後継者不足や事業拡大を機に「会社売却」という手段を選択する企業が増えてきています。
しかし、会社売却は適切なタイミングで行わないと、失敗に終わったり、十分な対価を得ることができません。
本記事では、会社売却のタイミングだけでなく、メリットや押さえておくべきポイントをご紹介します。
納得のいく会社売却を実現しましょう。
会社売却の現状
日本においては、会社売却を含むM&Aの件数が増加しています。
M&Aの件数増加の理由としては、経営者の高齢化に伴う後継者不在問題、事業拡大のための資本・ノウハウ不足が挙げられます。
帝国データバンクが2022年に行った『全国企業「休廃業・解散」動向調査』では、2022年の休廃業・倒産件数は5万件を超えていることがわかりました。
ここ数年で件数は減ってきていますが、少ない件数だとはいえません。
会社の維持が難しくなっている中で、救済策となり得るのが会社売却であり、今後も活用する企業は増えていくでしょう。
会社売却のメリット
会社売却のメリットはたくさんあります。
1つずつ解説していきます。
- 会社や事業規模の拡大を図ることができる
- 廃業を避けることができる
- 後継者問題を解決できる
- 対価を獲得できる
- 経営者のプレッシャーから解放される
会社や事業規模の拡大を図ることができる
自社よりも大きな企業に会社を売却すれば、会社や事業規模の拡大を図ることができます。
中小企業の場合、資本力やノウハウの不足により、会社の成長が止まってしまっているケースが考えられます。
大企業の傘下に入れば、豊富なリソースや安定した財務基盤のもとで事業を行うことができるため、今まで手を出せなかった事業に乗り出すことが可能です。
大企業への売却でなくとも、買い手企業との事業シナジーも期待できるでしょう。
会社売却による事業強化は、会社を大きく成長させるチャンスです。
廃業を避けることができる
事業の継続が難しくなってくると、廃業という選択肢が頭をよぎります。
廃業は法律に定められた手続きを行う必要があるため手間と時間がかかるだけでなく、
- 登記・公告
- 在庫の売り切り
- 設備の処分
- 物件の原状復帰
など、様々な費用がかかってきます。
しかし、売却先が見つかり廃業を避けることができれば、上記のような費用を負担する必要がありません。
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後継者問題を解決できる
会社売却を行うことで後継者問題を解決することが可能です。
後継者が見つからずに仕方なく廃業を選んでしまう経営者も少なくありません。
会社売却により第三者に会社を引き継ぐことで、後継者不在の課題を解決することができます。
会社売却は会社の維持だけでなく、従業員の雇用を守ることにも繋がります。
対価を獲得できる
会社を売却することで、その対価を受け取ることができます。
ある程度まとまったお金を得ることができるため、次の事業展開や老後の資金など、様々な用途で使用可能です。
費用がかかるだけでなく税金を多く課せられてしまう廃業や清算と比較すると、利潤を手に入れることができる会社売却を選んで損はないでしょう。
経営者のプレッシャーから解放される
経営者の座から降りることで、背負っていたプレッシャーから解放されることも会社売却のメリットだといえます。
経営者は常に会社のことを考えなければなりません。
会社売却で経営を後継者に任せることでその責任感から解放され、自分の時間を自由に使えるようになります。
経営者が銀行から借入れをするときに保証人になることも珍しくありません。
会社売却ではそのような個人保証・連帯保証も売却先に引き継いでもらいます。
保証を引き継ぐことができるのも、経営者に安心感を与える1つの要素でしょう。
会社売却のベストなタイミングはいつ?
