1. 個人事業主の事業承継とは?
  2. 事業承継における個人事業と法人の違い
  3. 個人事業の事業承継手順
  4. 残った負債は引き継がないといけない?
  5. 個人事業の事業承継にかかる税金
  6. 個人版事業承継税制によって税負担を免除
  7. 法人との違いを理解して適切な事業承継を!

個人事業主の事業承継とは?

あらゆる企業で後継者不足が深刻化している現在の日本ですが、悩まされているのは個人事業主も同様です。
しかし、法人と個人事業はその規模だけでなく、あらゆる面で異なり、必然的に事業承継においても少なからず相違点が発生します。

そこで今回のコラムでは、個人事業の事業承継について触れていきます。
法人との違いに着目しながら解説するので、事業承継を検討している個人事業主の方はぜひご覧ください。

事業承継における個人事業と法人の違い

そもそも法人は、その名の通り、法律によって企業や団体そのものに人としての権利能力が与えられています。
資産は全て法人の所有物ということになり、経営者が交代してもそれは変わりません。

一方、個人事業の資産は全て個人事業主の所有物になります。
それによって事業の引き継ぎにおける手続きが異なるため、まずは資産の所有者の違いを留意しておいてください。

全資産の引き継ぎが必要

法人の事業承継の場合、経営権・支配権を後継者に移行させるためには、自社株式を引き継げばひとまず問題はありません。
しかし、前述した通り、個人事業の資産の所有権は個人事業主にあるため、全資産を引き継ぐための手続きが必要になります。

それぞれの資産の評価額を算出する必要があり、その評価額に伴って納税義務も発生します。
そのため、資産の移転に関しては法人より個人事業の方が多くの手順が必要ということになります。

新・旧事業主双方の手続きが必要

また、個人事業の引き継ぎには先代である旧事業主と、後継者である新事業主、二人が手続きを行う必要があるので、それぞれに分けて解説いたします。

旧事業主の廃業手続き

まずは旧事業主が、以下の手順で廃業手続きを行う必要があります。

  • 「個人事業の開業届出・廃業等届出書」提出:事業廃止日から1か月以内
  • 「青色申告の取りやめ届出書」提出:事業廃止年の翌年3月15日まで
  • 「事業廃止届出書」提出:事業廃止日から1か月以内
  • 「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書」提出:事業廃止日から1か月以内
  • 「所得税及び復興特別所得税の予定納税額の減額申請書」提出:第1期及び第2期の場合は当年7月1日~15日、第2期のみの場合は当年11月1日~15日まで

新事業主の開業手続き

その後、新事業主が以下の手順で開業手続きを行います。

  • 「個人事業の開業届出・廃業等届出書」提出:事業開始日から1か月以内
  • 「青色申告承認申請書」提出:申告年の翌年3月15日まで
  • 「源泉所得税納期の特例の承認に関する申請書」提出
  • 「消費税課税事業者選択届出書」提出:事業開始日が属する課税期間中
  • 「消費税簡易課税制度選択届出書」提出:事業開始日が属する課税期間中
  • 「給与支払事業所等の開設・移転・廃止届出書」提出:事務所開設日から1か月以内

個人事業の事業承継手順

次に、個人事業の事業承継を行う手順を解説いたします。

後継者・事業承継方法の決定

最初に事業を引き継ぐ後継者と、それに合った事業承継方法を決定します。
主な手法は以下の3種類です。

  • 贈与
  • 相続
  • 売買(事業譲渡、M&A)

旧事業主と新事業主の関係性や、引き継ぐタイミングにより適切な相続方法は異なります。

一般的には子どもや孫が引き継ぐことが多いですが、生前に継承させる場合は贈与、亡くなってからの継承は相続ということになります。
ただ、個人事業でも第三者機関・個人に継承させるケースもあり、その場合は事業譲渡やM&Aとして売買契約を交わすことが一般的です。

後継者への引き継ぎ・教育

実際に事業を継承する前に、後継者への引き継ぎ・教育を施します。
この際要する期間は様々であり、何年も経験を積ませる場合もあれば、ほとんど必要としない場合もあるでしょう。

