動きにくいと感じてしまう可能性があります。

長年経営してきた会社に対する気持ちは計り知れません。
しかし、だからといって退職後にも口出しをされてしまったら、一度会社を任された後継者や従業員はあまりいい気分がしないのではないでしょうか。

リタイアを一度決めたのであれば、会社にけじめをつけて、新しい人生に意識を向けてみましょう。

事業承継を活用してハッピーリタイアを実現しよう

ハッピーリタイアを実現する方法は多岐にわたります。
しかし、どの方法においても退職後の明確な計画や、メリットとデメリットの比較検討は必要不可欠です。

自分に合った方法を見つけ、希望に満ちた第二の人生に向けて、一歩踏み出しましょう。

名古屋事業承継センターでは、事業承継やM&Aに関してのご相談を承っております。
悩みを抱える経営者の皆様のお力添えができれば幸いです。
気軽にご連絡ください。

※本記事は、その内容の正確性・完全性を保証するものではありません。
詳しくは当センターへお問い合わせいただくか、関係各所にお問い合わせください。