会社売却は思い立ったときに実行すれば良いというわけではありません。
会社売却には最適なタイミングがあります。
以下で詳しく説明していきます。
- 自社の業績は良いが、経営者の意欲が減退しているとき
- 自社の業績が悪いとき
- 好景気のとき
- 業界再編の動きがあるとき
- 経営者が体力の衰えを感じたとき
- 後継者が見つからないとき
自社の業績は良いが、経営者の意欲が減退しているとき
会社の業績が良いときは基本的に売り出しても良いタイミングといえます。
業績が良く、売上・利益が共に成長過程であれば買い手の評価も高くなり、多額で取引きをしてもらえる可能性が高くなるためです。
さらに、業績が良いだけでなく、経営者の意欲が減衰していれば、より適しているタイミングだといえます。
事業が軌道に乗っていても、他の事業に興味が出てきたといった理由で対象事業に対して意欲がなくなってしまうケースは少なくありません。
経営者の意欲が衰退しているときは一旦会社を売却して、獲得した資金の使い道を考えてみるのも良いでしょう。
自社の業績が悪いとき
業績が悪く、回復の見込みが立たないときは会社売却を検討するタイミングといえます。
売れるときに売っておかないと、会社に価値がつかず、倒産や廃業に追い込まれてしまいます。
すると従業員が路頭に迷ってしまうだけでなく、取引先にも迷惑がかかり、様々なところに影響を与えかねません。
早めの決断を意識しましょう。
ただし、事業に対して経営者の意欲があるときは、他の手段を考えるのも1つの手です。
自力で今の状況を耐え切るか、資本提携や業務提携で業績回復を狙うケースも散見されます。
気持ちだけでは乗り越えられない状況であれば、売却を視野に入れても良いでしょう。
好景気のとき
業界が好景気のときは買い手が積極的に動くため、会社売却のタイミングだといえます。
買収にはある程度の資金が必要ですが、好景気でないと買い手企業も投資や借入れといった資金調達になかなか動き出しません。
買い手企業が資金に余裕を持てる好景気は、比較的売却しやすいタイミングだといえるでしょう。
ただし、好景気になった瞬間や停滞期に差し掛かった段階での売却はおすすめできません。
好景気が続き、M&A市場全体の価格が高まったタイミングを狙いましょう。
業界再編の動きがあるとき
業界再編の動きがある時期には、企業の売買が頻繁に行われるため、予想以上に良い条件での売却を期待できます。
しかし、業界再編では小規模な会社が統合されていき、徐々に買い手企業が減っていき、業界再編の動きは落ち着いていきます。
業界再編の情報を仕入れたタイミングで売却の準備を進めておくと、高値での売却ができる確率を上げられるかもしれません。
経営者が体力の衰えを感じたとき
経営者が体力の衰えを感じたときも会社売却を検討するタイミングです。
日本では経営者の高齢化が目立ちます。
高齢になればなるほど、病気や体力の衰えによって経営をこなせなくなる可能性は高まってくるでしょう。
会社売却には半年以上の時間がかかります。
実際に病気にかかったり、体力がなくなったりしてから経営をどうしていくかを考えていては、手遅れになってしまう可能性があります。
売却先の選定や交渉に耐え得る体力がある状態で、会社売却を行えるように早めに決断しましょう。
後継者が見つからないとき
会社売却をすれば後継者不在の問題を解決できます。
そのため、親族や従業員の中に後継者候補がなかなか見つからないという経営者は、会社売却により売却先の経営者に会社を継いでもらうのも、会社を残す選択肢の1つです。
会社を買収できるほどの資金力がある会社であれば、経営者に対しての信用もあるため、安心して会社を任せられるでしょう。
会社売却における注意点
会社売却を行ううえで注意しておくべき点がいくつか存在します。
- 競業避止義務に注意する
- ロックアップが発生する
- 情報漏洩しない
- 適切なタイミングで報告する
競業避止義務に注意する
会社法第21条には競業避止義務というものが定められています。
会社売却における競業避止義務とは、売り手企業の経営者による事業活動について、買い手企業と同一、または隣接する市区町村で一定期間競争行為を行わないという内容のものです。
この義務により、買い手企業の利益が保護されます。
競業避止義務については、通常、売却先と契約書で、その有無や期間等の取決めが行われるのが一般的です。
なお、会社法第21条には、事業譲渡(会社分割も含まれるとするのが一般的な解釈です。)による売却の場合は、原則として、譲渡日から20年間、同一及び隣接区域内においては、売却先と同一事業を行ってはならないと定められています。