ただ、事業規模からいって、個人事業は法人と比較して事業主の責任や影響が大きい傾向にあります。
能力を向上させるだけでなく、周囲と良好な人間関係を築く必要もあるため、多くの場合においては中・長期間で育成を行うことが望ましいです。

廃業・開業手続き

前述した手順に沿って、新・旧事業主による廃業手続き、及び開業手続きを行います。
なお、税務上の手続きもこちらに含まれています。

屋号・資産名義の引き継ぎ

次に、屋号や資産の名義の引き継ぎを行います。
資産の量・規模によって要する手間・時間は異なるため、資産が多い場合は予め一覧にしておくとスムーズに手続きを行うことができます。

取引先や従業員への連絡

最後に、取引先や従業員に継承の旨を連絡します。
一通り周知が済んだら、事業承継は完了です。

残った負債は引き継がないといけない?

事業を継承する際に負債が残っていることも考えられますが、個人事業の場合、あくまで返済義務は個人にあるため、新事業主が必ずしもその負債を引き継がなければならないわけではありません。

ただし、その負債や借入金は事業活動をする上で発生したものが大半であるため、実際は新事業主が引き継ぐことがほとんど。
また、それに伴って金融機関の個人保証も同様に引き継がれます。

個人事業の事業承継にかかる税金

ここからは個人事業の事業承継における税金について解説します。
まずは、継承の手法によって、以下の種類の税金が発生するということを理解しておきましょう。

贈与税

生前の事業承継の場合は、贈与税が発生します。
資産の評価額から債務の負担額を控除した金額に応じて課されますが、暦年課税制度により、1月1日~12月31日までの1年間で、贈与額が110万円を超えない場合は免税となります。
※贈与された財産が土地等・家屋等である場合には、その評価額は相続税評価額ではなく、通常の取引価額(時価)となる点にご注意ください。

また、60歳以上の親から20歳以上の子ども、あるいは孫への贈与の場合は、相続時精算課税制度を選択することもできます。
最大2,500万円までの贈与額に対する贈与税が免除され、超過分に対する贈与税の課税率も一律20%となり、多額の資産をまとめて引き継ぐことができるというメリットがあります。

ただし、免除された分の贈与額は、親が他界して他の資産を相続する際に加算されます。
つまり、免税は一時的なものであり、あくまで資産を素早くまとめて引き継ぐための制度ということを理解しておかなければなりません。

相続税

旧事業主が他界した後に資産を継承する場合は相続税が発生し、贈与税と同様、資産の評価額から債務の負担額を控除した金額が基準になります。
ただし、相続の場合は、そこからさらに「3,000万円+600万円×相続人数」の基礎控除を差し引いた金額を対象に、相続税が課されることになります。

所得税

事業譲渡やM&Aとして事業承継を行った場合は、それによって得た対価に所得税が課税されます。
また、通常通り、1年間の利益に応じた所得税を納税しなければなりません。

消費税

原則として、消費税は2年前の年間売上高が1,000万円を超えると納税義務が発生しますが、生前の贈与の場合、開業から2年以内は消費税の納税義務はありません。

一方、亡くなってから相続する場合は、旧事業主の2年前の年間売上高で納税義務の有無を判定されるため、1年目から納税義務が発生する可能性があります。
また、事業譲渡やM&Aの場合、譲渡した資産に応じて消費税が課される場合もあります。

個人版事業承継税制によって税負担を免除

個人版事業承継税制は、青色申告を行っていた事業の継承において発生する贈与税・相続税の納税を猶予することができる制度です。
また、事業を継続していくことを目的としており、最終的には納税を免除することができるという大きなメリットがあります。

ただし、制度が適用されるための規定や要件は細かく定められており、途中でそれらを満たせなくなると、猶予されていた税金を、結局全額納税しなくてはならなくなる場合もあります。
メリットは非常に大きいですが、その分複雑な制度であるため、利用を検討する際は専門家に相談することをおすすめします。

法人との違いを理解して適切な事業承継を!

個人事業の事業承継について解説いたしましたが、いかがでしたでしょうか。
やはり法人とは根本から仕組みが異なるため、実際に行動を起こす際は情報が混同しないように注意する必要があります。

また、個人事業ならではの制度も多くあります。
それらを上手く活用して、適切な手法で事業承継を行いましょう!

※本記事は、その内容の正確性・完全性を保証するものではありません。
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