そのため、会社売却後に同一の事業を興そうとしている場合は、会社売却という手段を検討し直す必要があるでしょう。
ロックアップが発生する
会社売却にはロックアップが伴います。
ロックアップとは、会社売却後も旧経営陣が一定期間会社に残って経営や事業に参画することを定めた条項です。
事業の中核を担う人物が抜けてしまうことで事業がまわらなくなることを防ぎます。
ロックアップにより会社から一定期間離れることができないことを理解したうえで、会社売却後のプランを立てましょう。
情報漏洩しない
会社売却に関する情報の漏洩により、取引きが失敗に終わってしまうケースが考えられます。
情報が市場に出回ってしまうと、売却先は重要な情報を外に漏らす会社だと判断し、取引きを中止しかねません。
情報はどこから漏れてしまうかわからないのが怖いところです。
取引先や金融機関にはもちろん、従業員への情報漏洩にも気を付けましょう。
適切なタイミングで報告する
会社売却の報告はタイミングを間違えてはいけません。
従業員に早いタイミングで報告をしてしまうと、会社売却に伴いリストラされるのではないかと従業員の間で不安が広がり、多くの従業員が退職するリスクが考えられます。
会社売却については、最終合意契約後に説明をすることで、従業員が離れていってしまうリスクを防ぎましょう。
取引先が外部に情報漏洩をするリスクがあるため、取引先への報告も最終合意契約後に行ってください。
取引先と機密保持契約を結んでいることを確認し、報告をしましょう。
会社売却の手段
会社売却の代表的な手段は以下の3つになります。
- 株式譲渡
- 事業譲渡
- 会社分割
過去のコラムで詳しく紹介しているので、気になる方はそちらをご覧ください。
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会社売却を成功させるポイント
会社売却では大きな金額が動くため、慎重な準備が必要です。
成功の確率を上げるためのポイントを押さえておきましょう。
- 早いうちから動き出す
- こまめに業界動向をチェックしておく
- 株式を収集しておく
- 財務状況を健全にしておく
早いうちから動き出す
会社売却が選択肢に出てきたら、早めに動くことをおすすめします。
会社売却は手間だけでなく精神的な負担もかかるため、経営者は後回しにしてしまう傾向があります。
しかし、高齢な経営者ほど、いつ満足に動けなくなるかわかりません。
会社売却には少なくとも半年はかかります。
本業も忙しいはずなので、早いうちからコツコツと準備を進めておくことをおすすめします。
こまめに業界動向をチェックしておく
会社売却は同業種間で行うことが多いです。
加えて、業界の状態が会社売却が上手くいくかどうかを決める大きな要因になります。
こまめに自社の業界動向をチェックしておくことで、適切なタイミングで会社売却を行えるようにしておきましょう。
株式を収集しておく
会社売却のプロセスを進める前に株式を収集しておくことをおすすめします。
株式が分散していると、売却の意思決定が遅れたり、売却先が必要な議決権を集められなかったりと、スムーズな売却が行えないリスクが考えられます。
あらかじめ株式をできる限り手元に集めておくことで、滞りなく会社売却を行いましょう。
財務状況を健全にしておく
簿外債務(貸借対照表上に計上されない債務)は、買い手企業が買収の際に抱える代表的なリスクです。
簿外債務を有する企業を買収した場合、買い手側がその簿外債務を負担しなければなりません。
簿外債務は買収後に投資回収する必要があり、その額が大きい場合、投資回収できずに破綻してしまうというケースが考えられます。
買い手側に信用してもらうためにも、売り手企業はデューデリジェンスを行うことで簿外債務がないことを表明しましょう。
簿外債務がある場合は契約前に正直に伝えておくことで、取引き後のトラブルを防ぐことができます。
会社売却を考えたら専門家へ相談しましょう
会社売却は大きな額が動くだけでなく、手間も時間もかかります。
ポイントを押さえたうえで慎重にプロセスを踏むことで、売却失敗のリスクを低減し、かけたコストを失わないようにしましょう。
とはいえ、売却に不安を抱える経営者も多いでしょう。
事業承継M&Aパートナーズでは会社売却を含むM&Aのサポートを行っております。
初回相談は無料ですので、ぜひ気軽にご連絡ください。
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